ホフマン物語
原題:The Tales of Hoffmann
映画製作から50年、そして舞台初演より120年。 世紀を越えて人々を魅了する「ホフマン物語」のオリジナル全長版、遂に日本初公開!
1951年度アカデミー賞、美術監督・装置賞、美術、衣装デザイン賞 1951年カンヌ国際映画祭、特別賞、フランス映画高等技術委員会賞 1951年ベルリン国際映画祭、銀熊賞
1951年11月26日イギリス公開
1951年/イギリス映画/35mm/上映時間124分/モノラル/配給:ケイブルホーグ
2003年09月20日よりDVDリリース 2001年1月27日よりキネカ大森にて独占ロードショー
公開初日 2001/01/27
配給会社名 0029
公開日メモ バレエと映画を見事に融合させた名作『赤い靴』(48)のスタッフとキャストが再び結集し、オペラ、バレエ、演劇、文学、ファンタジー、SFXといったアートを一つに融合させた20世紀究極の総合芸術『ホフマン物語』。
解説
バレエと映画を見事に融合させた名作『赤い靴』(48)のスタッフとキャストが再び結集し、オペラ、バレエ、演劇、文学、ファンタジー、SFXといったアートを一つに融合させた20世紀究極の総合芸術『ホフマン物語』。ベルリン映画祭ではその創造性によって銀熊賞が与えられ、続くカンヌ映画祭でも上映されて特別賞を受賞、そして不思議な劇空間を造り出した美術と衣装によってアカデミー賞にもノミネートされることとなった、大人のためのファンタジーである。
初演から120年、映画製作から50年
98年の感動作『ライフ・イズ・ビューティフル』のオペラを見に行くシーンに印象的に挿入された《ホフマン物語》。中でもこの映画でもヴェネツィアのゴンドラの上で歌われる舟歌「美しい夜」がモチーフとなり、ロベルト・ペニーニ扮する主人公を夢中にさせていたように、オッフェンバックの音楽は聴く人を虜にさせずにおかない。
幻想の作家ホフマンホフマンとは、酒と女性とモーツァルトをこよなく愛した17世紀のドイツの詩人、作家、批評家にして作曲家のETAホフマンのこと。彼の造り出した幻想的とも怪奇的ともいえるファンタスティックな短篇小説の世界は、後にチャイコフスキーの《くるみ割り人形》、ドリーヴの《コッペリア》(この映画と同一原作)といったバレエやヒンデミットの《カルディヤック》などのオペラとなり、かのワーグナーの《タンホイザー》《ニュルンベルクのマイスタージンガー》にもインスピレーションを与えている。
ここで登場するホフマンの原作は、プロローグに童話「金の壼」に登場する道化クラインザックが挿話として使われた後、コッペリウスの作った魔法の眼鏡によって、機械仕掛けの人形オランピアを生きている女性と錯覚して彼女に恋する男を描いた、パリが舞台の第一話「オランピアの物語」は、《コッペリア》としてバレエ化されたことでも知られる「砂男」。通例オペラでは三幕目として上演されることが多い、魔法に操られた妖女=高級娼婦に弄ばれるヴェネッィアが舞台の第二話「ジュリエッタの物語」は「大晦日の夜の冒険」。胸を煩い指揮者の父に歌を禁止されたアントニアが、名歌手だった亡き母の亡霊に翻弄されるギリシアを舞台にした第三話「アントニアの物語」が「顧問管クレスペル」と、恋に破れた三つの男の話を、ホフマンが数十年間にわたって経験したプリマ・バレリーナのステッラとのこととして、オムニバス形式で構成している。そして、「ドン・ジュアン」が全体の構成のベースとなった。
ストーリー
プロローグ
ドイツのニュルンベルク。劇場ではプリマ・バレリーナ、ステッラが主演するバレエ《トンボの夢》が上演中である。その楽屋口からリンドーフ伯爵が潜り込む。舞台袖でステッラは召使アンドレアス(オペラではアンドレス)に「愛しているわ、ホフマン」と書いたハンカチーフに包まれた控え室の鍵を手渡す。それを見たリンドーフはアンドレアスを買収し、鍵を手に入れる。
一幕が終わった幕間の休憩中に、客席にいた詩人ホフマンは、学生がたむろする「ルターの酒場」を訪れる。そこにはほろ酔いの学生たちと一緒に彼の親友ニクラウスもいた。リンドーフもホフマンの後を追ってその店へ入る。
ホフマンは学生たちと同席し、ワインやビールを飲み始める。意気同行したホフマンは彼らにせがまれるまま道化クラインザック(見た目とは逆に”小さなお腹”の意味)の話を始める。その途中で霊感が湧いたホフマンは、自分が慕う美しい娘の話を始める。休憩時間は終わって、劇場では第二幕が始まるが、酒場ではパイプが配られてホフマンの三人の愛人である娘の話が本格的に語られ始める。
第一話:オランピアの物語
フランスのパリ。時代はエッフェル塔が建てられる以前。カラフルな人形館を営む操り人形職人スパランザーニは、半分機械・半分人間の召使コシュニーユに自信作オランピアを運ばせていた。そこへ、まだ学生のホフマンがニクラウスとともにやってくる。
