恋する トマト クマインカナバー
大地康雄 企画・脚本・製作総指揮・主演 南部英夫 監督
2005/日本/35mm/カラー/アメリカンビスタ(1:1.85)/DTS/126分 配給:ゼアリズエンタープライズ
2007年06月21日よりDVDリリース 2006年5月13日、銀座シネパトス、新宿K's cinemaほか全国ロードショー
©2005「クマインカナバー」製作委員会
公開初日 2006/05/13
配給会社名 0040
解説
名峰、筑波山を望む、霞ヶ浦周辺に広がる美しい田園地帯。まばゆい陽光の降り注ぐフィリピン・ラグーナの村。「恋するトマト」は、二つの土地を結んで、切なく愛おしく、日本人の中年男性と美しいフィリピン人女性が恋を紡いでゆく、アジアン・ネイチャーなラブストーリーである。
都会に暮らす人たちには、実感しにくいことかも知れないが、恋愛や結婚が遠い世界の話でしかない男たちが日本の農村には少なからず存在する。農家の長男に生まれたというただそれだけの理由で、結婚をあきらめる男たち。現在の農村の最大の悩みは嫁が来ないこと、それによって引き起こされる後継者不足。そのため日本の農業は窮地に追い込まれ、近い将来、国内で食物を作る人間がいなくなってしまう恐れすらある。それはとりもなおさず食糧自給の壊滅を意味するのだが、「恋するトマト」の主人公、野田正男は、こうしたわが国の農村の危機を一身に体現した存在である。40才を越えていまだ独身、それでもお見合いを重ねて必死に結婚へとあがいている。
そうした社会的なテーマを背景に覗かせながら、物語はラブロマンスという映画が最も輝く道をひた走る。遠い異国の地・フィリピンで、運命に導かれるように出会う正男とクリスティナの恋は、ふたりに共通する作物を育んでいく喜び、大地へのいつくしみ、太陽や水への感謝の気持ちなどと相乗しながら瑞々しく育まれていく。
正男を演じる大地康雄が素晴らしい。大地は、この「恋するトマト」においては、主演俳優であるにとどまらず、企画、脚本、製作総指揮と一人四役を演じている。大地の情熱がこの映画を作らせたと言って過言ではない。今から10年以上前の平成3年、友人に誘われフィリピンを訪れた大地は、貧しくも明るく前向きなたくさんの人々と出会い、いつかこの国で映画を撮りたいと夢想する。その後、作家の小檜山博、結婚して日本に暮らすフィリピン人女性・クリスティナ、茨城の農家の人たち……様々な人たちとの出会いによって、映画製作の構想はだんだんに具体的な輪郭を見せ始める。原作を小檜山氏に依頼し、その原作をもとに自ら脚本を執筆し、監督をベテラン南部英夫に委ね映画製作全体を主導する。この映画作りへの情熱がスクリーンにそのまま大地演ずる野田正男を輝かせている。
正男が恋するクリスティナを演じるアリス・ディクソンも素晴らしい。フィリピンのトップ女優で、包み込むような優しさとあたたかさ、輝くような笑顔、豊穣な肢体が印象的。誰もが恋したくなるオーラを放っている。そして、富田靖子、村田雄浩、藤岡弘、ルビー・モレノなど脇を固める実力俳優たちも素晴らしい、スクリーンに、登場人物たちの、そして演じる俳優たちの生命が、鼓動が脈打っている。
ストーリー
野田正男(大地康雄)、45才。親孝行で気の優しい、純朴と言えば聞こえはいいが、結局のところ要領が悪く不器用で、いまだに結婚もできない農家の長男である。これまでに何度も見合いに挑戦、その度に苦渋をなめてきた。今度こそはと思った、田舎暮らしに憧れる景子(富田靖子)との縁談もついに破談に終わる。見かねた農業仲間の勇作(藤岡弘)の紹介で、フィリピンパブで働くリバティ(ルビー・モレノ)を紹介され、結婚を前提に交際を始める。そして、リバティに引っ張られるように二人は結婚することに。
フィリピンに渡っての結婚式。だが、正男を待っていたのは結婚詐欺の辛すぎる現実だった。農協に借金をして持参した結納金をだまし取られ、リバティは消える。生きる気力をなくした正男は浮浪者のようにマニラの街をさまよう。そんな正男を助けてくれたのは日本人の中田(清水綋治)だった。フィリピン女性を日本に送り込むブローカーである中田のもとで働き始めた正男は、だんだんとやくざの体質に変貌してゆく。
そんなある日、正男は仕事で通りかかったラグーナの村の風景に驚かされる。大きな湖の周囲に広がる農村地帯。それは、霞ヶ浦周辺に広がる美しい故郷の風景に酷似していた。そして黄金色の稲穂が風になびく田園、稲刈りに励む人々。その中心にいたのは何度かレストランで見かけたことのある美しい女性、クリスティナ(アリス・ディクソン)だった。父親が病気で働けないことを知った正男は、収穫を手伝い始める。土に触れることで、正男は農家に育った男の血が騒ぎ始める。そして芽生えるクリスティナへの想い。正男はクリスティナの家計の助けにと、フィリピンでは困難とされた日本の大玉トマトの栽培に挑戦を始める……。
スタッフ
企画・脚本・製作総指揮:大地康雄
原作:小檜山博「スコール」(集英社刊)
監督:南部英夫
プロデューサー:松本きい 松田芳樹 小坂一雄 飯田康之
ラインプロデューサー:瓜生敏彦
プロダクションコーディネーター:小森邦昭
撮影:小松原茂
照明:三善章誉
美術:西村伸明
録音:井家真紀夫
編集:金子尚樹
音楽:寺田鉄生
スクリプター:宮腰千代
助監督:山崎徳幸
制作担当:根津文紀
製作:「クマインカナバー」製作委員会(有限会社オーション/らでぃっしゅぼーや株式会社/株式会社IMAGICA/株式会社トドプレス/株式会社ムパタ インターナショナル)
制作協力:株式会社レオナ
協賛:オテル・ドゥ・ミクニ
支援:文化庁 DTS-STEREO ©2005「クマインカナバー」製作委員会
撮影協力:いばらきフィルムコミッション かすみがうら市 桜川市 つくば市 日立市 大子町
キャスト
大地康雄
アリス・ディクソン
富田靖子
村田雄浩
ルビー・モレノ
織本順吉
いまむらいづみ
でんでん
阿知波悟美
あき竹城
石井光三
ALEX ARGENTE
ARIEL BALDO
清水綋治
藤岡弘
LINK
□公式サイト□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す