原題:Not Forgotten

三人の老人たちの、切なくも心温まる涙の感動作

2000年ナント大陸映画祭・主演男優賞受賞、主演女優賞受賞 2001年ロッテルダム国際映画祭

2000年/日本映画/20分/35mm/ 配給:ビターズエンド+タキコーポレーション

2002年03月29日よりDVD発売開始 2001年9月15日よりテアトル新宿にてロードショー公開

公開初日 2001/09/15

配給会社名 0071

公開日メモ かつて戦地で共に戦った三人の男たちが現代の日本において、誇りと友情を守るために立ち上がる姿を描く。

解説


現代日本を力強く生きる老人たちが、友情という絆を確かめ合いながら、かけがえのない大切な人のために立ち上がる壮大な人間ドラマ。愛する人を守るために人は何ができるのか?そこには、現代人の失いつつある”人を思いやる心”と”誇り高く生きてゆく勇気”の大切さ、そして生きてゆくことの希望が描き出されます。

《平均年齢78歳!名優たちの見事なアンサンブル》
気丈で骨太な老人・木島に、川島雄三、黒澤明、成瀬巳喜男といった名匠の作品に数多く出演してきた三橋達也。妻の死に直面し、不器用な優しさをみせる平八に、松竹での二枚目スターから東映やくざ映画での高倉健、鶴田浩二との競演まで幅広く演じてきた大木実。民夫には、小津映画にかかせない名子役「突貫小僧」として名を馳せた、大らかな演技が魅力的な青木富夫。また平八との絶妙な夫婦の会話を繰り広げる静枝に、女流漫才の第一人者で最近演技派としての活躍も著しい内海桂子。民夫と恋をする品のよい老婦人・小春に、数々の文芸映画に出演してきた風見章子。空を見上げる仕草だけで人生を感じさせる彼らの円熟した演技力と存在感はナント三大陸映画祭にて男優賞(三橋達也、大木実、青木富夫)、女優賞(風見章子)を独占受賞するなど海外でも高く評価され始めている。また、老人たちと心を通わせる看護婦百合子に『月とキャベツ』『ブリスター』の真田麻垂美、その恋人・仁に『WILD ZERO』の遠藤雅らが共演。漠然とした不安をもちながらも日々を生きる若者の姿をみずみずしく演じる。

《ひたむきに生きる人々の姿——篠崎誠の描く人間讃歌》
監督は、若い夫婦の愛の絆を真摯に描いた『おかえり』が国内外で賞賛され、フランスでも5館で公開されるという破格のデビューを飾った篠崎誠。その5年ぶり待望の新作『忘れられぬ人々』は「太平洋戦争」、「老い」という社会的テーマを丹念に取り込みながら描く、老人たちの愛と勇気の物語。監督自ら、戦争を生き残った人々に取材を重ね、老人問題に関する資料や文献を徹底的に調べ上げて挑んだ意欲作は、日本映画の黄金期を支えてきた名優たちとの見事なコラボレーションによって普遍的なひろがりを持つ感動作へと昇華した。哀しみや喜びを乗り越えて長い人生を歩みながら、なおたくましく余生を送る老人たちの姿、また老人たちと心を通わせる看護婦の百合子、米軍に働く父親をもつ少年ケン、居酒屋に集まる客などそれぞれの日常をも際立たせながら、日々を懸命に生きる人々の姿をいきいきと描き出す。そして篠崎誠の、人間のひたむきな”生”に注がれる、その温かくもやさしいまなざしは、世代を越え、国境を越えて、生きることの勇気と希望を伝えてゆく。

