原題:SAD VACATION

すべてを包み込みながら美しく生きる、 “ゆるぎない女たち”の物語。

2007年/日本/カラー/136分/ 配給:スタイルジャム

2008年02月27日よりDVDリリース 2007年9月8日、シネマライズ他にて全国順次ロードショー!

© 間宮運送組合 2007

公開初日 2007/09/08

配給会社名 0650

解説



 幼い頃に自分を捨てた母との運命的な再会を果たした息子。母への復讐を胸に秘めてともに暮らし始めた息子の前に、偉大なる母性が立ちはだかる……。運命に抗い、運命に翻弄される男たちと、すべてを包み込みながら美しく生きる、“ゆるぎない女たち”。やさしく、したたかな女たちの笑顔が、男たちを未来へと導く……。
 浅野忠信、石田えり、宮?あおい、板谷由夏、中村嘉葎雄、オダギリ ジョーら豪華キャストが夢の競演を果たし、日本映画の新たな傑作が誕生した。

構想10年、青山真治監督の集大成的作品。

『Helpless』で鮮烈なデビューを飾り、『EUREKA ユリイカ』では第53回カンヌ国際映画祭において国際批評家連盟賞とエキュメニック賞をダブル受賞し、国内外での評価を不動のものとした青山真治。『Helpless』から11年、『EUREKA ユリイカ』から7年の時を経て描き出した“北九州サーガ”の集大成的作品が、『サッド ヴァケイション』である。「EUREKA」で三島由紀夫賞を受賞するなど、小説家としても活躍する青山自身の同名小説をベースに、全編北九州ロケを敢行した意欲作。大規模な予算をかけて充分な製作環境が整えられたことで、青山監督は遺憾なくその才能を発揮し、監督としての新境地を切り開いた。新たなエッセンスはずばり“やさしさ”。鋭い洞察力と膨大な知識に裏打ちされた作家性は健在であるが、観る者を釘づけにするストーリー展開、ヴァラエティに富んだ斬新な音楽などが加わり、これまでにない、明快かつ爽快感溢れる新たな青山ワールドが広がっている。

日本映画界が誇る豪華キャストの競演。

 主演は、『Helpless』に続いて健次を演じる浅野忠信。前作から11年が経ち、世界的な評価と知名度も高まった彼は、実生活では2児の父。11年という月日と、自身が親であるからこそ演じることのできた新境地を見せる。もうひとりの主役と言うべき、母・千代子役には、観る者を包み込むような美しさとその圧倒的な存在感で魅了し続ける名女優、石田えり。強さと恐さを併せ持った母親像を体現し、強烈な印象を残す。『EUREKA ユリイカ』に続いて梢を演じているのは宮?あおい。昨年のNHK連続テレビ小説、来年のNHK大河ドラマの主演を務める国民的女優に成長した彼女は、本作でも繊細な演技を見せる。梢と共に働く後藤役にはオダギリ ジョー。昨年の映画賞を総なめにした『ゆれる』で演技派としての力量をあらためて示し、今年も『蟲師』『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』と主演作が相次ぐ彼が、陰のある男をミステリアスに演じる。そして、健次の恋人・冴子役には人気ドラマ出演や、雑誌のイメージキャラクター抜擢、そして第58回カンヌ国際映画祭で絶賛された『運命じゃない人』での好演など、最近の活躍がめざましい板谷由夏、健次の異父兄弟・勇介役には『地下鉄(メトロ)に乗って』ほか数々の話題作に出演、そのフォトジェニックな風貌を武器にめきめきと頭角を現す若手実力派俳優、高良健吾が扮している。そして千代子の夫・間宮役には大ベテランの中村嘉葎雄。慈愛と寛容の精神に溢れた父親を見事に演じている。また、異彩を放っているのは『Helpless』と『EUREKA ユリイカ』にも出演していた光石研と斉藤陽一郎。抜群のコンビネーションで漫才のようなかけ合いを見せ、作品には欠かせないユーモアを添えている。

