2013年/日本/カラー/91分/ 配給:東風

2013年8月10日、ポレポレ東中野ほか全国順次ロードショー

(C)琉球朝日放送

公開初日 2013/08/10

配給会社名 1094

解説


日本にあるアメリカ軍基地・専用施設の 74%が密集する沖縄。
5 年前、死亡事故が多発する新型輸送機オスプレイの着陸帯建設に抗議し座り込んだ東村・高江の住民を国は「通行妨害」で訴えた。反対運動を委縮させる SLAPP 裁判だ[※1]。人口 160 人の高江集落は米軍のジャングル訓練場に囲まれている。わがもの顔で飛び回り、低空で旋回する米軍のヘリ。自分たちは「標的」なのかと憤る住民たちに、かつてベトナム戦争時に造られたベトナム村[※2]の記憶がよみがえる。

2012 年 6 月 26 日、沖縄県議会がオスプレイ配備計画の撤回を求める抗議決議・意見書を全会一致で可決した。
9 月 9 日の県民大会には 10 万の人々が結集した。しかし、その直後、日本政府は電話一本で県に「オスプレイ」配備を通達した。そして、ついに沖縄の怒りが爆発した。
9 月 29 日、強硬配備前夜。台風 17 号の暴風の中、人々はアメリカ軍普天間基地ゲート前に座り込み、22時間にわたってこれを完全封鎖したのだ。4 つのゲートの前に身を投げ出し、車を並べ、バリケードを張る人々。真っ先に座り込んだのは、あの沖縄戦や復帰前のアメリカ軍統治の苦しみを知る老人たちだった。強制排除に乗り出した警察との激しい衝突。取材に駆け付けたジャーナリストや弁護士さえもが排除されていく。そんな日本人同士の争いを見下ろす若い米兵たち……。

この全国ニュースからほぼ黙殺された前代未聞の出来事の一部始終を記録していたのは、地元テレビ局・琉球朝日放送の報道クルーたちだった。本作は、反対運動を続ける住民たちに寄り添いながら、沖縄の抵抗の歴史をひもといていく。復帰後 40 年経ってなお切りひろげられる沖縄の傷。沖縄の人々は一体誰と戦っているのか。奪われた土地と海と空と引き換えに、「平和と安全」を味わうのは誰か?

10 月 1 日、午前 11 時 20 分。沖縄の空をオスプレイが飛んだ。抵抗むなしく、絶望する大人たちの傍らで11 才の少女が言う。「お父さんとお母さんが頑張れなくなったら、私が引き継いでいく。私は高江をあきらめない」。

※1=SLAPP 裁判……国策に反対する住民を国が訴える。力のある団体が声を上げた個人を訴える弾圧・恫喝目的の裁判をアメリカでは SLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation)裁判と呼び、多くの州で禁じられている。

※2=ベトナム村……1960 年代、ベトナム戦を想定して沖縄の演習場内に造られた村。ベトナム戦を想定し農村に潜むゲリラ兵士を見つけ出して確保する襲撃訓練が行われていた。そこで高江の住民がたびたび南ベトナム人の役をさせられていた。

ストーリー








沖縄本島北部に広がるヤンバルの森。東村(ひがしそん)・高江区は、豊かな自然に囲まれた人口 160 人ほどの山村だ。その静けさを破るように、上空には頻繁に巨大な軍用ヘリが飛び交う。高江は戦後、国内最大の米軍専用施設、総面積 7800ha のジャングル戦闘訓練場に囲まれてしまった。ゲリラ戦やサバイバル訓練をする世界で唯一の演習場で、民家との間にフェンスもなく、兵士が庭先に現れることも珍しくない。すでに今、戦場の中に暮らすような恐怖を味わっている高江の周りに、6 つのヘリパッドが新設されるという。そこには、死亡事故の多い垂直離陸機・オスプレイも配備される

高江に暮らす安次嶺(あしみね)現達さん、通称ゲンさんは、5 年前、突然国に訴えられた。家の近くにヘリパッドができては困ると座り込んだら、通行妨害の容疑で被告になってしまった。ゲンさんは高江の森に惚れ込んで 10 年ほど前に家族で越してきた。川に囲まれた手作りの家はカフェにもなっていて、ゲンさんの作る新鮮な野菜と妻の雪音さんが仕込む窯焼きパンが人気。そんな楽園のようなこの場所で 6 人の子供たちがのびのび育っている。しかしゲンさんは言う。「ヘリパッドができたら、もうここには住めない」。
ヘリパッドの新設を知った高江区民は2007年1月22日、那覇防衛施設局に抗議をした。それに対して局員は「米軍の運用に関しては、日本側は関知できない」と突き放す。再三の反対決議も虚しく、一方的な工事の通告がされた。説明もなく、声も届かない。この年の 7月 2 日から、住民による建設現場での座り込みが始まった。

8 月 21 日、ついに防衛施設局が工事にやってきた。立ちはだかる住民に対し、局員は言う。「手続きも済んでいるんだから、工事をやります。北部訓練場の過半の返還で合意された工事です。作業開始!」「公務執行妨害だぞ!ゲートを開けろ!」怒号が飛んだ。住民らは切々と訴えた。「米軍に基地を提供しているあなた方に、沖縄の人の気持ち分かる?米軍には土地を取られてさ。あなた方には山を滅茶苦茶にされて、我が家は自分の家の墓にも入れない。
婦女暴行され、ジェット機は落とされ、ヘリコプターは落とされ、この基地はそういう基地でしょう?あなたは任務かも知れない。我々はここでの歴史的な任務だよ。次の世代に、こんな苦しみ与えたくない。
やるならやる、われわれもやるよ!」防衛施設局は言葉を失い、この日は帰って行った。しかし、次はいつ来るのか。毎日の座り込みで生活が犠牲になるが、他に手立てがない。

それから間もなく、住人15人が法廷に呼び出された。2008年11月25日、現場での座り込みが「通行妨害」にあたるとして、国が仮処分申請をしたのだ。国策に反対して座り込んだ住民を国が訴えるという前代未聞の裁判。力を持つ企業や自治体が、声を上げた個人を弾圧 ・恫喝するために訴える こ とをアメ リカでは SLAPP 裁判(Strategic Lawsuit Against Public Participation)と呼び、裁判を圧力代わりに悪用させないため多くの州で禁じている。しかし日本にこの概念はない。15 人の中の1人、若い母親は、精神的苦痛と裁判所に行くための時間や交通費の負担が大変だったと話す。ゲンさん家族は、妻・雪音と兄弟の中での唯一の女の子・海月ちゃんまで訴えられた。海月ちゃんは当時まだ 7 歳で、現場に行ったことは一度もなく、理不尽な訴えだった。

スタッフ

ナレーション:三上智恵
音楽:上地正昭
構成:松石泉
題字:金城実
編集:寺田俊樹・新垣康之
撮影:寺田俊樹・QAB 報道部
音声:木田 洋
タイトル:新垣政樹
MA:茶畑三男
統括プロデューサー:賀数朝夫
プロデューサー:謝花 尚
監督:三上智恵
制作・著作:琉球朝日放送
配給:東風

キャスト

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