ストーリー



また戦地の夢を見て木島等は目覚めた。戦争で家族を亡くした彼は、今では畑の世話に精を出して暮している。米軍で働く父親をもつ少年ケン坊は、そんな木島を慕ってよく畑に遊びにくる。木島の戦友・村田平八は敗戦後、妻・静枝とふたりで居酒屋をきりもりしてきたが、最近、静恵が身体の具合を悪くして入院してしまった。静枝につきそう看護婦・百合子の戦死した祖父・金山が、平八たちの戦友であることが分かり、年に一度の戦友会に彼女も参加することになった。そのころ彼女の恋人・仁は知人から強く誘われ”老人相手”の福祉事業を手掛ける「ユートピアコーポレーション」(以下、UC)という会社に就職しようとしていた。
ずっと昔に妻を亡くした伊藤民夫はバスの中で、乗り合わせた上品な老婦人・小春に一目惚れをする。久しぶりに木島を訪ねた民夫は、戦友、金山の孫娘が戦友会にくることを伝え、木島にも今年こそは戦友会に参加するようにと話す。
思い出の曲「戦車よ、ゆれよ」のハーモニカの吹き方をケン坊に教える木島。戦友会に参加することを渋っている木島を説得しようと民夫と平八がやってきた。戦没者の慰霊碑のある高台から、三人は変わり果てた街並を眺め、時代の流れを感じるのであった。
平八の居酒屋で開かれた戦友会。かつての戦友たちは嬉しそうに金山との戦地での思い出を語り、百合子は亡き祖父の面影を見る。なかなか現れない木島にやきもきする民夫と平八だったが、ついに彼はやってきた。金山のハーモニカを百合子に渡す木島から、百合子は祖父、金山の最期の姿を聞く。
民夫の持ち前の明るさに惹かれた小春は、出逢いを重ねた。ふたりでいることの幸せを感じ始めていた。
医者から静枝の余命が長くないことを知らされた平八は、静枝に嘘をつき家に連れて帰る。退院祝いに店に集まった木島、民夫と小春、そして百合子と仁。だが、静枝は自分の命が長くないことを知っていた。店からの帰り道——海沿いを歩く百合子と仁は、老人たちの変わらぬ仲の良さと元気の良さ、年老いてなお、人生を謳歌している姿に温かな幸せを感じる。「あんなふうに歳とれればいいよね」。
ある日木島の家に、電気会社の者だと名乗る怪しい男がやってきた。木島はどなりつける。また別の日、この男は小春の家にもやってきた。満面の笑みを浮かべ、いかにも親切を装いながら。
木島の家に百合子がハーモニカを返しに来る。受け取ろうとしない木島に、百合子は戦地の金山から家族に送られた古い手紙をみせる。そこには、金山の文字で「戦場は辛いけど、すばらしい友達に出会うことができたので私は寂しくない」と家族を励ます言葉が書いてあった。
病院の百合子のもとに、UCの新人研修を終え颯爽とした仁が現れる。安心する百合子だったが、仁から重病患者のリストを求められ疑問を抱く。病院へと向かう平八を待ち伏せしていたのはUCの車だった。そのころ病院で、目を覚ました静枝は、付き添う百合子に昔、平八と行った温泉の夢を見たことを話す。「あのころの思い出は死んだら、どこにいっちゃうんだろう?」。いたたまれない百合子。
初めて小春の自宅に上がった民夫は、彼女と昔話を語り合う。その姿は、UCの社員に盗視されていた。先日の電気会社の男が天井にとりつけた火災報知器には隠しカメラが内蔵されていたのだ。そうとも知らず小春は、夫を戦争で亡くし、幼い一人息子を燃え上がる戦火から救い出せなかった、ずっと背負ってきた哀しい運命を民夫に語る。
民夫は、辛いできごとを打ち明けてくれた小春に指輪を贈ろうとする。しかしそんな、ある日、小春は、買い物からの帰り道、人相学を勉強しているという男に彼女の背後に幼い男の子の顔が見えると言われ、ビルの一室につれて行かれた。炎の中死んでいった息子の霊を供養するために3000万円の金が必要だと言われる。
指輪を渡そうと民夫は小春を訪ねたが、彼女は居ない。鍵の開いた家に上がると居間には小型の仏像が散乱していた。彼女は措置入院してしまっていたのだ。
百合子は仁から聞き出して、仁の同僚が平八に供養仏を売っていたことを知る。木島の家を訪ねた百合子は、仁の勤める会社UCが平八と何か関係しているかもしれないと木島に告げる。
静枝の様子が急変し、平八はそばで見守る。「あんたと一緒になって良かった」そうささやき、静枝は逝く。葬式の後、民夫と木島は平八がUCに騙され、高価な供養仏などを大量に買わされ、店も売ってしまったことを知ってしまう。
小春に面会をする民夫は、放心状態の変わり果てた彼女の姿に驚きと怒りで落胆してしまいながらも、小春のかぼそい指に指輪をはめてそっと立ち去ろうとする。民夫と戦争で亡くした夫とを間違えて呼んでいる小春。怒りが爆発し、UCに一人乗り込んだ民夫は、ついにナイフを取り出した。
木島はまた戦場の夢を見た。撃たれた金山を木島はかばおうとするが、「どうせ死ぬなら友人の手で逝きたい、自分を撃ってくれ」と頼む。ハーモニカを渡し微笑む金山を撃つことができず、金山は敵兵の炎にまかれ、木島は撃たれた。
民夫は死んだ。棺に横たわる民夫の姿に木島と平八は、最後の民夫の言葉を想い出していた。「今まで生きてきて、一つだけいいことがあった、それはお前らに会えたことだ」
木島は、外で待っていた平八とともに家を出る。ケン坊あての手紙がついたハーモニカを見て、ケン坊は木島を追いかける。「おじいちゃん、死んじゃうの?」UC社長室に討ち入る木島、平八。そこには仁の姿もあった。相討ちをし倒れた木島。平八に支えられ、戦場で撃たれた時を思い出しながら逝く。
待ちつづけていたケン坊に、平八は木島から受け取ったハーモニカを渡す。ケン坊の吹く「戦車よ、ゆれよ」のメロディーを背中に感じながら坂道を登り始めた平八。
いつのまにか坂の上には木島と民夫が微笑みながら立っていた。そして三人の姿は坂の上に消えていく。

スタッフ

原案・監督:篠崎誠
プロデューサー:定井勇二/甲斐真樹/澤井克一
アソシエイト・プロデューサー:赤城聡/有吉司
脚本:篠崎誠/山村玲
撮影:鈴木一博
照明:上妻敏厚
録音:滝澤修
美術:金勝浩一
編集:冨田伸子
記録:白鳥あかね
音楽:リトル・クリーチャーズ
助監督:武正晴
音響効果:柴崎憲治
特別協力:中世の里なみおか映画祭
製作協カ:コムテッグ
製作:ビターズ・エンド/タキコーポレーション/ベンチャーフィルム/東京テアトル
配給:ビターズ・エンド/タキコーポレーション

キャスト

木島等:三橋達也
村田平八:大木実
伊藤民夫:青木富夫
村田静枝:内海圭子
吉川小春:風見章子
金山百合子:真田麻垂美
渡辺仁:遠藤雅
木村:大森南朋
滝本:中村育児ニ
ケン:ドミニク・ローズ

老婦人:星美智子
鈴木(戦友会):佐伯秀男
阿久津覚:篠田三郎

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