原題:LE TEMPS RETROUVE

新世紀に誇る20世紀文学の原点、その秘密が今、解き明かされる 人は最後にどうしてもそれを振り返らなければならない。

1999年カンヌ国際映画祭正式出品作品

1999年3月19日フランス公開

1998年/フランス/・ポルトガル・イタリア合作/カラー/ヴィスタ/上映時間2時間43分/ ドルビーSRD-DTS/日本語字幕:古田由紀子/字幕監修:鈴木道彦/ 特別協力:カルティエ/配給:日本ヘラルド映画

2002年1月25日DVD発売/2001年12月21日ビデオレンタル開始 2001年3月3日よりシャンテシネにて豪華ロードショー

公開初日 2001/03/03

公開終了日 2001/05/11

配給会社名 0058

公開日メモ 新世紀に誇る20世紀文学の原点、その秘密が今、解き明かされる

解説


今、なぜブルーストなのか?
マルセル・ブルーストの「失われた時を求めて」は、それまでの小説の形を一新した作品で、当時の文学界に大いなる衝撃を与えた。この作品の出現により以後の文学は変わったと言われただけでなく、第2次大戦以後もその評価はますます高まり、21世紀を迎える現在では揺るぎないものとなっている。まさに20世紀文学の原点にして頂点と言える小説「失われた時を求めて」は、主人公の無意志的記憶が引き金になって、物語が過去と現在を自由に行き来するという実験的な構成により、難解な小説だと思われてきた。しかし、世界中の著名な作家たちが口々に多大な影響を受けたと語り、必読の書であるとするこの名作の本質を、耽美かつ豪華な映像で目の当たりにできる機会が今、ついに訪れた。それが「見出された時〜『失われた時を求めて』より〜」である。本作は1999年カンヌ国際映画祭に正式出品され、プルーストの世界を余すところなく描いた傑作と絶賛された。そして、フランスのみならず、ヨーロッパ全土で前例のないほどの“プルースト・ブーム”を巻き起こし、大ヒットとなった。

考え得る最高の豪華キャストが実現
オデットを演じるのは、フランス映画界を代表するカトリーヌ・ドヌーヴ。「シェルブールの雨傘」から「インドシナ」、そして2000年カンヌ映画祭パルムドールに輝いた「ダンサー・イン・ザ・ダーク」まで、常に話題作に出演している大女優である。ジルベルト役には「美しき謡い女」のエマニュエル・ベアール。ヴェルデュラン夫人役に「うたかたの日々」のマリ=フランス・ピジエ。アルベルチーヌ役には、マルチェロ・マストロヤンニとドヌーヴの娘、キアラ・マストロヤンニ。さらに、「王妃マルゴ」のヴァンサン・ペレーズ、「キッドナッパー」の若手男優メルヴイル・プポー、「葡萄色の人生ロートレック」のエルザ・ジルベルシュタイン、「愛する者よ、列車に乗れ」のパスカル・グレゴリー、アメリカからジョン・マルコヴイッチ、ドヌーヴとロジェ・ヴァディムの息子クリスチャン・ヴァディム等々、これ以上ないほどの豪華な顔ぶれが揃った。

映像化不可能の声を乗り越えた天才的スタッフ
監督はラウル・ルイス。チリから亡命し、フランスで長年、監督として活躍している芸術派の巨匠である。監督と共にブルーストの難解な原作をみごとに脚色したのは、「海辺のホテルにて」「ドライクリーニング」のジル・トラン。撮影は、ルイ・マルの「好奇心」やコスタ・ガヴラスの「ミッシング」でダイナミックかつ緊張感溢れる映像を披露したアルゼンチン出身の名匠リカルド・アロノヴィッチ。製作は、マノエル・デ・オリヴェイラ、ヴイム・ヴェンダースらの傑作で知られるポルトガル出身の国際的プロデューサー、パウロ・ブランコ。衣裳は「エイジ・オブ・イノセンス汚れなき情事」でアカデミー賞を受賞したガブリエッラ・ペスクッチ。また、ドヌーヴらの賛沢な衣裳を彩る、ため息の出るような宝石の数々はカルティエの特別協力によるもので、20世紀初頭に作られた様々なアクセサリーが、ふんだんに使われているのも見逃せない。

ストーリー


晩年を迎えた作家マルセル・ブルースト(アンドレ・アンジェル)は病の床につき、女中のセレスト(マティルド・セニエ)を相手に口述筆記をしている。やがて疲れたマルセルは、セレストに昔の写真の束を持ってくるよう頼む。1枚1枚拡大鏡で写真を確認するマルセル。裕福なブルジョワの一人息子として生まれた彼が交流してきたのは、フランス上流社会を賑わした人々だった。マルセルの回想が始まる。一つの記憶の音が、香りが、残像が、次の記憶を呼び覚まし、またその次の記憶へと自由自在に繋がっていく。そしてその時の悲しみが、喜びが、まるで今また起こっているかのように蘇る……。

