原題:The Queen

1997年8月31日。ダイアナ元皇太子妃がパリで自動車事故によって急逝した─。

第63回ヴェネチア国際映画祭 最優秀女優賞、脚本賞、国際映画批評家連盟賞受賞 ナショナル・ボード・オブ・レビュー最優秀主演女優賞受賞 2006年ロサンゼルス批評家協会賞最優秀主演女優賞、助演男優賞、脚本賞、音楽賞受賞 ニューヨーク映画批評家協会主演女優賞、作品賞、脚本賞、 2006年ワシントンDC映画批評家協会賞最優秀主演女優賞受賞 第64回米ゴールデン・グローブ賞最優秀主演女優賞(ドラマ部門)、最優秀脚本賞 英国アカデミー賞作品賞、主演女優賞受賞 第79回米アカデミー賞 主演女優賞受賞

2006年/イギリス、フランス、イタリア/カラー/97分/ドルビーデジタル 配給:エイベックス・エンタテインメント

2007年10月24日よりDVDリリース 2007年4月14日よりシャンテシネ、4月21日より新宿武蔵野館とシネ・リーブル池袋、4月28日よりナビオTOHOコンプレックスほかにて全国拡大ロードショー

(C) Granada Screen (2005) Ltd / Pathe Renn Productions SAS / BIM Distribuzione

公開初日 2007/04/14

配給会社名 0316

解説


1997年8月31日。ダイアナ元皇太子妃がパリで自動車事故によって急逝した─。
あの事故から10年。今まで決して語られることのなかった事故直後のロイヤル・ファミリーの混乱、首相になったばかりの若きブレアの行動、そして女王の苦悩と人間性を描いた秀作。
<世紀の結婚>と世界中に祝福されたロイヤルウェディングから16年後。チャールズ皇太子との決して幸せとは言えなかった結婚生活に終止符を打ったダイアナは、新しい恋人と巡り合い、皇太子妃だった頃よりも積極的にエイズ患者や地雷被害者の救済に力を注ぎ、まさに充実した人生の真っ只中にいた。そんな彼女の新しい恋の行方を狙うパパラッチは執拗に彼女を追い続け、その過激さは日を追うごとに激しさを増していった。
そしてついに最悪の結果を迎えることとなる。1997年8月30日深夜、ダイアナと恋人アルファイド氏の乗った車は猛スピードで追いかけるパパラッチとの激しいカーチェイスの末大破し、ついに二人は帰らぬ人となってしまったのだ。
事故直後、英国国民の関心は一斉にエリザベス女王に向けられ、たびたび取り沙汰されていたエリザベス女王とダイアナの不仲説への好奇心の対象となった。ダイアナはいつでもエリザベス女王にとって頭痛の種であったし、チャールズ皇太子との離婚後、民間人となった彼女の死に対して英国王室ができることは何もないはずであった。エリザベス女王はダイアナについてのコメントを避け続けたが、絶大な人気を誇るダイアナの死を無視することは、結果的に国民を無視することとなってしまう。民衆の不信感は急激に増大し、エリザベス女王は窮地に追い込まれてしまった。この空気をいち早く察知し、王室と民衆の橋渡し的な役割を担ったのが、首相になったばかりの若きトニー・ブレアであった。ダイアナの事故直後の7日間のエリザベス女王の”本当の姿”、そしてダイアナとエリザベス女王の間に確実に存在した確執をはじめて描いた作品。
実力派俳優とベテラン監督による最高傑作!ヴェネチア国際映画祭最優秀主演女優賞をはじめ各映画賞を多数受賞し、2007年ゴールデングローブ賞にも最多4部門ノミネートの快挙。
本作はヴェネチア国際映画祭最優秀主演女優賞をはじめ、各映画祭で数多くの賞を受賞。なかでも、ダイアナ事故死直後の混乱の中で苦悩するエリザベス女王を人間性豊かに演じたヘレン・ミレンが、多くの映画祭で最優秀主演女優賞を受賞している。ヘレン・ミレンはこれまでにも、多くの映画や舞台、テレビドラマなどで数々の賞を受賞しているが、近年ではテレビドラマ「エリザベス1世〜愛と陰謀の王宮〜」(05)にて、2006年エミー賞最優秀主演女優賞を受賞している。エリザベス1世を演じた「エリザベス1世〜愛と陰謀の王宮〜」とエリザベス2世を演じた本作『クィーン』の両作品でともに高い評価を得ている。スティーヴン・フリアーズは、多くの実力派俳優から信頼の厚いベテラン監督。『危険な関係』(88)でアメリカ映画界に進出後、数々の賞を受賞し、近年では『ヘンダーソン夫人の贈り物』(05)で高い評価を得ている。ほか、ブレア首相役のマイケル・シーン、脚本家のピーター・モーガンもともに高い評価を得ており、実力派俳優とスタッフによる質の高い作品として世界各国で絶賛されている。

