人生を上り続けて辿り着いたのは“離れられない場所”だった。

2000年/日本/70分/ 配給:岩波映像株式会社

2001年4月28日よりシネマ下北沢にて公開

公開初日 2001/04/28

公開終了日 2001/05/11

配給会社名 0193

公開日メモ 「坂の上のマリア」は、若い世代が新しい視点と手法で描くナチュラルな社会はドラマである

解説

“古い木を新しい土地に移してはいけない、死んでしまうから”確かロシアのことわざでそんなフレーズがあった気がする。
高齢者にとっては、他の誰もが想像できないほど長年暮らした土地への思い入れは深い。
だが、現実問題として急な坂が多い不便な土地での独居は困難である。
そのような状況で周囲は高齢者の意志を尊重できるのか?
また、地域はどうサポートできるのか?
瀬木監督は、高齢者の生きざまと想い、そして、地域コミュニティのあり方を、北九州市八幡「やまさかのまち」を舞台にフィクションとして映画化した。
スタッフは、主人公の老女「マリア」の心の変遷をリアルに描くために、撮影の何日も前から現地に住み込み地元と交流した。
その結果、地元「八幡」の住民のみなさんも数多く出演してくださることになった。
坂の上の人々は、坂を日常的なものとして受け入れ、ごく当たり前に暮らしてる。
そんな情景をフィルムに定着させていく作業は、いたずらにテーマ性に縛られることのないフィクションでありながら、ノンフィクション的なリアルさと迫力を持った、日常生活の中のドラマを紡ぎだしていくことだった。
「坂の上のマリア」は、若い世代が新しい視点と手法で描くナチュラルな社会はドラマである。

ストーリー

皿倉山の中腹にあるその家は、車道から数百メートルもの狭い路地と階段を昇ったところにある。そこで暮らす老女・マリア(74)は、無愛想で頑固者、憎まれ口をたたいて周囲を困らせるが、その言動にはどこか人間味がにじみ出ている。
ある日マリアは、遊びに来ていた孫のために買ったスイカを、階段で落としてしまう。
咄嗟に階段を駆け下りるが、転倒し怪我を負い、この長い坂が恨めしく、自分の衰えていく肉体の現実もあいまって、情けなくすすり泣く。マリアは、この事故をきっかけに、息子の勧めもあって、平坦な新興住宅地に引っ越して同居することを決意する。
しかし、引越す決意をしてから、マリアの眼には、この地域の何気ない風景が新鮮に映り始める。階段を走る子供たち。バンコでの井戸端会議。郵便配達の呼びかけ。近所の住人の思いやり。犬の声。風に揺れるひまわり・・・。引越しが近づくにつれて、マリアはこの地域に暮らすことの意味をかみしめていく。

そして、引越しの朝。マリアはある決断をする・・・。

スタッフ

製作:「坂の上のマリア」製作上映委員会
有限会社ソウルボートプロダクション
岩波映像株式会社
監督:瀬木直貴
プロデューサー:黒田章博
撮影:磯貝均

キャスト

入江杏子
中西和久
中村有志

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