日本映画界の実力派スタッフが集結し、
オール北九州ロケを敢行。

 原作・脚本・監督を務めた青山真治のもとに、日本映画界の実力派スタッフが集結。オープニング曲でもあるジョニー・サンダースの「Sad Vacation」、中国語のラップなどヴァラエティに富んだ音楽を手がけたのは長嶌寛幸。今回はキャラクターに合わせた曲使いで、浅野忠信演じる健次のシーンで度々鳴り響くモンゴル発祥の口琴(ジョーズハープ)の音が特に印象的だ。他にも、美術の清水剛、撮影のたむらまさき、照明の中村裕樹など錚々たるメンツが集まり、新境地に挑む青山監督を強力サポート。そして、プロデューサーには甲斐真樹。監督および甲斐自身も北九州出身ということもあり、オール北九州ロケを敢行。オープニングの空撮、日本三大カルストと呼ばれる平尾台や若戸大橋のシーンなどの美しい映像と、独特の方言や荒々しい雰囲気が絡み合い、北九州という土地が持つ独特な空気を完璧に再現した。

ストーリー




 北九州の港に一隻の船が到着する。乗っていたのは中国からの密航者。彼らの手引きをしていた健次(浅野忠信)は、船内で父親を亡くしてしまった少年アチュンを連れて家へと逃げ帰る。5歳のときに母に捨てられ、精神を病んだ父親も自殺してしまった健次は、ある事件をきっかけに、幼なじみでヤクザだった安男の妹・ユリ(辻香緒里)と共に暮らしていた。知的障害者であるユリ、まだ幼い無邪気なアチュンとの新たな共同生活に、健次は安らぎを感じ始める。
 若戸大橋のたもとに間宮運送という小さな運送会社がある。社長の間宮(中村嘉葎雄)は、かつてバスジャック事件の被害に遭った梢(宮?あおい)、借金取りに怯える後藤(オダギリ ジョー)をはじめ、ヤクザに追われる者、資格を剥奪された医師ら、脛に傷持つ流れ者たちに職と住み処を与えていた。彼らは、お互いを詮索することなく一定の距離を保って暮らしているが、本当は心のどこかでつながりを求めている彷徨い人。行き場のない彼らを、間宮は放っておくことができない……。
 まるで接点がないかのように見えたこのふたつの疑似家族が、運命のいたずらによって交わることになる。中国人の追っ手から逃れるために運転代行へと職を変えた健次が、ある日、慣れない酒に酔って運転できなくなった間宮と出会ったのだ。そして、間宮運送まで送り届けた健次は、玄関先に出てきた間宮の妻・千代子(石田えり)の姿を見て驚愕する。千代子は、かつて健次を捨てていった母に違いなかった。
 再び母とひとつ屋根の下で暮らし始めた健次。「あの女を不幸にするためなら、どんなことでもやってやる」。ずっと胸に秘めてきた健次の復讐心は、日に日に大きくなる千代子という母親の存在に惑わされ、翻弄される。唯一心を通わせる恋人の冴子(板谷由夏)に会ってもイライラの消えない健次は、ある夜、ついにその復讐心を異父兄弟の勇介(高良健吾)にぶつけ、失踪へと追い込んでいく。
 かつて母だった女、そしてかつて息子だった男。つながりを求める者、そして断ち切る者。どんなに健次が千代子に復讐を果たそうとしても、その前に立ちはだかる偉大なる母性。すべてを包み込みながら美しく生きる、”ゆるぎない女たち”。梢、ユリ、冴子、そして千代子、やさしく、したたかな女たちの笑顔が、男たちを未来へと導く……。

スタッフ

監督・原作・脚本:青山真治
プロデューサー:甲斐真樹
撮影:たむらまさき
照明:中村裕樹
録音:菊池信之
美術:清水剛
編集:大重裕ニ

キャスト

浅野忠信
石田えり
中村嘉葎雄
板谷由夏
宮崎あおい
オダギリジョー
光石研
嶋田久作
豊原功補
とよた真帆
斉藤陽一郎
辻香緒里
高良健吾

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