連弾
ひとりでは奏でられないメロディーがある。
2000年/日本/カラー/1時間44分/ヴィスタサイズ 配給:松竹
2001年8月25日DVD発売/2001年8月25日ビデオ発売&レンタル開始 2001年5月12日よりワーナー・マイカル・シネマズ板橋にて公開 2001年4月14日より京都・みなみ会館にてロードショー 2001年3月31日より渋谷シネパレス、札幌劇場、シネリーブル梅田他にて全国ロードショー
(C)2000 松竹/TBS/衛星劇場/IMAGICA/セディックインターナショナル
公開初日 2001/03/31
公開終了日 2001/04/27
配給会社名 0003
公開日メモ ひとりでは奏でられないメロディがある… 竹中直人、待望の第4回監督・主演作品
解説
《ひとりでは奏でられないメロディがある…竹中直人、待望の第4回監督・主演作品》
俳優、映画監督、コメディアン、さらにはイラスト&エッセイ、音楽と、縦横無尽の活躍を続けている竹中直人。『連弾』は、そんな彼にとって4本目の監督・主演作品にあたる。これまで『無能の人』『119』『東京日和』と、家族や仲間同士の絆を描き続けてきた彼だが、今回もやはり家族の絆をテーマとしながらも、前3作とはまた少し違ったところに焦点を当てているのが興味深い。
それは、妻の不倫をきっかけに、ひとつの家族が崩壊してしまうという、現代ならではの設定だ。
しかし、たとえ家族がバラバラに暮らすことになろうとも、心はいつまでも一緒であることを、この作品は示してくれるのである。そのキーとなるのが、ブラームスの『ハンガリー舞曲』。離婚騒動のさなか、妻と娘はこのピアノ曲を、発表会に向けて弾き続けていく。『連弾』それは、決してひとりでは弾けないメロディでもある。そして、いつしか家族のひとりひとりが、ピアノ曲の連弾を通して、家族の絆について考え直してゆくのだ。
《「今回は”ドラマ”を描きたい」竹中直人の新たな挑戦》
また今回は、竹中監督が初めて演出の依頼を受けて事にあたった作品ということも、特筆すべき点であろう。これまでの3作品は全て自ら企画を立ち上げ、準備周到に推し進めながら実現させてきた竹中監督だが、今回は第25回城戸賞を受賞した経塚丸雄のオリジナル・シナリオがまず先にあり、これを映画化しないかというオファーを受けたことから、全てが始まっている。シナリオを一読した竹中監督は、その中に自分がこれまで手掛けてきた作品群と共通するテイストが盛り込まれていることを感じ取り、さらにはかっちりと構成されているストーリー展開を通して「今回は”ドラマ”を描いてみたい」という意欲に駆られて、演出を快諾した。そう、これまでの竹中作品は、日常のスケッチを丹念に織り込みながら、そこはかとない人間の優しさや哀しさを醸し出すことを特色ともしていたが、今回はもっと突っ込んだ劇的設定の中から、己の特色を出すという新たな挑戦を試みており、結果として素晴らしい成果を収めているのである。
《「キャスティングは映画の命」魅力的なキャスト陣、ここに集結》
毎回、練りに練った巧みなキャスティングで、俳優たちの個性を引き出してくれる竹中作品だが、今回も実に、もはやこれ以上は考えられないとでもいったメンバーが集結している。まずヒロインの美奈子には、宝塚出身のトップ・スターであり、多くのファンの心をつかみ続けている天海祐希。
今回は初の母親役だが、その大らかでチャキチャキとした個性をフルに活かしつつ、時にコミカルな言動を示しながらも、母ならではの繊細な想いを見事に演じきってくれており、まさに彼女の新境地といってもいい素晴らしい存在感を与えてくれる。その子供たちは、オーディションで選出。
姉の真理を演じる冨貴塚桂香は、両親の離婚という悲劇を、大きく澄んだ眼で見つめ続けながら、思春期特有の揺れ動きを体現。弟・徹役の簑輪裕太は、不倫に走った母を嫌悪しながらも寂しさを隠しきれないという子供ならではの慕情が、その背中から醸し出されている。また、もうひとり、真理の通うピアノ教室の生徒・ヒロシを演じる溝口遊人の、可愛らしいコメディ・リリーフぶりにもぜひ注目していただきたい。
家族を取り巻く周囲の大人たちも、真理が憧れるピアノ教室の先生・谷村に”ミッチー”ことカリスマ的人気を誇る音楽界の貴公子・及川光博。その恋人の律子には『楽園』の主演やTV『私の青空』典子役で注目の松尾れい子。教室の事務員には『バウンスko GALS』など、同世代女性たちの好感度大の佐藤康恵。美奈子の不倫相手大沢には『日本黒社会』『皆月』などの優れた演技で、99年度の新人賞各賞を総なめした北村一輝。そして大沢の妻には、『東京日和』に続いて竹中作品に出演となる鈴木砂羽が、それぞれ扮している。「キャスティングは映画の命」とする竹中作品ならではの布陣である。また、映画監督の塚本晋也と松岡錠司、劇作家の岩松了といった、竹中直人と縁も深く、実は竹中作品の常連でもある彼らの、その場をさらう好演も見逃せないところだ。
ストーリー
