スリープウォーカー

目覚めると家族が消えた！頭に小型カメラを付けて眠った男は、自分と思しき夢遊病者が人々を惨殺する光景を見た…。数々のミュージック・ビデオを手掛けてきたヨーロッパの新星ヨハネス・リューネボルグが長編デビューを見事に飾った、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』に続く新世代サイコホラー最新作！！夢遊病という題材、ビデオカメラ映像の多用、サイコ・ホラーの枠を超えた衝撃の結末、新進脚本化ヨハン・ブランストレームの逸脱したアイデアで練られた斬新なホラーの世界！すでにハリウッドでのリメイク化も決定、ヨーロッパに衝撃を与えた１作が遂に日本に上陸する。

【チェック・ポイント！】

　夢遊病をテーマにしたサイコ・ミステリー作品。妻子と共に平凡ながら幸福な日々を送る中年男ウーリックは、ある朝目覚めるとベッドの中の自分が自分以外の何者かの鮮血に染まっており、最愛の妻子の姿が消えていた。家の中を調べた彼は、彼の自家用車が夜の間に何者かにより運転された形跡があること、そして押入れの中に入れてあった彼の長靴が、ついさっき泥地を歩き回ったかのように、泥まみれになっているのに気付いた。ウーリックはかって、ストレスから夢遊病を患った経験があった。犯人は自分なのか？真相を確かめるべく、彼はその晩眠りに着く前に小型ＤＶを自分の首に装着して睡眠につくが、翌朝ビデオに映っていた主観撮影によればはやはり彼が夜徘徊していたらしいのだが…。
『ブレアウィッチ２』や『世にも奇妙な物語 映画の特別篇 雪山』などと同様、自分たちの知らない怪異や行動の映像を捉えていたという設定だが、怪奇現象の恐怖よりも、自身のアイデンティティの揺らぎと不安に重きを置いた作品になっている。
　監督のヨハネス・リューネボルグ、脚本のヨハン・ブランストレーム共に本作がデビュー作という新鋭によるスェーデン映画。既にハリウッドでのリメイクが決定しているという当たりは、スペインのアレハンドロ・アメナバール監督の『オープン・ユア・アイズ』、デンマークのオーレ・ボールネダル監督の『モルグ』など、ヨーロッパ発ハリウッドリメイク路線に繋がるファンタスティック映画路線の最新作といったところか。実際、題材自体は夢遊病テーマがメインだが、主人公のウーリックが自分自信の行動、現実感、アイデンティティを不確かなものになり、悪夢のような状況に責め苛まれるという展開とムードは、意外なラストと共に前述の『オープン・ユア・アイズ』や同じくスペインのアルヴァロ・フェルナンデ・アルメロ監督の『惨劇の週末』などと共通するテイストが感じられ、悪くない。ただネタばれに繋がるので詳しくはかけないが、２本のスペイン映画に比べると、物語を進める上での視点というか語り方に不徹底な所があり、ラストのオチはちょっとフェアとは言えない。このあたりは、次回作以降で気をつけてもらいたいところ。深夜、停車中の列車を包む幻想的な緑色の照明や、太陽光の輝きなどの細かい描写がキチット最後に効いて来るだけに、惜しい。
　『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』などのラルフ・カールソンが、主人公のウーリックをいかにも人がよさそうで平凡な感じに好演し、不安感を身近に感じさせてくれる。また、事件を捜査する刑事役で『13日は金曜日PART25／ジャクソン倫敦へ』等、80年代後半から90年代前半に数本のファンタ系監督作品がリリースされたアンダース・パームが出演。そういえば、彼の監督作品のうち『ブルーシェイド／殺意の幻影』は、殺人予告にビデオカメラを使う作品だった。ちょっと面白い偶然かも。
（殿井君人）