姉妹の歪で儚い絆を描く花村文学の幻想世界

第9回あおもり映画祭出品::http://www.7-dj.com/jp/cinema/special/spe041/spe041.html

1997年/日本/カラー/87分/スタンダード 配給:東北新社

2002年3月9日より銀座シネパトスにてレイトショー公開

(C)1998花村萬月/東北新社

公開初日 2002/03/09

公開終了日 2002/03/15

配給会社名 0051

公開日メモ 「ゴッド・ブレイス物語」(89)で第2回小説すばる新小賞を受賞し作家デビューを果たし、「皆月」(98)で第19回吉川英治文学新人賞受賞、同年「ゲルマニウムの夜」で第119回芥川賞受賞など数々の文学賞を受賞している花村萬月が描く姉妹の屈折した愛の物情『紅色の夢』。

解説



「ゴッド・ブレイス物語」(89)で第2回小説すばる新小賞を受賞し作家デビューを果たし、「皆月」(98)で第19回吉川英治文学新人賞受賞、同年「ゲルマニウムの夜」で第119回芥川賞受賞など数々の文学賞を受賞している花村萬月が描く姉妹の屈折した愛の物情『紅色の夢』。今となっては「暴力とインモラル」のイメージが強い作品を生み出し、多数映画化されているが、初期の93年に書かれた本作品は愛とエロスで満ちている。憧れ・嫉妬を高尚かつ妖艶に描き、血のつながり・男女の性をも越えた究極の愛を初々し<も美しい2人の女優が熱演している。 「おねえさんは、わたしより背が4センチ高くて、とても縛麗なからだをしている。」 「姉には、このケロイドがとても似合っていると思う」 姉・貴子の腹部のケロイド状になった紅色の傷は妹・愛子にとって・なにものにも変え難いもの。 愛し<、到底それにはかなわないと知りながらも愛子はキャンバスに紅を塗る。 い<ら描いても、表現し得ない紅。そこにはなにかがあり、愛子は嫉妬する。 触れれば、指先で、そして身体で姉の物として何かを感じ、触れずにはいられない。 憧れであり、嫉妬であると同時にそれを身体に刻んでいる姉の存在は愛子にとって 姉妹の愛情を越え、男女の性を越えた存在になっているのであった。 そんな愛子を姉・貴子も愛しく想い、それゆえに束縛し、奔放に振る舞い、愛子を振り回しつづける。 『男たちのかいた絵』(96)のヒロイン役で衝撃的なデビゅーを飾り、最近では、町田康原作の『人聞の屑』(01)でストーカーと化す飛んだ役をこなす若手実力派女優の道を着実に歩んでいる夏生ゆうなが姉の持つ傷に執着し、キャンバスに紅色を描き続ける妹・愛子役を、奔放でわがままな姉・貴子を冴木かおりがそれぞれ演じている。 2人の脇を固めるのは、愛子の恋人役・天馬に『人間の屑』(01)でも夏生と共演している村上淳。貴子の女医役には、アナウンサー時代に出演し『みんなのいえ』(01)では、フリーとなり本格的に演技に挑戦した八木亜希子。『ツィゴイネルワイゼン』などでは役者としても非凡なところをみせている藤田敏八が遺作となる本作では愛子の通う美大の才能の枯れた教授を演じている。 監督はドラマの脚本などを手がけ、これがデビュー作となる中田昌宏

ストーリー


美大生・愛子(夏生ゆうな)が描く紅色のキャンバスには激しい命やうねりなどが表現されていた。同級生であり恋人の天馬(村上淳)や教授の山城(藤田敏八)は紅色のキャンバスに対して、愛子の何がそこまで紅色に執着させるのかがわからずにいた。

それは幼い頃の姉・貴子(冴木かおり)の腹部にある一筋の傷が始まりだった。
7歳の頃の愛子は父親に連れられ、盲腸の手術をした貴子(10歳)のお見舞いに来た時、医者と結す父親の横で、愛子は貴子の手招きに吸い寄せられるように貴子のもとへ…
ヤブ医者だった為か貴子の下腹部にはガラスで引っ掻いたような傷跡が残っている。
愛子の手を掴み自分の傷口を触らせようとする貴子。医者と父親が病室に戻ってきた時には貴子の傷口からは移しい量の血が流れ出て…

父親の死後、姉妹2人っきりになってから常に姉の傷を触り、癒され育ってきた愛子は、いつのまにか貴子に対してあこがれや嫉妬を抱いていた。貴子も愛子に対して激しい愛情を抱き、束縛し続けていく。いつしか姉妹の間には歪んだ愛が芽ばえていたのだ…

貴子が強引に作品をコンクールに応募したことによって、愛子は芸術協会新人賞を受賞し、衝撃的なヂデビューを飾った画家として注目されるようになる。
貴子の後ろ盾には貴子の恋人でギャラリーのオーナー細川(山崎一)がいた。一躍新進気鋭の画家として成功した愛子。陰からステージシスターとして支える貴子。
出口の見えない2人の究極愛の行方を捜し求め順調に進んで行<中、貴子は突然夜の道端で原因不明の重い病に倒れてしまう。 医師(八木亜希子)から告げられた病名は先天的無痛覚症。痛みがないゆえに病魔に気付かずに処置が遅れてしまうというもの。すでに手遅れの状態になっていた貴子の病。 姉妹2人の究極の愛、その2人の先には何が待ちうけているのか…。

スタッフ

製作:植村徹
企画:小坂憲一、田辺隆史
原作:花村萬月(「紅色の夢」徳間書店刊)
プロデューサー:竹本克明、公野勉、新井英夫
音楽:神尾憲一
撮影:伊藤嘉宏
照明:上島忠宣
美術:山本正
SFXプロデューサー:岡野正広
監督・脚本:中田昌宏

キャスト

愛子:夏生ゆうな
貴子:冴木かおり
天馬:村上淳
細川:山崎一
女医:八木亜希子
信子:佐々木ユメカ
山城:藤田敏八
子役:高橋修美
子役:奥田綾乃
団優太
教授助手:入江雅人

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