原題:天上人間 Love will tear us apart

何かを手に入れるために、誰もが足早に通り過ぎる街、香港。 そんな街で誰かに愛されたいと心から願っているのに、 本当の自分をさらけ出す勇気をもたない、 4人の男女が出逢い奏でる、不器用ながらも美しい四重奏。 ユー・リクウァイ(余力爲)監督長編デビュー作品

1999年 カンヌ国際映画祭 コンペティション部門正式出品 香港国際映画祭 国際批評家連盟賞 ミュンヘン国際映画祭 正式出品 ヴァンクーバー国際映画祭 コンペティション部門正式出品 プサン国際映画祭 コンペティション部門正式出品 2000年 ロッテルダム国際映画祭 正式出品 TOKYO FILMeX 2000 コンペティション部門正式出品

1999年/香港映画/109min/カラー/ステレオ/ヴィスタ(1:1.85)/35ミリ 提供:日本コロムビア、ビターズ・エンド 配給:ビターズ・エンド

2005年03月02日よりDVDリリース 2002年2月21日DVD発売/2002年2月21日ビデオ発売&レンタル開始 2001年5月16日よりシネ・アミューズにてロードショー!

公開初日 2001/05/26

公開終了日 2001/06/29

配給会社名 0071

公開日メモ 何かを手に入れるために、誰もが足早に通り過ぎる街、香港。そんな街で誰かに愛されたいと心から願っているのに、本当の自分をさらけ出す勇気をもたない、 4人の男女が出逢い奏でる、不器用ながらも美しい四重奏。

解説


ウォン・カーウァイ、フルーツ・チャンに続き、
香港インディペンデント界から登場した新鋭ユー・リクウァイ監督。

街の持つ活気に引き寄せられるように、何かを求めて人々が集まり、成功した者から旅立ってゆく通過点としての街、香港。『天上の恋歌』の“4人の男女がそれぞれに出逢うのだが、決して一同に会することはない”という物語の展開は、そんな香港で暮らす男女にこそ相応しい。誰も頼る人のいない街で、自分を守術を身につけた人々は、自分のことを必要以上に語らないからだ。だから、お互いにお共通する話題や友人がいたとしても、彼らはすれ違いつづけてしまう。
それでも、彼らは希望を捨てない。いつか誰かに出逢うために、すれ違い続けているのだから。
そんな人々のしたたかなまでのたくましさと、その裏に潜むはかなさや孤独を繊細に紡ぎ出し、ユー・リクウァイ(余力爲)監督『天上の恋歌』は完成した。
前作のドキュメンタリー『ネオンの女神たち』でカメラを向けた、中国人の若い女性たちが語った、自らの人生や将来の夢。都市から都市へ移動しつづける生活、処刑された恋人の話など、あまりにもドラマチックで衝撃的な真実。そして、それらを独りで引き受ける覚悟を持った、彼女たちの凛とした美しい佇まい。そうしたユー・リクウァイ監督の心に刻まれた体験が下敷きとなって、4人の登場人物がコントラスト豊かに描き出されることとなった。演出面でも、状況や心情を説明するようなセリフを極力省き、しぐさや表情を丁寧に捉えるドキュメンタリー的ともいえる手法で、登場人物の内側に秘められた想いまでもすくい上げている。

香港を代表する俳優レオン・カーファイ、監督スタンリー・クワンとの
『天上の恋歌』の幸福な出逢い。

劇映画長編デビュー作となる本作『天上の恋歌』で、カンヌ映画祭コンペティション部門出品という快挙を成し遂げた、ユー・リクウァイ監督。
ベルギーで映画撮影を学び、戻った香港で撮影助手の仕事に就くが、勢いを失いつつあった業界を飛び出し、インディペンデント映画の監督として活動を開始、という経歴の持ち主である。一方、カメラマンとしての評価も高く、ウォン・カーファイ監督の『花様年華』、アン・ホイ監督の『千言萬語』、ジャ・ジャンクー監督『一瞬の夢』『プラットホーム』などに参加。次回監督作品として、台湾、韓国資本の作品が控えるなど、アジア各国から注目を集める、香港インディペンデント映画界を代表する映画人である。
『天上の恋歌』が完成し、ここまで幸運を手にしたのも、プロデューサー、スタンリー・クワンの作品の内容には口を出さず、監督の要求には応える、という派手さはないが堅実なプロデューサーとしての仕事と、『ルージュ』『ロアン・リンユイ/阮玲玉』などの監督としての信頼が大きく影響したと言える。また、ノーギャラでの出演を引き受けたレオン・カーファイは、途中で製作資金が尽きると知り、追加出資までも引き受け、『天上の恋歌』の感性を様々な面から支えた。