ストーリー




1997年5月、イギリス総選挙当日。今世紀最年少の首相候補として注目を浴びるトニー・ブレア(マイケル・シーン)が投票所に一番乗りしている頃、王室では女王エリザベス2世(ヘレン・ミレン)が肖像画のモデルとしてキャンバスの前で威厳をたたえ、君主でありながら選挙権がない皮肉を嘆いていた。自分の意見を示したい。そのために投票してみたいというのが女王ゆえの叶わぬ願いだった。翌朝、女王は目覚めとともにブレアが大勝利を収めたことを知る。”過去 300年で最大の憲法の近代化を行う”と公約したブレアが国民に選ばれ、首相として認めなくてはいけない女王の心境は複雑だった。やがて、女王の承認を得るため、ブレアが緊張の面持ちで宮殿に到着。宮殿の中に一歩入ると、そこは格式としきたりに満ちた世界。ブレアは、側近から女王への挨拶の仕方、発音まで伝統的な作法を指示され、やがて女王に迎え入れられる。しかし、表面的な会話をいくつか交わしたのち、あっけなく新政権の設立が女王に認められ、喜びに浸る間もなく、儀式はたった15分で終了するのだった。

 1997年8月30日、夜のパリ。ホテル・リッツの前では、パパラッチや報道陣が群をなしダイアナの姿をカメラに収めようと待ち構えていた。ダイアナと恋人ドディ・アルファイドは、ホテルの裏口から車に乗り込むが、複数のバイクがカメラのフラッシュを光らせ接近。そして、車は狂スピードのまま悲劇が起きるアルマ橋のトンネルに入ってくのだった。深夜、女王の待従長にパリの大使館からダイアナが交通事故に遭った連絡が入る。同乗していたドディの死亡が確認され、ダイアナは集中治療室に運ばれたという。その知らせは、ブレアはもちろん、ロイヤルファミリーにも伝えられた。チャールズ皇太子(アレックス・ジェニングス)は、王室機でパリに向かおうとするが、女王は「王室の浪費と国民から非難される」として王室機の使用を禁止するとともに、ダイアナはもはや民間人であり国事でないことを主張する。

そして8月31日、朝5時。ロイヤルファミリーに伝えられたダイアナ死亡の知らせ。女王は、チャールズに将来のイギリス国王となる母親の遺体を王室機で連れ戻すことが浪費なのか尋ねられ、しぶしぶ承諾。一方ブレアは、大変な騒ぎになると予想し、早朝から報道担当官と声明発表の準備に追われていた。女王からの公式声明がない中、バッキンガム宮殿には悲しみに暮れる国民が集まり、多くの花が手向けられる。また、ダイアナの実兄がテレビカメラの前で心境を語り、妹を殺したのはマスコミだと責任を追及。その頃、ロンドンでの騒ぎから遠く離れたバルモラル城では、朝食を取ろうとしていた女王にブレアから電話が入る。内容は、国民に対してのスピーチや葬儀についてだった。厄介だったダイアナが死んでまで、マスコミの見世物になりたくない女王は、国民の思いや望みを知ろうとはせず、ダイアナの生家の意見を尊重して内輪の葬儀で済ませると言い放つのだった。頑なな女王の態度に苦悩するブレアは、報道担当官が練った声明文を発表。ブレアの”国民のプリンセス”という言葉は多くの国民の心に響き、彼の人気は急上昇していく。一方チャールズ皇太子は、ダイアナが搬送されたパリの病院で遺体と対面。王室機で棺をロンドンに運んだチャールズ皇太子は、出迎えに来ていたブレアに女王をはじめとするロイヤルファミリーの古い考え方を非難。自分は柔軟性のある新しい時代の人間であると自ら主張するのだった。

9月1日、月曜日。バッキンガム宮殿では、ダイアナの葬儀について会合が行われ、6日後の日曜日にウェストミンスター寺院で国葬を行う方向で話が固まった。国葬のスタイルは、皇太后(シルヴィア・シムズ)が自分のために考えた葬儀プランがモデルで、政府関係者や警備隊のリハーサルが唯一済んでいるものだったため採用された。さらに、来賓には各国の皇族だけでなく、ハリウッドスターやデザイナーとった各界のセレブリティーを招くことに。女王は、派手な内容に呆れるとともに、アトラクションのような国葬を本当にイギリス国民が望んでいるのか疑問に思い、国民の考えていることが理解できないでいた。一方、ブレアの元にチャールズ皇太子の個人秘書から電話が入り、皇太子がブレアに共感しエールを送っている旨伝えてきた。国民の怒りが一斉に王室に向けられていることを感じ取ったチャールズ皇太子は、標的を母親である女王一人に集中させるため、ブレアにすり寄りってきたのだ。

9月2日、火曜日。ダイアナが死んだにも関わらず、バッキンガム宮殿に半旗が揚がっていないことが、国民の怒りにさらに火を付け、ブレアが国民の声を代弁するため女王に至急電話をする。ブレアの意見を聞き、半旗を揚げるべきか悩む女王にフィリップ殿下は、旗は宮殿に君主がいる印であり、バルモラルにいる以上、半旗を揚げる必要はないと激怒。君主に指図する生意気なブレアに苛立つのだった。

