原題:THE HIRED HAND

まるで絵画のような−−− 未だかつて観たことのない美しきウエスタン。 アメリカン・ニュー・シネマの幻の名作が、30年の沈黙を破り、 ついにディレクターズカット版として再び姿を現した

2001年/アメリカ映画/カラー/91min/1:1.85/ドルビーSR 提供:キングレコード/配給:クレストインターナショナル

2010年10月06日よりDVDリリース 2002年8月3日よりシネセゾン渋谷にてレイトショー公開 2005年04月06日よりDVDリリース

(C)2001 Universal Studios and The Pando Company,lnc 

公開初日 2002/08/03

配給会社名 0096

公開日メモ まるで絵画のような−−−未だかつて観たことのない美しきウエスタン。アメリカン・ニュー・シネマの幻の名作が、30年の沈黙を破り、ついにディレクターズカット版として再び姿を現した

解説



全世界の興行記録を大幅に塗り替え、アメリカン・ニュー・シネマの代表作となった『イージー・ライダー』で、製作脚本・主演を務めたピーター・フォンダが、その成功により初の監督作を撮るチャンスを得て、1971年に製作されたのが本作『さすらいのカウボーイ』である。突如カリスマ的スターとなったフォンダが、重圧の中、慎重に選んだ初監督作は、徹底的にリアリズムを追求したウエスタンであった。当時では革新的であったオーバーラップ、スローモーションなどの編集技術を駆使し、映像詩とも呼べる作品を作り上げる。
批評家たちの評価は高かった。だが、『イージー・ライダー』の再来を狙ったスタジオの圧力によって不本意な形での公開を余儀なくされ、結果興行的には厳しいものになってしまった。
「作品を本来あるべき姿に戻すチャンスが欲しい」フォンダはもとより、この映画を愛してやまなかった者たちの願いが結実するには、30年の年月が必要だった。そして、いっさいの無駄をそぎ落とす形で完成したこのディレクターズカット版は、2001年ベネチアを皮切りに、トロント、ロンドンの映画祭で上映され大喝采を浴びる。
2002年日本でも初公開から30年ぶりに、この隠れた傑作がデジタルリマスタープリントでスクリーンに甦ることとなった。

自由を求め、妻と娘を捨て旅立った男が、さすらいの果て、永年放浪を共にしてきた親友を伴い家に戻る決意をする。突然の夫の帰還をすんなりと受け入れない妻のもと、使用人-hired hand-として真面目に働くことで、少しずつ夫としての信頼を取り戻してゆく。だが、それは一方で友との別れを意味していた…。
強烈な人物像。味わいのあるセリフ。人間の根源にふれるテーマ。フォンダは、この全てが凝縮された脚本を、たゆたうような時の中で、美しい一篇の詩へと昇華させた。完壁に計算されたリズムの中で、男のストイシズムとロマンティシズムが交錯し、人生をさすらう男たちの悲しくも美しい姿が浮き彫りになっている。
監督と同時に主人公ハリーを演じたピーター・フォンダは、父ヘンリーをはじめとする俳優一家出身として知られている。『イージー・ライダー』の伝説の重みからその後長いスランプに陥るが、1997年『木洩れ日の中で』[V&TV題]の主演で抑制されたすばらしい演技を披露、ゴールデン・グローブ賞最優秀主演男優賞を受賞。28年ぶりにアカデミー賞にもノミネートされ見事な復活を果たした。近年では、テレンス・スタンプと共演した『イギリスから来た男』で強い印象を残している。
親友アーチ役には、フォンダたっての希望でキャスティングされたウォーレン・オーツ。サム・ペキンパー監督作品になくてはならない存在であったオーツだが、本作でも男気ある心優しきさすらい人を演じ、フォンダの期待にしっかりと応えている。
また、ヴェルナ・ブルームがハリーの妻ハンナを、従来のウエスタンでの女性像をくつがえすリアリティのある女として、圧倒的な存在感で演じている。
俳優陣の手堅い演技が光る一方、この美しい映像詩の完成には当然ながら、多くのスタッフの尽力も不可欠だった。
撮影監督ヴィルモス・ジグモンドはハンガリー出身という独自性を生かし、本作にヨーロッパ的な奥行きを与え、乾いた風景にもどこかしっとりとした印象を残す撮影に成功している。当時まだかけ出しであった彼はこの後着実に実績を重ね、『未知との遭遇』でアカデミー撮影賞オスカー受賞の栄誉に浴することとなる。
製作はフォンダと『イージー・ライダー』でコンビを組んだウィリアム・ヘイワード。2人が再び共同製作をするということで注目を浴びた。フォンダを惚れ込ませた脚本を書き上げたアラン・シャープは、後に『ワイルド・アパッチ』『バイオレソト・サタデー』などの名作を手がけている。スコットランド出身でありながらアメリカの真髄を描き出す手腕は見事というほかない。
さらに、映像と完壁に調和した効果的な音楽は、フォーク・ロック・ギターの名手、ブルース・ラングホーンによる作曲。多くのミュージシャンから敬愛され、なかでもボブ・ディランは、彼を名曲「ミスター・タンブリンマン」のモデルにしたほどである。
こうした素晴らしいキャストとスタッフに恵まれた本作は、そのアート性をもって、30年を経た今、ようやく正当に評価される時を迎えることとなったのである。