自由で繊細な演出がうみだした、ベテランと新人の絶妙なコンビネーション。

アダルトビデオ店を経営する冴えない男ジエン役は、ジャン=ジャック・アノー監督『愛人/ラ・マン』で主演し世界的なスターとなった、香港を代表する俳優のレオン・カーファイ。冴えない男をどこかしら可愛らしさを感じさせる存在に仕立て上げる演技力はさすがである。そして、そのジエンと暮らしながらも、二人の関係に不安を感じているヤンを演じているのは、『青い凧』などの中国映画で知られるリュ・リーピン。難しい役柄を、心の闇と優しさを同時に感じさせる芝居で演じている。
そして、この『天上の恋歌』でスクリーンデビューを果たすのは、中国本土から香港に出てきた女、エンを演じるワン・ニン。96年頃からTVドラマなどで活躍して注目を集めてはいたが、劇映画デビュー作でいきなりカンヌ国際映画祭に招待された期待の新星。長い手足とコケティッシュな表情が可愛く印象的。日本でもブレイクする可能性を感じさせる女優である。もう一人の新人は、エレベーター整備士役のロルフ・チャウ。香港のバーでユー・リクウァイ監督と意気投合、役者としてだけではなく、インディペンデント映画には欠かせない雑用係として製作に関わるなど、大活躍している。

ストーリー


アダルトビデオ店を経営している冴えないヒモ男、ジエン(梁家輝/レオン・カーファイ)。
年上の女インに養われてどうにか暮らしているのに、女にだらしない。
コンビニで出会った娼婦、エンの清純さに一目惚れしてしまう。

中国本土から香港に出てきた、あどけなさの残る女、エン(王寧/ワン・ニン)。
辛かった過去にとらわれながら、短い滞在期間中に見つけた仕事は娼婦。
中国にいた恋人は、彼女と暮らす金欲しさから強盗をして銃殺されてしまった。

ジエンのパトロン中年女、ヤン(呂麗萍/リュ・リーピン)。
ダンサーだったが、事故で足首から先を失ってからは、レストランの受付嬢をしている。
どうして事故に遭ったのか、その理由はいつも嘘ばかり。

エレベーター整備士のリー(周智生/ロルフ・チャウ)。
ジエンの店でボッタクられそうになったことを根に持っている青年。
上手くいかない、つまらない毎日をどうやってやり過ごすかが
彼の日常における最大の問題。

エレベーターの故障、50年代の人気女優の絵はがき、ラジオのお見合い番組、
テレサ・テンの唄、深夜のテレビ番組、2000回を越す長寿ドラマ、
エッグタルトの話題。

香港ではいつも何かが彼らをつないでいるのに、
生きていくことに精一杯で、そんな事に気づく余裕すらない。
何かを捨ててやってきた香港で、
彼らはまだ何も手に入れられてはいない。
愛してくれる誰かを心から求めているのに、
本当の気持ちを素直に話すことすらできない。

そんな不器用な4人の出逢いとすれ違いが奏でる四重奏は、
本当の別れがやって来るまで、美しく響き続ける。

スタッフ

プロデューサー:スタンリー・クワン、レオン・カーファイ
エグゼクティブ・プロデューサー:イー・イウレオン、フレディ・ウォン
アソシエート・プロデューサー:ジェームズ・ツィム、チャウ・キョン、リー・キットミン
監督・脚本:余力爲/ユー・リクウァイ
撮影:ライ・イウファイ
美術:エルブット・ブーン
照明:ウォン・チーミン
編集:チャウ・キョン
録音:ゲイリー・ウォン

キャスト

ジエン:梁家輝/レオン・カーファイ
エン・イン:王寧/ワン・ニン
ヤン:呂麗萍/リュ・リーピン
リー・チュン:周智生/ロルフ・チャウ

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