発明家である魔法の眼鏡職人コッペリウスが現れて作り物が動いて見える眼鏡を売り付け、コシュニーユが操る人形たちのショウを見せる。魔法の眼鏡をかけたホフマンの目には、人形たちが人間の来客に映り、オランピアの登場ですっかり心を奪われる。彼女は”オランピアの歌”《森の小鳥たちが軽やかに飛ぶ》(オペラでは「森の小鳥はこがれを歌う」)を歌い踊り、場内を魅了。機械仕掛けなので途中で度々止まるが、ゼンマイを巻くと再び動きだし、無事歌い終える。
スパランザーニは、コッペリウスと高額の契約でオランピアに特製の眼を入れさせていたが、銀行へ換金に行ったコペリウスは、手形が不渡りだったことを知って怒り狂う。オランピアにすっかり魅了されたホフマンは、熱い思いを告白し、人形に恋してもしかたがないとニクラウスにたしなめられても上の空。そこへ復讐のため店に戻ってコッペリウスが踊り続けるオランピアをバラバラに壊してしまう。魔法の眼鏡が壊れたホフマンは、そこで初めてオランピアが動く人形だったと解って、樗然とする。
第二話:ジュリエッタの物語
イタリアは水の都ヴェネッィア。高級娼婦のジュリエッタは、魂の蒐集家ダペルトゥットによってすっかり心を失っている。彼女は彼の傍らでゴンドラに揺られて舟歌《麗しい夜》を歌いながら彼の豪邸に辿り着く。その様子を成功者となり旅の途中ヴェネツィアに立ち寄っていたホフマンが、ニクラウスとともに橋の上から眺めている。桟橋には影も魂も奪われた男シュレミルが、ジュリエッタを待っていた。屋敷に着くとダペルトゥットは、手に取ったものすべてを宝石に変えて彼女に与え、その代わりに新しい男から影を奪えと指示する。彼が姿を消した後、ホフマンがニクラウスと表れ、かつて愛したジュリエッタの心を取り戻そうとするが、逆に彼女によって影を奪われてしまう。そこへ魂と影を閉じ込めた部屋の鍵を持つシュミレルが現れ、事体を悟る。ダペルトゥットがあらわれてホフマンの魂までも奪ってしまおうとするが、ホフマンはシュミレルと決闘して勝ち、部屋の鍵を手に入れる。しかし、ダベルトゥットとジュリエッタはゴンドラで既に立ち去っていた。ホフマンが鍵を鏡に投げつけると、彼の影が戻る。
第三話:アントニアの物語
ギリシアの孤島。
輝かしい未来が約束されていた歌手のアントニアは、胸の病を煩い、歌うと死ぬと宣言されていた。しかし、彼女は同じく歌手で早くして亡くなった母のことを思いながらピアノに向かう。ホフマンとニクラウスは小舟にのって彼女の城を訪れる。かつて恋人同士だったホフマンとアントニアは抱き合って再会を喜びあう。アントニアの父から入室を禁止された音楽室でピアノに向かった二人は、デュオ《恋の歌》を歌う。しかし、大指揮者で二人の恋を禁じている父クレスペルが帰宅し、物音を察知する。
そこへ主治医を名乗る医師ミラクルがやってきて、別の部屋で眠るアントニアに治療を始める。彼女は悪夢の中で歌わされ、地獄へと落ちてゆく。目が醒めたアントニアは、ホフマンに説得されて歌手の道をあきらめて彼と結婚することにする。ミラクルは母親の彫像の前でその霊を呼び起こし、アントニアに忘れようとしている歌手の夢を呼び覚まそうとする。ついにアントニアは母と一緒に《愛しの娘よ、聴きなさい》を歌い始めてしまう。彼女は母の亡霊に導かれ、幻の歌劇場の大舞台の上に向かう。アントニアはアリアを歌い終え、そして息絶えて死んでしまう。
エピローグ
オランピア、ジュリエッタ、アントニア……三人の女は同一人物だった。彼女たちとの仲を、いつも、邪魔する男もまた、同じ人物だった。
話を終えたホフマンは、うつろな眼差しでそれらのことを考えていた。楽屋に来なかったホフマンを探して酒場を訪れたステッラにも、ホフマンは気がつかない。ステッラは幻滅し、リンドーフと立ち去っていった。
スタッフ
作曲:ジャック・オッフェンバック
台本:ジュール・バルビエ
英語台本:デニス・アランデル
指揮:サー・トマス・ビーチャム
演奏:ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団
美術・衣装:ハイソ・ヘックロート
撮影:クリストファー・チャリス
装置:アーサー・ローソン
編集:レジナルド・ミルズ
製作補:ジョージ・バズビー
監督補:シドニー・ストリーター
振付:フレデリック・アシュトン
振付助手:アラン・カーター、ジョアン・ハリス
録音:テッド・ドレイク
録音監修:ジョン・コックス
音楽監督助手:フレデリック・ルイス
カメラ:フレディ・フランシス
美術補:アイヴァー・デドーズ、テレンス・モーガン2世
背景:E.リンデゴード
メイク:コンスタンス・リーヴ
ヘアー:ジョゼフ・シアー
記録進行:パメラ・デイヴィス
言語指導:モリー・タレイン
テクニカラー調整:ジョアン・ブリッジ
撮影構成:E.ヘイグ
器械主任:W.ウォール
衣装調達:アイヴィー・ベイカー
シアラーとエイアーズの衣装:ジョゼフィーン・ボス
操り人形:ジョン・ライト・マリオネット劇団
キャスト
ロバート・ラウンズヴィル
パメラ・ブラウン
ロバート・ヘルプマン
モイラ・シアラー
リュドミラ・チェリナ
レオニード・マシーンほか
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