9月3日、水曜日。マスコミは自分たちの責任の追及をかわすため、新聞の記事では王室のバッシングがエスカレート。ブレアは、マスコミから王室を守るため、そして女王に国民の望みを伝えるため、再度バルモラル城に連絡。宮殿に半旗を揚げ、早急にロンドンに戻ることが、国民の感情を抑える手段だと進言する。しかし、女王は誰よりも国民を知っていると怒りをあらわにし、この異常なムードを作ったのはマスコミであり、本来のイギリス国民が示す品位ある哀悼の表現とはかけ離れている現実を指摘。ブレアは女王の意見を受け入れるが、国民の思わぬ反応に一番動揺しているのは女王自身だった。女王は、気分展開に鹿狩りに出た家族をひとり車で追うことに。だが、山道を走行中、車が川にはまって故障してしまう。助けを待ち、川辺に腰を下ろす女王。スコットランドの大自然の中、突然ひとりになった彼女の目に突然涙が溢れ出す。国民のために人生を捧げてきたにも関わらず、今、彼らから激しい怒りをぶつけられている恐怖。女王という立場の苦悩と悲しみ、そして憤りといった感情が一度に爆発してしまう。そんな女王の前に、美しい一頭の鹿が現れる。あまりの美しさにしばらく見とれていたが、遠くで銃声を聞き、必死で鹿を逃して安堵する。気持ちが落ち着いた女王の表情には、いつもの威厳が戻っていた。

9月4日、木曜日。早くも葬儀パレードの沿道に徹夜組が現われる。相変わらず新聞では女王やロイヤルファミリーに対する辛らつな見出しが並び、反対にブレアの人気は国民から敬愛されたウィンストン・チャーチル元首相の当時の人気を上回るほどになっていた。なんとか女王を擁護したいブレアは、翌朝発表される世論調査の王室に対する厳しい結果を女王に報告。さらに、4人に1人が王政廃止に賛成している現状から、予想される最悪の事態を避けるための4つの方法を女王に提言。それは、バッキンガム宮殿に半旗を上げ、ロンドンに早急に戻り、ダイアナの棺に別れを告げて、テレビの生放送で声明を発表することだった。女王の威厳がかろうじて守られるバルモラル城で、世俗の騒ぎをシャットアウトし、マスコミと国民の前から姿を隠していた女王だったが、これ以上避けることのできない問題への決断が迫られる。

9月5日、金曜日。悩んだ末、ブレアの提言を全て聞き入れた女王は、固い表情でバッキンガム宮殿に戻る。宮殿に到着するや女王は、門の外に積まれた花やカードを一つずつ丁寧に見て回り、王室を非難するメッセージを目にして心を痛める。女王が門の外に集まった国民の中に入っていくのは、終戦以来の出来事であり、彼女の異例の行動がマスコミや国民を驚かせるのだった。声明を発表するテレビの生放送の撮影が刻一刻と近づいていた。女王は、原稿に目を通した後、風格のある毅然とした態度でカメラの前に立つ。そしてついに、イギリス国民をはじめ世界中が見守る中、女王の声明が発表されるのだった。

スタッフ

監 督/スティーヴン・フリアーズ/Stephen Frears
脚 本/ピーター・モーガン/Peter Morgan
製 作/アンディ・ハリース/Andy Harries
    クリスティーン・ランガン/Christine Langan
    トレイシー・シーウォード/Tracey Seaward
製作総指揮/フランソワ・イヴェルネル/Francois Inernel
      キャメロン・マクラッケン/Cameron McCracken
      スコット・ルーディン/Scott Rudin
撮影監督/アフォンソ・ビアト ASC ABC/Affonso Beato ASC ABC
プロダクション・デザイン/アラン・マクドナルド/Alan Macdonald
編 集/ルチア・ズケッティ/Lucia Zucchetti
音 楽/アレクサンドル・デプラ/Alexandre Desplat
キャスティング・ディレクター/レオ・デイヴィス/Leo Davis

キャスト

女 王/ヘレン・ミレン/Helen Mirren
フィリップ殿下/ジェイムズ・クロムウェル/James Cromwell
チャールズ皇太子/アレックス・ジェニングス/Alex Jennings
ロビン・ジャンヴリン/ロジャー・アダム/Roger Allam
クイーン・マザー(皇太后)/シルヴィア・シムズ/Sylvia Syms
スティーヴン・ランポート/ティム・マクマラン/Tim McMullan
侍 従/ロビン・ソーンズ/Robin Soans
ウィリアム王子/ジェイク・テイラー・シャントス/Jake Taylor Shantos
ヘンリー王子/ダッシュ・バーバー/Dash Barber
トニー・ブレア/マイケル・シーン/Michael Sheen
シェリー・ブレア/ヘレン・マックロリー/Helen McCrory
アレステア・キャンベル/マーク・ベーズリー/Mark Bazeley
ダイアナ妃/ローレンス・バーグ/Laurence Burg
ドディ・ファイド/ミシェル・ゲイ/Michel Gay

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