原題:A Good Lawyer's Wife

2003年ドーヴィルアジア映画祭コンペ部門グランプリ受賞 2003年釜山映画評論賞・主演女優賞(ムン・ソリ) 2003年映画評論家協会賞・脚本賞(イム・サンス) 2003年ストックホルム国際映画祭・主演女優賞(ムン・ソリ)

2003年8月14日韓国初公開

2003年/カラー/35mm/104分/シネマスコープ/ドルビーSRD 配給:ギャガ・コミュニケーションズ アジアグループ

2004年12月03日よりDVD発売開始 2004年12月03日よりビデオレンタル開始 2004年6月12日より[シアター]イメージフォーラムにて独占ロードショー

公開初日 2004/06/12

配給会社名 0025

解説


★ムン・ソリが真に世界を仰天させたブラック・コメディー
イ・チャンドン監督の『オアシス』での凄絶な演技で2002年ヴェネチア国際映画祭新人俳優賞に輝いたムン・ソリは、韓国映画の新しい顔として国内外で高い評価を受けた。だが、ヴェネチアをはじめ世界がさらに仰天したのは、翌2003年に本作が登場したときだった。脳性麻痺の女性から一転、次にムン・ソリが選んだのは、隣家の高校生を誘惑する倦怠期の妻なのだった!本作で彼女が演じるのは、息子と深い愛情で結ばれた母親にして、多忙な夫との冷えた関係を冷静に受け止める妻、重病の舅の看病も適度にこなす嫁、それやこれやのストレスをダンスで体を動かすことで発散させている女性一つまりは平凡な主婦なのだが、因習にとらわれることなく我が道を往く強さも秘めている女性だ。まだまだ若いけれども十分に熟れた女性の、ちょっと淫らで大胆な色気をおおいに漂わせ、持ち前の勇気で激しい濡れ場も熱演。それでもきっぱりとした清涼感が損なわれることがないのは、そこに自立した女性の姿がくっきりと表現されているからだ。
本作でムン・ソリはその演技力の確かさと大人の色香たっぷりの魅力の両方を見せてくれる。

★つねに韓国社会の本音を映画にしてきた挑発者、イム・サンス監督
30歳を目前に控えた独身女性3人が恋愛や結婚や性に対して赤裸々に語り合い、それぞれ悩みながらも思いのままに行動する日常を活写した『ディナーの後に』で鮮烈なデビューを果たした、イム・サンス監督。「処女たちのタ食」という原題のこの作品で、儒教の教えが浸透して処女神話がまだ生きていると言われていた韓国社会の現実を、イム監督は軽やかに鮮やかに切り取ってみせた。この作品のシナリオを書くにあたって何人もの女性にインタビューしたというが、第2作目の『ティアーズ』(2001年東京国際映画祭にて上映)では家出少年少女たちと1年間生活をともにしてシナリオを執筆。それぞれの事情で家を出た10代の少年少女4人の無軌道な生活ぶりと内面の渇きを誠実な視線で見つめた。
名門・延世大学で社会学を学んだイム監督は、韓国社会の本音を鋭く観察し、咀嚼して、時にドキュメンタリー映画のように撮影しながら、心に響くドラマを構築していく。そのリアリティは韓国社会の中にとどまらない普遍性を持ち、多くの人の共感を引き出し、また、自らの現実について立ち止まって振り返らせる力をも持つのだ。

★監督自身が投影されたリアリティ満載作品
本作についてイム監督は次のように語っている。「これは僕自身の物語であり、僕の妻の話であり、僕の家族や友人たちについての話だ」。前2作で取り上げた、独身女性、10代の家出少年という、自分自身からは距離のある登場人物とは違い、今回は自分自身や自分の家族を題材にした作品というわけだ。ソウル市北部にそびえる北漢山の麓に位置する鐘路区の高級住宅地に暮らす弁護士一家。何不自由なく暮らしているように見える彼らの生活も、内側に一歩入り込めばあちこちにほころびが見えてくる。弁護士家族とその両親以外にも、いく組もの親子や夫婦を遠景のように散りばめて、現代の家族のあり方を自虐的なまでに赤裸々に描き出した本作は、ブラックユーモアとリアリティに満ちているのだ。