●ヴェルデュラン夫妻の邸、頻繁に開かれるサロンでの一夜。第1次大戦中。裕福なブルジョワのヴェルデュラン夫人(マリ=フランス・ピジエ)は今夜もサロンを開いている。彼女のお気に入りのピアニストで、新聞記者としても活動しているモレル(ヴァンサン・ペレーズ)は、敵国ドイツのベートーベンを素知らぬ顔で弾いている。そこヘオデット(カトリーヌ・ドヌーヴ)が現れる。ユダヤ人の夫シャルル・スワン亡き後、フォルシュヴィル伯爵と再婚したオデットは、数々の男性遍歴を重ねた元高級娼婦。彼女を見て、マルセルは過去の出来事を思い浮かべる。たとえば少年の頃(ジョルジュ・デュワレネ)のオデットの娘ジルベルトとの出会い。ジルベルトはマルセルに、両手でパントマイムのような不思議な仕草をして見せる。心ときめくマルセル、それは初恋だった。
●タンソンヴィルのサン=ルーとジルベルト夫妻の邸。ほれぼれするほど美しい女性に成長したジルベルト(エマニュエル・ベァール)は、フランスきっての名門貴族ゲルマント公爵の甥、サン=ルー(パスカルグレゴリー)と結婚する。間もなく、ジルベルトは彼の浮気に気づく。マルセルはジルベルトを訪ね、彼のかつての恋人アルベルチーヌ(キアラ・マストロヤンニ)のことや、昔、ジルベルトがシャンゼリゼで他の男と歩いているのを見てショックを受けたことを語る。相手の名を教えようとするジルベルトを制した時、マルセルのティーカップが突然割れる。
●コンプレーの町を腕を組んで歩くマルセルとジルベルト。ジルベルトは夫の浮気相手が、元娼婦でユダヤ人の女優ラシェル(エルザ・ジルベルシュタイン)だと話す。
●ラシェルの楽屋を訪ねるマルセル。ラシェルは愛人のサン=ルーが、実はモレルに恋をしていることに気づいていた。●タンソンヴィルのサン=ルーとジルベルトの邸。サン=ルーを訪ねるマルセル。そこへ舞台「冒涜」のラシェルの衣裳を着て現れるジルベルト。あてつけのつもりが、サン=ルーの胸で泣きじゃくるジルベルト。彼女から目をそらしたマルセルは視線の先の小箱を開ける。すると、割れたカップが入っている。ジルベルトは割れたカップは全て接ぎ合わせて小物入れに使っていた。
●灯火管制で寿暗いカフェ・ド・ラ・ぺ。マルセルは、カフェ・ド・ラ・ぺの薄暗い店内で新聞を読むシャルリュス男爵(ジョン・マルコヴィッチ)に話しかける。シャルリュス男爵は、戦争について独自の意見を語る。
●パリの街角。モレルはかつての愛人シャルリュス男爵と偶然街角で出会う。男爵は復縁を望んでいるが、モレルは受けつけない。
●元仕立屋のジュピアン(ジャック・ピエレ)が管理する同性愛者のための売春宿。あやしげな宿から出てくるサン=ルーを見かけるマルセル。警報が鴨り、好奇心も手伝って、マルセルはその宿に入る。ロビーには数人の若い男が手持ち無沙汰で話している。マルセルは廊下に面した小窓から声のする部屋を覗く。そこでは、シャルリュス男爵が若い男娼モーリスに鞭打たれ、慌惚の表情を浮かべていた。
●シャンゼリゼをぶらつくマルセル。戦争が終わる。以前から病弱だったマルセルは二つの療養所で治療するが、大した効果がないまま退院する。彼は、自分の文学的才能の無さと、文学に対する幻滅にうちひしがれていた。そんな折、街角でシャルリュスに出会う。脳卒中で倒れた彼は、回復したものの杖なしでは歩けず、すっかり老いさらばえ、ジュピアンが身の回りの世話をしていた。しかし、その言葉の端々には、相変わらず聡明さと辛辣さが産んでいた。

人々のざわめきの中、マルセルの意識はコンプレーへ飛び、幼少の頃の自分に話しかける。そして今度はバルベックの海岸へと飛び、幼少の、青年の、成人の、そして晩年の自分が同時に現れる。その時、マルセルは失われた時を見出し、自分自身に投げかけ続けた大いなる問いの答えをも見出したのだった……。

スタッフ

製作:パウロ・ブランコ
監督:ラウル・ルイス
脚本:ジル・トラン、ラウル・ルイス
原作:マルセル・プルースト「見出された時」(集英社刊)
撮影:リカルド・アロノヴィッチ
衣裳:ガブリエッラ・ペスクッチ
カロリーヌ・ド・ヴィヴェーズ

キャスト

オデッド:カトリーヌ・ドヌーヴ
ジルベルト:エマニュエル・ベアール
モレル:ヴァンサン・ペレ—ズ
シャルリュス男爵:ジョン・マルコヴィッチ
サン=ルー:パスカル・グレゴリ—
語り手(マルセル):マルチェッロ・マッツァレッラ
ヴェルデュラン夫人:マリ:フランス=ピジエ
アルベルチーヌ:キアラ・マストロヤンニ

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