蕨野行
原題:WARABINOKOU
2003年/日本/124分/カラー/ヴィスタサイズ/ドルビーSR 製作:NPO〈日本の原風景を映像で考える会〉 タイムズイン 配給:東映株式会社
2007年02月24日よりDVDリリース 2003年10月4日より新宿東映パラス2にてロードショー 2003年2月1日(土)からソラリス、ワーナー・マイカル・シネマズ米沢、イオンシネマ三川にて山形先行ロードショー
ビデオ題名が変わって再発された場合の題名 わらびのこう
公開初日 2003/02/01
配給会社名 0004
解説
足かけ8年、映画『蕨野行』がついに完成した。思えば長い道程だった。恩地監督より映画化の話があったのは、バブルがはじけて日本経済が下降線に入った頃だ。制作費等資金集めが難航する内に、劇団民藝が芝居化、NHKでもラジオドラマとなり、海外へも放送された。その間も粘り強く映画化のための歩みを押し進められた監督はじめ、出演者、支援者の皆さまの情熱に、心から御礼申し上げます。想いは形を結ぶ。『蕨野行』は本当に幸せな作品だ。この映画が今の殺伐とした時代に一つの灯をともしてくれればと願う。
村田喜代子(原作)
ストーリー
このところ、姑のレン(市原悦子)がどうも様子がおかしい。嫁のヌイ(清水美那)にはそれが気がかりだった。
おババよい。何か思うことが有りつるか?
ヌイよい。おれは関所のまえに立ちてありつる。
レンの答えは思いもよらぬものだった。その村には秘したる約定があった。六十の齢を迎えた者は家を出て、人里離れた原野(蕨野)に移り住むというのだ。そこには食料がなく、作物を植えることも許されず、ジジババたちは里へ下って村々の仕事を手伝うことでのみ、その日の糧を得る。一日怠れば一日飢えるのである。それでは乞食と同じではないかと哀れむヌイに、レンは言う。数年に一度くる凶作はどのようにしても免れず、となれば若い者たちの糧を確保するため、身体の弱い年寄りは早々に逝かしめようという昔からの知恵なのだと。
だがレンにはひとつだけ、心のこりがあった。嫁いで間もないヌイに、庄屋の嫁としての務めの数々を十分授けることができなかったことだ。ヌイよい。おめのことを思うによりて、ババは後ろ髪を引かれたり。秋の終わりまで生きのびた者は里へ帰ることを許される……と、レンはヌイに告げた。
蕨野。そこはこの世とあの世の中継地である。この年、蕨野入りしたジジババは八人。レンのほかには、馬吉(石橋蓮司)、甚五郎(瀬川哲也)、留三(左右田一平)、トセ(中原ひとみ)、マツ(李麗仙)、チヤ(原知佐子)、トメ(樋田慶子)、いずれも一癖二癖ありそうな面々である。原野に捨てられた彼らはどのように生きていくのだろう。その生きざまを、その死にざまを、四季の移ろいのなかで綴っていく。
レンとヌイは、心のなかで語り合う。おババよい。男というものは、おれにはまだ少々恐ろしき心地せる。夫よりもなお姑のおめのほうが慕わしかるよい。ヌイよい。やがてババより慕わしというときが参るなり。男こそよきものと思うよになりつらん。
その夏、レンの予見どおり、雨のつづく冷たい夏となった。秋は必定、凶作は詮なし。レンは心のなかでヌイに告げる。ヌイよい。まことは、蕨野に帰りの道はなきなりよ。
スタッフ
監督:恩地日出夫
原作:村田喜代子「蕨野行」(文春文庫刊)
脚本:渡辺寿
製作:金蔵法義
伊藤満
音楽:猿谷紀郎
撮影:上田正治
照明:山川英明
録音:矢野正人
編集:小川信夫
美術:斎藤岩男
キャスト
レン:市原悦子
ヌイ:清水美那
馬吉:石橋蓮司
甚五郎;瀬川哲也
留三:左右田一平
トセ:中原ひとみ
マツ:李麗仙
トメ:樋田慶子
チヤ:原知佐子
シカ:左時枝
団右衛門:吉見一豊
伊作:出光秀一郎
テラ:中村真知子
セキ:南谷朝子
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