息子を失った元プロレスラーと、親の愛情を知らない少年。 孤独なふたりが出会い、ともに過ごしたひと夏の希望と勇気の物語。

韓国・プチョン国際ファンタスティック映画祭・「オフ・ザ・ファンタスティック」 第22回東京国際映画祭・コンペティション部門

2008/日本映画/100分/カラ—/Dolby-SR/アメリカンヴィスタ 配給:ビターズ・エンド

2010年11月05日よりDVDリリース 2010年6月12日(土)より、角川シネマ新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー

(C)『ACACIA』製作委員会

公開初日 2010/06/12

配給会社名 0071

解説


息子を失った元プロレスラーと、親の愛情を知らない少年。
孤独なふたりが出会い、ともに過ごしたひと夏の希望と勇気の物語。

さびれた団地の用心棒をつとめる初老の元覆面プロレスラー、大魔神。彼は息子に充分な愛情を注げなかった悔いを胸の底に秘めて生きてきた。そんな彼の家に転がり込んできた少年、タクロウ。母親に置き去りにされ、誰にも心を許さないタクロウが、大魔神の前ではなぜか素直になれた。あたたかい団地の住人たちとアカシアの木々に見守られ、束の間、親子のように暮らすふたり。かけがえのない時を重ねるうち、それぞれが本当の家族と再会し、過去の痛みを乗り越える勇気を手にしていく——。
作家、ミュージシャン、映画監督として、ボーダーレスに表現活動を続ける辻仁成の6年ぶりの監督作『ACACIA』は、父の愛とは何かを問いかけるヒューマンドラマ。家族がバラバラになり、離れて暮らすようになっても、父が息子のことを考えない日はない。その思いはどうしたら届くのか。空いてしまった心の穴は埋められるのか。高齢化社会にひそむ孤独や、子どもを取り巻くいじめの問題など、様々な世代の人間が抱える現実を見すえながら、映画はいつの時代もゆるがない人間の絆を描き出す。

誰も見たことがないアントニオ猪木がここにいる。

日本のプロレス黄金時代を築き、不滅の闘魂を燃やし続ける男、アントニオ猪木。圧倒的な存在感を放つ本作の主人公、大魔神を演じられるのは、彼以外にいない。そう確信していた辻監督のオファーを、アントニオ猪木は「引き受けよう。男に二言はない」と快諾。映画初出演ながら、類まれなるスター性と純粋な眼差しで、日本の男たちが失いかけている強い父性を体現してみせた。目尻に深いしわを寄せて微笑み、大きな体を折り曲げて縫い物をし、哀しい過去を思い出して立ちすくみ、霧に包まれたリングの上に佇むその姿——。スクリーンに焼き付けられたアントニオ猪木=大魔神の一挙一動は、観る者すべての胸を大きく揺さぶるだろう。

もうひとりの主役、タクロウには、林凌雅。いじめられっ子が大魔神から愛情とプロレスを伝授されて逞しく成長していく様をいきいきと演じ、映画に明るい光をもたらす。主人公二人を取り囲む人々には、日本映画界を支える実力派が集結した。大魔神の別れた妻に石田えり。今は新しい家族と暮らすタクロウの父に北村一輝。親よりも女として生きる母に坂井真紀。タクロウに老いとは何かを教える団地の住人に、松竹映画の青春スターとしてデビューして以来、半世紀もの映画キャリアを誇る川津祐介。
また、舞台となる函館の港町風情も本作の重要なキャラクターである。函館は辻監督が思春期を過ごし、これまで幾度となく小説や映画の舞台に選んできた土地。『ACACIA』ではすべての撮影を函館で行い、風の渡る草原や海峡を望む廃虚といった、観光名所のきらびやかさとは対極にある素朴な風景を切り取った。映画のラスト、その詩情あふれる光景は、持田香織が歌う主題歌「アカシア」と一体となり、観客の心にやさしい余韻を残す。

ストーリー





山と海からの風が渡る港町。その片隅に、時代から取り残されたような団地が並んでいる。元覆面プロレスラーの大魔神(アントニオ猪木)は、そこで年老いた住人たちの話し相手や用心棒をつとめながら、ひとり静かに余生を送っていた。ある初夏の日、彼の前にタクロウという名の少年(林凌雅)が現れる。同級生たちにいじめられていた彼に、大魔神はプロレスを教えてやった。後日、タクロウが今度は母親(坂井真紀)に連れられてやって来る。母親は大魔神にタクロウを押し付けると、タクロウの父の居場所が書かれたメモを残して去っていった。

タクロウは、父は既に他界したと聞かされて育った。母は子育てよりも恋愛に夢中だ。遊び相手はゲームだけ。誰にも心を許さない彼だが、大魔神のやさしさに包まれていると素直になれた。やがて団地の暮らしにも馴染んできた頃、タクロウは大魔神のトランクの中に子ども用の覆面と古い家族写真を発見し、大魔神に妻子がいたことを知る。

ある日、大魔神はタクロウの父に会いに行く。奇しくも父の木戸春男(北村一輝)は、団地の老人たちを担当するケースワーカーだった。新しい妻と2人の娘と暮らす春男は、タクロウの成長した姿を知らない。それでも息子の存在を忘れたことはなく、心の奥の思いを腹話術の人形に向かって吐露するのだった。

時を同じくして、大魔神のかつての妻、芳子(石田えり)が団地を訪ねてくる。不在の大魔神のかわりに対応したタクロウに向かって、芳子は夫婦の亡くなった息子、エイジのことを語り始める。そしてエイジの死が、当時現役だった大魔神と芳子の間にいかに大きな溝を作ったのかも……。

相手が抱えている哀しみを感じながら、大魔神とタクロウは親子のように寄り添い、絆を深めていった。タクロウはプロレスを教わりながら逞しさを身につけ、大魔神はそんなタクロウにエイジの面影を重ねる。過去の痛みを乗り越え、現実に向き合う勇気を、ふたりは手に入れようとしていた。そして、大魔神はタクロウと春男を、タクロウは大魔神と芳子を引き合わせようとする——。

スタッフ

監督・脚本:辻 仁成
製作:スカンヂナビア、竹中グリーンプロジェクト、jinsei film syndicate、ウォーターワン
プロデューサー:杉澤修一 
アソシエイトプロデューサー:佐藤公美/岩淵 規/片岡 利歌
原作:辻 仁成 「アカシアの花のさきだすころ -ACACIA-」(新潮社刊)
主題歌:「アカシア」(唄:持田香織) 
撮影:中村夏葉 
音楽:半野喜弘 
美術:原田恭明 
録音:橋本泰夫 
照明:常谷良男 
編集:大重裕二 
スクリプター:岩倉みほ子 
助監督:久保田博紀 
制作担当:平原大志
支援 文化庁 
配給・宣伝:ビターズ・エンド  

キャスト

アントニオ猪木 
林 凌雅 
北村一輝 
坂井真紀
川津祐介
石田えり

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