わたしの可愛い人 シュリ
原題:CHÉRI
2009年ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品作品
2009年/英・仏・独/90分/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル/字幕監修:工藤庸子/日本版字幕:古田由紀子 協力:マキシム・ド・パリ 配給:セテラ・インターナショナル
2010年10月16日よりBunkamura ル・シネマ他全国公開決定!
(c) TIGGY FILMS LIMITED & UK FILM COUNCIL 2009
公開初日 2010/10/16
配給会社名 0117
解説
友人の19歳の息子に愛されるほど、魅力ある40代後半の主人公レア。彼女は独身を貫き、人生を自分の意志で選択し、資産運営に長けている、今でいうセレブなワーキング・ウーマン。恋しても、おぼれることもなく、毒舌家の同僚たちに嫉妬されながらも、窮地を脱し、決してゴシップにまみれる事もなく、賢く、誇り高く生きてきた。レアは成功し、年下の男性の愛も手に入れたにもかかわらず一人で生き続けることを自身で課したその精神は、まさしく、現代女性の先駆けといえる。
舞台はベルエポックのパリ、1906年。芸術が花開き、女たちが魅力的だった美しき時代—。短い期間だがココット(高級娼婦)たちが、美貌と、文化教養、更に経済の知識をもち、パリの社会の中で、最も輝くセレブであった時代でもある。そのココットの中でも絶世の美女、レア(ミシェル・ファイファー)は、“恋に落ちる危機”を何度も見事に切り抜けてきた名うての女。一方、レアの元同業のマダム・プルー(キャシー・ベイツ)の一人息子シェリ(ルパート・フレンド)は、19歳で既に女遊びにも飽きているほどの“問題児”。母は磨きぬかれたレアの愛のレッスンで、息子をまっとうにし、更に金になる男にしたいという魂胆で、二人の仲を取り持つのだった。レアはいつものように数週間で別れるはずの恋だったのに、“不覚にも”6年も楽しく暮らしてしまった。やがて、年頃になったシェリの結婚話が持ち上がったとき、レアははじめてこの恋は一生に一度の愛だと気づく、しかし、誇り高い彼女はそれでも自ら別れを決意しようとするのだろうか?レアとシェリの二人の恋の行方は?
原作は甘美なる巨匠、そして、20世紀最高の女性作家コレットの代表作「シェリ」。コレットは、作家にして美貌の舞台女優、美容家であり、本作を執筆後、義理の息子と恋に落ちたことは当時のスキャンダルとなった。また、無名のA・ヘップバーンを見出したことでも有名だ。原作「シェリ」は、プルースト、アンドレ・ジッドも賞賛し、成功とともに、芝居にもなり、コレット自身が1年後にはレアの役を自身で演じた。
主人公レア役には『危険な関係』(88)、『ラブ・フィールド』(92・未)などで3度のアカデミー賞ノミネートに輝くミシェル・ファイファーが、本作ではシャンデリアのようにきらめきその魅力を放っている。妖しいほど美しいシェリ役は『ヴィクトリア女王 世紀の愛』(09)のヒットが記憶に新しいルパート・フレンド。今後の公開作も決定している若手実力派。今年は甘いマスクのルパートの人気が本作でブレークするに違いない。レアとしのぎを削った元ココットのライバルでゴシップ好き意地悪で毒舌家のシェリの母役という難役には、『ミザリー』(90)『アバウト・シュミット』(02)他、現代の名女優キャシー・ベイツ。彼女の存在が本作に更に深みとウィットを醸し出している。シェリの妻、エドメ役のフェリシティ・ジョーンズは2010年12月公開予定『The Tempest』で更なる注目を浴びている話題の新人。レアの元同僚マリ=ロール役のイーべン・ヤイレは『ディファイアンス』(08)での演技が記憶に残る。老婆ラ・コピーヌを演じたアニタ・パレンバーグはローリング・ストーンズのミューズとして名を馳せたが、個性派女優としても知られている。その他、イギリスで高く評価されている名舞台俳優たちが脇を固めている。
監督は『危険な関係』(88)、『クィーン』(06)のスティーヴン・フリアーズ。脚本は『危険な関係』でフリアーズとコンビを組んでいるクリストファー・ハンプトンが巨匠コレット原作を見事なシナリオに作り上げた。撮影には『デリカテッセン』(91)『セブン』(95)でヨーロッパのみならずハリウッドでも活躍するダリウス・コンジィ、音楽は『クィーン』(06)で監督とチームを組み、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(08)『Fantastic Mr. Fox』(09)で3度アカデミー賞ノミネートされ『ハリー・ポッターと死の秘宝』(10)も手がける今、最も売れっ子の映画音楽作曲家アレクサンドル・デプラ、衣装には同じく『クィーン』(06)のコンソラ−タ・ボイル。
本作は大ヒット作『危険な関係』『クィーン』のアカデミー賞監督、脚本、キャストが結集し、40億円の制作費をかけた、巨匠コレットの代表作「シェリ」の豪華完全映画化となった。
ロケ地はアール・ヌーヴォーの大建築家エクトール・ギマールのヴィラ・メザラ(パリ、16区)をレアの家として撮影。レアが逃避行するのがビアリッツのホテル・ド・パレ。パリのホテル・レジーナはシェリの遊び場でもあり、シェリが結婚式をあげるのがパリの5区にある美しいサン・エチエンヌ・ド・モン教会、そして勿論パリのレストラン、マキシムでも撮影。
