第56回ヴェネツィア国際映画祭、国際批評家週間正式招待作品

1999年/製作:オメガプロジェクト株式会社/1時間54分/カラー/ビスタサイズ オメガ・プロジェクト株式会社、株式会社ポニーキャニオン、有限会社ジェイティーコミュニケーションズ、オメガピクチャーズ提携作品

2000年6月21日よりビデオレンタル開始 1999年11月1日よりシネマ下北沢より先行ロードショー公開 1999年11月27日より全国ロードショー公開

公開初日 1999/11/27

配給会社名 0010

解説

ミュージシャンそして芥川賞受賞作家としての肩書きを持つ辻仁成。それはすべて映画監督になるための足がかりだったといいます。10年間の構想期間を経て完成された本作品では脚本・監督、そして音楽監督までを手掛けた。今までの表現者として積み重ねてきた経験や実績の無大成として『千年旅人』では新たな表現者としての可能性を感じさせます。主演のツルギ役には豊川悦司。言うまでもなく人気と実力を兼ね備えた、日本を代表する俳優。本作品では、押さえた演技ながらも確かな存在感を醸し出し、見事に辻監督の演出に答えています。トガシ役の大沢たかお。最近ではスタンリー・クァン監督の映画『Ta1e of anis1and』に出演するなど海外からも非常に注目されています。まさに旬の俳優。今回は、サイレント的な映画の中で唯一「動」の存在であり、令までとはひと味違った面を見せてくれています。ツルギとトガシは、片や「死を受け入れなければいけない男」と、片や「死を願望する男」、両極の立場として存在しています。二人によって、人間の生への希望・絶望、元への願望・不安、このような誰もが必ず持っている感情を浮き彫りにしていく。そして浮き彫りにしていきます。そして「千年旅人」の鍵を握っているのが君江役・渡辺美佐子。君江は全てを知っており、物事の流れを静かにじっと見つめている。君江の口から語られる言葉は、本作品のキーワードになっています。
少女・ユマの選出は、新聞を通じての一般公募により、1200名の応募総数の中から、最も適した少去を選出することに成功しました。オーディションで“yuma”はイタリア歌曲を歌い上げ、その響く高音と安定した歌唱力に、辻監督は魅了されました。彼女と出会った瞬間、辻監督のインスピレーションに火がつき、彼は瞬く間に10曲を書き上げました。その中の1曲が本作品で主要となる「ARIA」です。その曲は『千年旅人』そのものであり、本編の中で歌う彼去の姿はまさに辻監督がイメージしていたユマなのです。
石川県能登半島門前町荒々しい日本海。荒涼とした自然の残る能登半島。本作品はその中で1999年3月末から1ケ月周期で撮影されました。時代の流れに取り残されたような町並み。1日に春夏秘冬を感じられるような4月の気候。そして、海に向かって立つ民宿。このような不思議な雰囲気を持つ能登半島を舞台に『千年旅人』の世界は作られました。

ストーリー

荒涼とした雄大な海岸線。余命1ケ月と医者に宣告されたツルギ(豊川悦司)は、自分の人生との中で最愛の女性・洋子に会うために、青春時代を過ごした懐かしい海に帰ってきた。ピアノ弾きとして東京で過ごしてきたツルギであったが、今では、人間としての生活を守るために、モルヒネに頼らなければいけなくなった。鞄の中には1ヶ月分のモルヒネが入っている。ツルギは難破船の隣で発声練習をしているユマ(yumma)に逢う。ユマは洋子の娘。洋子はツルギと別れた後、二人の幼なじみの良太と結婚していたが、ユマが5歳の時、車で事故に遭ってしまった。ユマはその時、母親を亡くしたのと同時に、片足も失い義足だった。現在は学核には行かず、祖母の君江(渡辺美佐子)と民宿「風花」を切り盛りしていた。君江の口から洋子の死を知らされたツルギ。ユマの案内で洋子の墓に行くと「そこには断崖から望む海。この晦から元者を舶に乗せて流すと、その魂は余所には行かず、この海に戻ってくる」という言い伝えを思い出し、自分の運命を感じるツルギであった。モルヒネが減っていくのと同時に親しくなっていく二人。ユマは漂流物を集め、沖を通る船に手旗信号を送り続ける日々を過ごしている。ある日、今まで送り続けてきた手旗信考が、初めて交信することに成功した。興奮している二人は偶然、自殺しようとしているトガシ(大沢たかお)に出逢う。自殺を止めに入った二人は、トガシを民宿まで連れていく。「俺には元ぬ権利もないのか」と嘆くトガシと、死が目の前に宿っているツルギはことごとくぶつかってしまう。何度も何度も自殺を試みるトガシが気になり続けるユマは、いつしかトガシに恋心を抱くようになる。トガシもまた、いつでも明るい笑顔を見せ励ましてくれるユマに惹かれていくようになる。しかし、自分は義足だという負い目を感じるユマは、素直に心を開くことが出来ないのであった。モルヒネの残りが少なくなっていくとツルギは、難破船を修理し始める。その行動はトガシにとっては無駄なものと写り、理解することが出来ない。その姿を遠くから見ている君江。祭りの夜、ツルギはとうとう倒れてしまう。「自分にとって、この春が最後の春になる」とツルギに付き添う君江・ユマ、そしてしてトガシに告白する。そして「あの難破舶に棄せて欲しい」と頼んだ。君江とユマは、洋子のことを思い出す。ツルギは洋子の魂に呼ぼれてここに辿り着いたたのだろうか。そしてトガシはツルギの代わりに難砥船の修理を始めるのであった…

スタッフ

監督: 辻仁成
エクゼクティブ・プロデューサー: 横浜豊行
プロデューサー: 河井真也
共同プロデュサー: 陶山明美、和田倉和利
撮影監督: 渡部眞
プロダクション・デザイナー: 種田陽平
録音: 柿澤潔
照明: 和田雄二
編集: 阿部浩英
サウンド・エフェクト: 柴崎憲治
助監督: 村上秀晃
製作担当: 山本章

キャスト

ツルギ: 豊川悦司
君江: 渡辺美佐子
トガシ: 大沢たかお

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