白いリボン
原題:THE WHITE RIBBON / DAS WEISSE BAND
第62回カンヌ国際映画祭 受賞〈パルムドール大賞/国際批評家協会賞〉 第82回アカデミー賞2部門 ノミネート〈外国語映画賞/撮影賞〉
2009 年/ドイツ・オーストリア・フランス・イタリア合作、ドイツ映画/1:1.85/モノクロ/2 時間24 分 提供:デイライト、ツイン 配給:ツイン 宣伝:ザジフィルムズ
2010年12月4日より、銀座テアトルシネマ、ほか全国順次公開
公開初日 2010/12/04
配給会社名 0251
解説
ついにパルムドールに輝いた“恐るべき”作家、ミヒャエル・ハネケの集大成
2009年カンヌ映画祭には、ケン・ローチ、ラース・フォン・トリアー、クエンティン・タランティーノ、ジェーン・カンピオン、ペドロ・アルモドバル、アン・リー、そしてマルコ・ベロッキオやアラン・レネまで、歴代パルムドール受賞監督を含む名匠・巨匠の新作がズラリ並んだ。そんなヴィンテージ・イヤーにパルムドールの栄冠に輝いたのが、ミヒャエル・ハネケ初のモノクロ作品、2時間24分に及ぶ大作『白いリボン』だった。これまではグランプリや監督賞を受賞しながらも、人間の心の闇に執拗に迫る作風に意見が二分されてしまったハネケ作品。審査委員長が『ピアニスト』でカンヌ主演女優賞を受賞したイザベル・ユペールだったことから、今年こそは最高賞かと揶揄する声もあったが、映画祭終盤に上映されるや、そんな意見はふっとんでしまった。美しくも完璧な映像の世界は、厳しいカンヌの常連を引き込み、有無を言わせなかった。「とにかく素晴らしい映画を選んだだけ」。このユペールの言葉は、駆け引きなし、的確に言い表していたに過ぎないのを誰もが認めざるを得なかった。
10年間に及ぶフランスでの映画づくりを経て、ハネケが久しぶりに母国語であるドイツ語映画に回帰したこの作品は、面白さと不安、そして美しいモノクロ映像で米アカデミー賞の外国語映画賞と撮影賞にノミネートされたほか、ゴールデン・グローブ賞やヨーロッパ映画賞など世界中の映画賞を席巻。ドイツのアカデミー賞にあたるドイツ映画賞では、作品賞、監督賞をはじめ10部門を総なめにし、2009年を代表する1本として映画史に名を刻んだ。
美しい村、静かな暮らし 聴こえてくる魔物の足音
舞台は第一次世界大戦前夜の北ドイツの小さな村。大地主の男爵を中心に、人々が静かに暮らすプロテスタントの村を、数々の奇妙な事故が襲う。やがて連なる“罰”の儀式・・・・・・疑心暗鬼の村人たち、そして苦しむ子供たち。この村に一体何が起こっているのか?