現代の女性たちが今以上に、誇り高く、潔く、年下の男を愛するときめきを、本作で堪能するに違いない。まさしく、これは女性たちが更に人生を謳歌するバイブルとなるだろう。
ストーリー
時代の空気が20世紀へと移り、パリはヨーロッパで最も栄えた都市として謳歌していた。そこには有名な芸術家や文筆家たちが集い、まさに文化的・知的発展の最先端の地であり、世界の名だたる資産家や権力者が集まってくる都市であった。そしてもちろんこの街は、ココットの街としても名を馳せていた。彼女たちは美しく、知性に富み、愛の技巧に優れたエキスパートのセレブたちだった。
彼女たちの中の最たる成功者の一人が、その優れた経営センスのおかげで富を手にしたレア・ド・ロンヴァルであった。レアは40代になった今、その美貌を保ちながらもココットをリタイアして、優雅なアール・ヌーヴォーの屋敷で自分の力で築いた富と自由の日々を満喫していた。ある日、レアは友人で元同僚のマダム・プルーと昼食をともにする。かつては美しさを競い合ったマダム・プルーも今ではその輝きを失ったことを自覚し、そのことが彼女をゴシップ好きで意地悪な物言いをする中年の女にしていた。レアも彼女に対して深い友情を感じていたわけではなかったが、彼女たちのような職業についていた人間にとって、信頼できる友人がほとんどいないことを知っていたのである。
レアにシェリ(可愛い人)というニックネームを付けられたマダム・プルーの息子フレッドは、いかがわしい享楽的生活を送っている19歳で既に遊びに飽きた問題児だった。マダム・プルーは息子の遊びにお金がかかるので、レアが彼を養い、そして、将来のお金になる結婚ができるような男に育ててくれると企んだ。
レアが取り合わなかったように思われたその約束は実行された。レアはシェリを愛しながら教え諭した。約束は数週間のつもりであったはずが、6年が過ぎてなお、シェリはレアの家にいた。二人は互いにとって居心地がよく、穏やかにからかいあえる仲であり、痴話げんかをしながらも互いのいる生活を楽しんでいた。ある日シェリは母親たちの昼食会に呼びつけられ、知り合いのココットの10代の娘との結婚話を告げられた。マダム・プルーはレアにシェリの結婚を決めたことを伝えた。レアはうまく動揺を隠しおおせたが、その知らせは彼女を失望させた。その結婚によって、マダム・プルーは巨額の財産を手に入れ、挙式は数週間後に決められていた。
盛大な結婚式の後、シェリたちはイタリアでのハネムーンに旅立った。一方パリでは、レアがマダム・プルーのとげのある嫌味に耐えていた。マダム・プルーは自分のライバルが落ち込んで弱っている姿を見て、大いに満足していた。誇り高いレアは、自分の傷心を見せないためにも、ビアリッツに逃れ、マダム・プルーに自分が新しい恋人と出かけたように見せかけて行方をくらませた。シェリとエドメはハネムーンから戻ったが、シェリがまだレアに思い焦がれていることは明白であった。シェリは、もはやレアの不在に耐えられず、家出してホテル・レジーナに居を移し、レアの帰りを待って彼女の邸宅の周りを徘徊したり、元ココット、ラ・コピーヌの経営するアヘン窟で日々を過ごした。
季節が変わった頃、ようやくレアがパリに戻ると、シェリも安心して妻・エドメのもとに戻った——レアが近くにいるのだ!と。そして、シェリはレアの家を深夜まで見張り、新しい男がいないことを確かめて、強引に訪問する。一度は拒絶したレアだったが、シェリが自分を愛していることがわかると歓喜し、互いにつぶれそうなほど強く抱きあった。そして、次の朝、彼女は嬉々として逃避行の荷造りを始めるのだったが、シェリは妙に静かだった。彼はそんな逃避行を期待していたのではなく、エドメとの生活を送りながら、レアにそばにいてほしかったのだ。しかし、レアは、自分がシェリの愛人になるということは、彼女のそれまでの生き方を否定することだった。この愛が一生に一度のものであっても、レアは誇り高く生きる選択をするのだった。シェリを無理やり帰し、家から遠ざかっていくのを見ながら、彼女は窓ごしから見てしまう。シェリが悲しみに暮れ立ち去りながらも、自由をようやく得たかのように朝の空気を吸い込む姿を。その後、シェリがレアへの愛に気づくのには時間が必要だった・・
スタッフ
監督:スティーヴン・フリアーズ
脚本:クリストファー・ハンプトン
製作:ビル・ケンライト
共同製作:アンドラス・ハモリ
共同製作:トレーシー・シーワード
撮影監督:ダリウス・コンジィ
美術:アラン・マクドナルド
メーキャップ:ダニエル・フィリップス
編集:ルチア・ズケッティ
音楽:アレクサンドル・デプラ
衣装:コンソラータ・ボイル
原作:コレット「シェリ」岩波文庫刊 /「声に出して読む翻訳コレクション コレット1」左右社刊
サウンドトラック:『わたしの可愛い人—シェリ』(ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント/ランブリング・レコーズ
キャスト
シェリ、フレッド・プルー:ルパート・フレンド
マダム・プルー:キャシー・べイツ
エドメ:フェリシティ・ジョーンズ
マリ=ロール:イーベン・ヤイレ
ローズ:フランセス・トメリー
ラ・コピーヌ:アニタ・パレンバーグ
ラ・ルーピオット:ハリエット・ウォルター
男爵:ベット・ボーン
リリ:ギャべ・ブラウン
デスモン子爵:トム・バルク
マダム・アルドンザ:ニコラ・マックリーフ
パトロン:トビー・ケベル
ナレーション:スティーヴン・フリアーズ
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