MAD探偵〜7人の容疑者

「ヤツは七匹の鬼に操られている・・・」
失踪した刑事、その拳銃による連続強盗殺人
公職を追われた異能のプロファイラーが
治安を揺るがす真実を見た時
善と悪とのバランスが脆くも崩れ去っていく

≪心の奥底を見抜く異能者 VS 多重人格殺人鬼≫
　天才には、常人の思いも寄らぬ苦悩がつきまとう。繊細であるがゆえに傷つき、先駆者であるがゆえに阻害され、一般には奇異と思える行動から不当な処遇を受ける。しかし、孤独に打ちひしがれながらも、天才はときに逆境さえ創造の源泉として、他が成し遂げられない偉業を達成する。画家ゴッホのように、たとえ後世でしかその驚くべき才能が評価されなくとも・・・。
　犯罪捜査のプロファイリング、その手法にタブーとも言える超自然の能力を用いる主人公。第六感を最大限に活用し、未解決事件の真相解明に乗り出す男は、他人の隠された人格を見抜く驚異の才能を有していた！　だが、天賦の才能は社会からの孤立という結果を招く。そして、第一線を退いたはずの男が再び捜査に加わった時、七つの人格を持つシリアル・キラーとの、壮絶な闘いが始まるのだった！

≪心の闇と現実が交錯する　ジョニー・トー美学の新たなる展開≫
　『エレクション』（05）、『エレクション 〜死の報復〜』（06）、『エグザイル／絆』（06）、『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』（09）・・・。マフィア、警察といった組織に属する男たちの非情な闘いをスタイリッシュな映像とともに描き、いまや世界的名匠と呼ぶべき存在となった香港のジョニー・トー監督。2005年には『エレクション』がカンヌ国際映画祭のコンペティション部門にエントリー、そして、2006年の『エグザイル／絆』に続き、2007年ヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞にノミネートされたのが、今作『MAD探偵』なのである。
　ときにクライム・ストーリーの美学を貫き、ときに定石を壊して見る者を物語に引き込む手腕。今回も、隠された内面の個性を異なる俳優に演じさせるなど、意表を突くアイデア、描写で新感覚のサスペンスを呈示するトー監督。コメディからスポーツ根性ドラマ、悲恋の物語まで、幅広い作風を誇るが、『マッド探偵』では盟友ワイ・カーファイの持ち味を活かしたダークな題材をともに演出、随所に文芸色も漂わせながら進む推理劇には、内外から多くの賞賛が寄せられた。早速ハリウッドも動きだし、『ラッシュ・アワー』シリーズのプロデューサー、アーサー・サルキシアンが同じくトー監督『ミッション 非情の掟』（99）とともにリメイク権を獲得している。

≪最高の俳優たちが火花を散らす　香港ノワールの息詰まる世界≫
　主役の元刑事バン役には実力No.1の演技派、『つきせぬ想い』（93）『暗戦／デッド・エンド』（99）のラウ・チンワン。不器用ながらも愛すべき人情家から、何事にも動じないタフガイまで、どんな役柄にも同化してしまう彼が挑むのは、他人の隠された人格を見透す犯罪者プロファイラー。そして、悪魔のような刑事コウ役には、いま最も波に乗る男優の一人、『エグザイル／絆』『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』のラム・カートン。バンとともに真相を究明する若手刑事には『香港国際警察／NEW POLICE STORY』（04）『エレクション 〜死の報復〜』のアンディ・オン。バン刑事を気遣う妻役には『スリ』（08）のケリー・リン、さらに、ラム・シュ、チョン・シウファイといった心憎いキャスティングでミステリーの謎を深めていく。