ストーリー



永年の放浪の末、さすらいの日々に終止符を打つべく、放っておいた妻子のもとへ戻る男。
しかし、平穏な生活に戻るもつかの間、共に放浪の旅を続けてきた友のために、
再び家族のもとを離れる決断を余儀なくされる…

19世紀末のアメリカ西部、裸の大地に流れる美しい川縁で3人の放浪者—ハリー、アーチ、ダン—が希望に満ちた新しい朝を迎え、次はカリフォルニアへ向かおうと話をしている。理想郷カリフォルニアについて思いを馳せる彼らの前に、何か不吉な予兆のように、川上から少女の水死体が流れてくるのをダン(ロバート・プラット)が発見する。抱きかかえようとするダンを「バラバラになってしまうだけだ」とハリー(ピーター・フォンダ)は止め、3人は黙って流されていく水死体を見送るしがなかった。
目的地に向かって出発した3人は、程なくして着いたデルノテというさびれた村で体を休めることにする。酒場で新しい未来に乾杯しようとした時、突然ハリーが「永年放っておいた妻子のもとへ帰る」と言い出す。この村に辿り着き、ふと潮時を感じた彼はひとり家路につくことを決め、西へ向かう仲間と別れることになった。しかし、ダンの持っていた素晴らしい馬に目をつけていた村の悪党サムとその一味は、無邪気なダンを罠にはめ、馬はおろか命さえも奪ってしまう。
仲間を殺されたハリーとアーチ(ウォーレン・オーツ)は復讐するべく、サムの家に忍び込むが、命を奪うことはできず、彼の両足を打ち抜<ことができただけであった。 そして、ハリーはアーチを連れ、家へと向かった。 出て行ったきりの夫が突然現れた時、妻のハンナ(ヴェルナ・ブルーム)には喜びのかけらもなく、そればかりか夫として家に戻る権利はないとっきはなす。ハリーはそんな怒りを当然のことと受け止め、なんの見返りもなしにただの使用人-hired hand-として、働くチャンスを与えてくれと頼んだ。妻は彼に家ではなく、隣にある納屋にアーチと共に寝泊まりするよう指示する。 こうして2人の男はまじめに働きはじめる。父親は死んだと聞かされ、ハリーの正体を知らない幼い娘ジェニL一は、自然に優しく接してくるアーチを父親のように慕っていた。 新しい2人の使用人の話はすぐに村中に広まった。ある日、買い出しに出た2人は、酒場にいた男から、ハンナは寝るために男たちを雇うのだと侮辱され、アーチは怒りを抑えられず男を殴ってしまう。その夜、ハリーがハンナに事実かどうか尋ねると、ハンナは「全部の男と寝たわけではないわ」と冷たく答えた。 翌日ハリーは村に戻り、自分は現在家に戻っていること、そしてもうハンナのもとに使用人は必要ないということを貼り紙で知らせた。 ハリーが家に落ち着いていく様子を見ながら、アーチは複雑な心境を隠せなかった。ある夜、寝つけず外に出たアーチは、1人ポーチで佇むハンナとそんなハリーについて話をする。そしてその時、ハンナはハリーを再び夫として受け入れることを決意し、アーチはハリーの新たな生活にいっかきっと、自分が邪魔な存在になると確信する。この関係にも変化が近づいていた。 アーチは、そろそろ出発の時だと彼らに告げ、ひとりもと来た道へと去って行った。ハリーは夫、そして家主という新しい自分の役目を一生懸命に努め、ハンナとジェニーも彼を暖かく迎え入れた。しかし、そんな幸せは長くは続かなかった。 ある日、サムからの使者がやってくる。ハリーのもとに届けられたものはアーチの指であった。ハリーがサムのもとに現れるまで毎週1本ずつ指を切り落とし、最後は命を奪うと言う。ハリーは取るものも取らず、泣き叫ぶハンナを後に、アーチの救出へと向かう。 再びハリーが去ってしまった家で梢然とするハンナ。そこへ、ひとりの男が2頭の馬を連れ、戻ってくる…。

スタッフ

監督:ピーター・フォンダ
脚本:アラン・シャープ
製作:ウィリアム・ヘイワード
製作総指揮:スタンリー・A・ワイス
撮影監督:ヴィルモス・ジクモンド
音楽:ブルース・ラングホーン
装置:ローレンス・G・ホール
編集:フランク・マソラ
製作監修:ジャック・ポーラー
製作補:マリー・バルテルト、キャシー・スピアー
助監督:ハワード・コシュ
美術:ローレンス・G・ボール
舞台装飾:ロバート・デ・ヴェスタル
衣装:リチード・ブルーノ
メイク:フランク・タリフィン
録音技師:リチャード・ポートマン
音響:ルロイ・ロビンス
特殊効果:ロジャー・ジョージ
衣装監修:ナターシャ・ニコルソン
脚本監修:マーシャル・シュロン

キャスト

ハリー・コリンクス:ピーター・フォンダ
アーチ・ハリス:ウォーレン・オーツ
ハンナ・コリンクス:ヴェルナ・ブルーム
ダン:ロバート・フラッド
シェニー:ミーガン・デンバー
ミセス・ソレンセン:アン・テュラン
サム:スヴァーン・ダーテン
ルーク:テッド・マークランド
メイス:オーウェン・オール
ウイル:グレイ・ジョンソン
バーテンダー:アル・ホフソン
メキシコ人女性:リタ・ロシャーヌ

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