亡き父から譲り受けた8軒の借家を持つ佐々木正太郎は、専業主夫として家事全般をこなし、妻の美奈子はゼネコンの設計課長として勤務している。そんな佐々木家の逆転夫婦が、いつになく深刻そうな表情で会話をしている。その内容は、美奈子の不倫だ。正太郎と息子の徹が町のラーメン屋で食事している最中、美奈子の不倫相手である大沢の奥さんが現れて、興奮のあまり入手していた不倫の証拠写真を商店街中にばらまき、大騒動になったことから、全てが発覚してしまったのだ。
いつもケンカの絶えない佐々木夫婦ではあったが、今度ばかりは収まりがっきそうにない。ついに両者は殴り合いのケンカに発展し、そのまま翌朝の朝食の席にまで持ち越されてしまう。両親の醜い争いに、ただただ呆れる娘の真理と弟の徹であった……。
家族崩壊の危機にさらされてしまった子供たち。徹は、実際に母の不倫写真を見てしまったがために、母への不信感に満ち満ちている。しかし真理の方は、来るピアノの発表会で、母と一緒に『ハンガリー舞曲』を連弾で弾くことで、実は頭がいっぱいだった。美奈子は子供たちを引き取って、3人で新しい暮らしを始めようと思っていたが、自分を拒絶する徹の態度に接して全てを悟り、大沢との関係を復活させ、正太郎と離婚する決意を固める。もう一度やり直そうと懇願する正太郎だったが、美奈子はそれを突き放すようにして、家を出ていった。ただし、真理とのピアノの連弾だけはやらせてほしいと言い残して……。
その後、正太郎は子供たちを遊園地へ連れていくなど、何かと世話を焼くようになるが、妙に気を遣いっぱなしの父親に、真理も徹も正直欝陶しさを感じるだけである。あまりにも情けない父親の態度にうんざりの真理は、何かと反抗的な態度を取るようになっていた。しかし、そんな彼女もピアノ教室の谷村先生の前では、素直で可愛らしい少女に戻れるのだ。ところが、真理がある日教室に行ってみると、谷村と恋人の律子が激しいキス・シーンを繰り広げていた。ショックのあまりその場を逃げ出した真理は、階段から足を踏み外してケガをしてしまい、美奈子のマンションで手当してもらうことに。そこで母は、父をなじる娘をなだめる。「誉めるくらいなら不倫しなきゃ良かったのに」と、わざと明るく返す真理だったが…。
真理は美奈子と密かに会ったことを誰にも話さなかったのだが、徹はそれに気づいていた。帰宅したときの真理の服から、母の匂いがしたのだ。翌朝になって、そのことを真理に問いつめる徹。
母と仲直りするよう、真理は逆に忠告するが、徹は「絶対に母さんのことは許さないし、会わない!」と、頑として聞き入れようとはしない…。
やがて、真理と美奈子のピアノ連弾発表会の日がやってきた。会場に現れた正太郎と徹。しかし徹は客席内に入ろうとせず、ひとりこっそりと控室に忍び込み、母が置き忘れたビスチェを持ち去り、その匂いを嗅ぐのであった。正太郎が徹にささやく「どこまで行っても、徹の母さんはただひとりだ……」泣きながらうなずく徹。舞台袖では、まもなく始まる演奏に緊張する真理に、美奈子がささやいた。「真理、死ぬときは一緒だよ」笑って応える真理。そして、拍手の鳴り響く舞台に向かって、母と娘は歩きだすのだった……。
スタッフ
監督:竹中直人
製作:宮島秀司、原田俊明、大塚康高、石川富康、高野 力
企画:森江 宏、中沢敏明
プロデューサー:間瀬泰宏、濱名一哉、関根 康
脚本:経塚丸雄
撮影:佐々木原保志(J.S.C.)
照明:安河内央之
録音:北村峰晴
美術:斉藤岩男
編集:奥原好幸
記録:甲斐哲子
衣裳デザイン:伊藤佐智子
助監督:阿知波 孝
製作担当:芳川 透
ラインプロデューサー:霜村 裕、吉田浩二
装飾:松本良二、西渕浩祐、庄島 穀
持ち道具:小野善子
フラワーコーディネーター:横田恵美
編集助手:斉藤美津子
ネガ編集:青野直子
衣裳:千代田圭介
スタイリスト:衣笠夕子
ヘアメイク:竹下フミ
スチール:鎌田秀子、三浦憲治
リーレコ:神保小四郎
効果:渡部健一
効果助手:小島 彩
選曲:浅梨なおこ
スタジオエンジニア:越智美香、下野留之
タイミング:大見正晴
オプチカル:金子鉄男
車輌:仲久、中村亮太、井上真吾、田中雄一
タイトルデザイン:日比野光希子
宣伝プロデューサー:市川 篤
宣伝協力:ザナドウー
製作協力:エクセレントフィルム
製作:松竹株式会社、株式会社東京放送、株式会社博報堂、株式会社衛星劇場
株式会社IMAGICA、株式会社セディックインターナショナル
キャスト
竹中直人
天海祐希
冨貴塚桂香
簑輪裕太
鈴木砂羽
片桐はいり
佐藤康恵
松尾れい子
曽根英樹
溝口遊人
半海一晃
岩田 丸
羽田 真
清田正浩
宮田早苗
佐藤 誓
矢沢幸治
津田寛治
田中要次
ジーコ内山
市川達也
出光秀一郎
渋谷拓生
井上都紀
奥野 晋
石川真希
宮城 聰
有賀美穂
岩松 了
塚本晋也
松岡錠司
北村一輝
及川光博
LINK
□公式サイト□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す