★イム・サンス監督による解説
「ホジョンとヨンジャクは韓国では386世代として知られている年代に属している。30代で、大学に入ったのは80年代で、生まれたのは60年代という世代だ。僕自身もまさに386世代で、民主化されたばかりでフェミニズム運動も現れたばかりの韓国社会で成長する恩恵に浴した。僕らは物質的豊かさに恵まれた新しい中上流階級を形成していったんだ。僕らより上の世代には手が届かなかった豊かさだ。だが問題は、民主主義やフェミニズムに対して僕らは通り一遍の知識しか持ち合わせていなくて、それを実生活にどう反映させるのか、そのすべを把握できていないことなんだ。386世代の多くの人間は、幸福で満たされた生活を送るべく努力しているが、自分たちが考える自由というものと、自分たちが担っている新たな役割を調和させることに苦心している」
「家の中といった小さめの空間では、ホームビデオの映像のようにに見えるよう手持ちカメラで長回しの撮影をした。もっと広い屋外の撮影の時は望遠レンズを使って、ドキュメンタリー映画のように揺れる臨場感を出した。その両方をミックスさせたんだ。構図も色彩も明快でバランスの整った典型的ハリウッド・スタイルとはかけ離れたものを狙った。より自然な感じを色彩からなくすためにフィルターも使った。自分の映画をイージー・リスニング音楽みたいな、心地いいだけのものにしたくなかったからだ』

ストーリー


弁護士のジュ・ヨンジャクは遺体発掘に立ち会っている。白骨化した頭蓋骨が出てきて、中年の男が興奮して叫ぶ。「父の遺骨に指一本触れるなよ。50年も捜し続けてきたんだ」。どうやら朝鮮戦争の犠牲者の骨らしい。もみ合いになった男たちに押され、ヨンジャクは発掘した穴の中に落ちてしまう。
ヨンジャクの妻、ホジョンは、ヘルメットやサングラスなどの最新の装備を身に着けて自転車を走らせる。元ダンサーの彼女は今は専業主婦だが、近所のダンス教室で主婦たちに踊りを教えている。7歳の息子スインの子守をしてくれていた姑のビョンハンは、ホジョンの帰宅が遅くなって機嫌が悪く、さっさと帰っていく。スインは母親に聞く。「おばあちゃんは僕が養子だって知ってるの?」。スインは両親に大切にされているが、自分が養子である事実をまだ完全には受けとめられずにいるのだ。
弁護士として忙しい毎日を送っているヨンジャクは、元モデルの愛人ヨンの住まいに足繁く通ってもいて、家に帰るのはいつも遅い。また彼の母親ビョンハンも、小学校時代の同級生である恋人との逢瀬を楽しんでいる。ヨンジャクの父親でビョンハンの夫であるチャングンは入院中で、余命幾ばくもない。ヨンジャクとホジョンの夫婦関係は冷めていて、ホジョンはルーティーン化したセックスのあと「最近感じない」と夫に言う。
夜中、裸のまま逆立ちなどをしているホジョンを、隣家の男の子が双眼鏡越しに覗いている。翌日、自転車で外出した男の子のあとを追いかけて映画館に飛び込むホジョン。こうして彼、17歳のジウンとホジョンの関係が始まった。
一方、ヨンジャクは、妊娠した愛人ヨンの中絶手術に優しく付き添う。これが2人の絆を強め、彼らは島に旅行に行く。その夜、ホジョンはジウンと2人で深夜の登山をする。ジウンは高校を中退してアメリカヘ行くと言う。
いよいよチャングンの容態が悪くなる。だが、ヨンジャクの運転する車は、旅行の帰り道、郵便配達夫のスクーターと追突し、重傷を負わせてしまう。郵便配達夫はかなり酒を飲んでいたためヨンジャクの過失は認められず、帰宅を許される。ヨンジャクは父親の病院に駆けつけるが、父親の吐血でヨンジャクの上半身は血まみれになる。
葬儀を終え、母親ビョンハンは「これからは好きに生きる。恋人と結婚するの。セックスをするのは15年ぶりだった」と、ヨンジャクとホジョンに告げる。
学校が終わり、友達と別れてひとりで歩いているスインにスクーターに乗った郵便配達夫が声をかける。「ジュ弁護士を知ってるか?」。彼はスインをスクーターに乗せ、そのまま廃墟のような建物に連れていき、スインを抱えて階段を昇る。事故の時、車とスクーターが衝突した事実も、車内に女性が同乗していた事実も、ヨンジャクに僅かな金で口止めされたことを、彼は恨んでいるのだった。建物のてっぺんまで来くると、彼は一瞬の躊躇もなくスインを投げ落とす……。
はたしてスインの死が、いままで離れ離れだったヨンジャクとホジョンの心を再びひとつに繋げるだろうか、あるいはさらに引き離すのだろうか?

スタッフ

監督・脚本:イム・サンス
撮影:キム・ウヒョン

キャスト

ムン・ソリ
ファン・ジョンミン
ユン・ヨジョン
キム・インムン

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