すべてはドクターの落馬事故から始まる。小作人の転落死、男爵家の火事、荒らされたキャベツ畑、子供の失踪。それぞれの事件が、徐々に村の空気を変えていく。誰の仕業なのか、皆が不信感を募らせる。そして村人たちの素顔が、次第に浮き彫りになっていく。陽気な収穫祭に沸き、澄んだ讃美歌の響く教会に集うこの村に潜む、悪意、暴力、嘘、欺瞞。.年の腕に巻かれた白いリボンは、「純真で無垢な心」を守れるのだろうか。
解決しない事件の先に、何かが見える
犯人が明らかに描かれている事件はたったの1件だけだ。しかし、ハネケは言う。「すべての事件に、論理的な説明がなされています。見ようとすることで見えてくるものを見て欲しい」。答えは、映画の中にあるのだ。数えきれないヒントを探って目をこらすうちに、何かが見えてくる。「ナチズムへの予言」(ル・モンド紙)、「人間の本性を覗く試み」(タイムズ紙)、「我々の未来の予告」(ガーディアン誌)——知的好奇心を否が応でもかきたてられ、見えない“魔物”を名指ししたいと挑まずにはいられない何かが、スクリーンから漂ってくる。これまでも一貫して追求してきた人間の中に潜む悪意を炙り出すハネケの作風は、“不穏”と呼ばれ、ときに難解さの代名詞のようにもなっていたが、今回は、物語を第三者(=昔語りをする元教師)に語らせるという手法を用い、観客を「その先にある何か」まで連れて行く道先案内にしている。その謎に、答えはあるのか。「わかる人にわかればいい」という排他的なイメージを払拭して、「映画は観客のものである」というハネケの信念が立ちのぼってくる。
ドイツ映画の頂点を極めたスタッフ・キャスト
『ピアニスト』でユペールとブノワ・マジメルがカンヌ映画祭の主演女優賞・主演男優賞をダブル受賞、『隠された記憶』ではダニエル・オートゥイユがヨーロッパ映画賞の主演男優賞を受賞したように、ハネケは俳優から最高の演技を引き出すことでも評価が高い。『白いリボン』では、かつてないほど大勢の俳優がそれぞれ大きな比重を担って登場するが、ベテランの俳優たちと並んで見事な演技を披露した子供たちは、大掛かりなオーディションで集められたという。そのひとりひとりが独特の個性と存在感を主張しながら見せるアンサンブルが見事だ。2010年4月のドイツ映画賞では、助産婦役のスザンヌ・ロタールが主演女優賞部門にノミネートされ、牧師役のブルクハルト・クラウスナーと、牧師の娘クララを演じたマリア=ヴィクトリア・ドラグスが“親子”揃って主演男優賞と助演女優賞を受賞した。
第一次世界大戦直前の北ドイツの村を再現するにあたっては、精鋭スタッフが結集した。カラー撮影をモノクロ処理することで芸術的な画づくりを実現したのは、『ピアニスト』『隠された記憶』でもハネケ作品の撮影を担当したクリスティアン・ベルガー。夜空に燃え上がる火事、雪に輝く草原など、ため息の出るような印象的なショットの数々を写し出して、オスカーほか数々の撮影賞にノミネートされた。衣装は『王妃マルゴ』でオスカーにノミネートされた舞台衣装出身のモイデル・ビッケルが務め、美術、メイク、サウンド部門も揃ってドイツ映画賞の各部門を独占した。
ストーリー
第一次世界大戦前夜、ドイツ北部の小さな村。大地主を中心に、教会や学校のもとでプロテスタントの教えを忠実に守りながら人々が静かに暮らすこの村を、数々の奇妙な事故が襲う。やがて連なる“罰”の儀式・・・疑心暗鬼の村人たち、そして苦しむ子供たち。この村に一体何が起こっているのか?
スタッフ
督・脚本:ミヒャエル・ハネケ
脚本協力:ジャン=クロード・カリエール
撮影:クリスティアン・ベルガー (『隠された記憶』『ピアニスト』)
音声:ギヨーム・シアマ、ジャン=ピエール・ラフォルス
編集:モニカ・ヴィッリ (『ファニーゲームU.S.A.』『ピアニスト』)
美術:クリストフ・カンター (『隠された記憶』『ピアニスト』)
衣装:モイデル・ビッケル (『王妃マルゴ』)
製作総指揮:ミヒャエル・カッツ
プロデューサー:シュテファン・アルント、ファイト・ハイドゥシュカ、
マルガレート・メネゴズ、アンドレア・オキピンティ
キャスト
男爵:ウルリッヒ・トゥクール (『アイガー北壁』『善き人のためのソナタ』『ソラリス』)
牧師:・クラウスナー (『ベルリン、僕らの革命』)
家令:ヨーゼフ・ビアビヒラー (「コード:アンノウン」)
医者:ライナー・ボック (『イングロリアス・バスターズ』)
助産婦:スザンヌ・ロタール (『ピアニスト』『ファニーゲーム』)
小作人:ブランコ・サマロフスキー (「タイム・オブ・ザ・ウルフ」)
ほか
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