どうせ泣くなら楽しいことやって泣きましょ!

第13回東京国際映画祭コンペティション公式参加作品

2000年/日本/35mm/カラー/ビスタビジョン(1:1.85)/モノラル/95分/ メディアボックス=日本ビクター=サンダンス・カンパニー提携作品 配給:メディアボックス=日本ビクター

2002年1月25日ビデオ発売&レンタル開始 2001年6月2日よりシネセゾン渋谷ほか、全国ロードショー

公開初日 2001/06/02

公開終了日 2001/07/06

配給会社名 0099/0059

公開日メモ この映画の原作「非・バランス」は、児童文学賞の中でも最も歴史の古い講談社児童文学新人賞を1996年に受賞した作品です。著者の魚住直子氏は広島大学教育学部心理学科に学びました。作中には学校の抱える様々な問題をシビアに取り込みながらも、読後感のなく爽やかなストーリーを綴り、暖かな感動を呼びました。

解説



だれもが心の底から求めるもの——親友

人が生きてゆく上で絶対に欠かせないものの一つが「友人」です。しかし、携帯電話やパソコンなどの新しいコミュニケーションツールが急速に発達している現代では、”メル”友に代表されるような、《非接触の友人》という新たな友人の形も生まれています。ティーン・エイジャーを例にとれば、同じエリア、同じファッションを共有しているだけで、簡単に友達が増えて行く一方で、その実、彼らは表面的な友達付き合いに終始し、”何でも話せる本当の友達”がいないことに心を悩ませています。ある調査によると女子高生の悩みの第一位は《親友がいない》ということで、これはどの世代にも言えることと思います。
“バディ・ピクチャー”に分類される映画の名作は邦洋を問わず枚挙にいとまがありません。これらの作品の主人公たちが共有する”孤独の呼吸”こそが、現実でも《親友》と呼べる相手にだれもが感じるものではないでしょうか。
「非・バランス」の主人公の二人もまた、この”孤独の呼吸”を共有できる《親友》を物語の中で見つけてゆきます。その点で、親友探しに悩む現代人の共感を呼ぶ作品となるでしょう。
それは同時にヒロイン・チアキが、《等身大のヒロイン》=《全ティーン・エイジャーの親友》となり、”菊ちゃん”が《心優しき相談相手》となるということです。観客にとって自分たちの「悩み」や「苦しみ」「喜び」を共有できるスクリーンのニュー・ヒロインとヒーロー(?)の誕生となります。

現代のティーン・エイジャーの新たなるバイブル

この映画の原作「非・バランス」は、児童文学賞の中でも最も歴史の古い講談社児童文学新人賞を1996年に受賞した作品です。著者の魚住直子氏は広島大学教育学部心理学科に学びました。作中には学校の抱える様々な問題をシビアに取り込みながらも、読後感のなく爽やかなストーリーを綴り、暖かな感動を呼びました。そして、児童文学というジャンルであるにも関わらず、『本の雑誌』が99年の10月号で発表した90年代のベスト100では邦洋の名著の中で第82位にランクされました。
少年・少女たちがその生活時間の大半を過ごす場所——学校についての問題は、ティーン・エイジャーにとっていつでも最大の関心事です。この映画は彼らにとって指針となる作品でもあるのです。そして同時に、大人と子供の境目である中・高生たちの本音を反映させ、微妙に揺れ動く様を鮮やかにスクリーンに映してゆきます。
そして、現代の教育の基盤を何年も前から揺さぶっている「いじめ」の問題もこの映画にはモチーフの一つとして盛り込まれています。小学生のときに「いじめ」にあってトラウマをかかえたヒロインが、自らそれを乗り越えて行く姿は、悩めるティーン・エイジャーやその親たちへ大きなものを投げかけるでしょう。

新たなヒロイン・新たなキャスト・新たなスタッフで新しい映画を

その13歳のヒロイン・松本チアキ役には1000人を超えるオーディションの中から、現役中学生の新人・派谷恵美(はたちや・めぐみ)が選ばれました。この作品がスクリーン・デビューとなる彼女の新鮮な魅力と瑞々しい感性は、日本映画界に突如として現れたミレニアムのミューズなのです。170cmの長身に繊細さとたおやかさが同居したその個性は新たな時代のヒロインの誕生を予感させます。
そしてチアキの相手役・桂川菊には小日向文世(こひなた・ふみよ)。類い稀な演技力と表現力で数多くのTVや映画での出演歴を誇りますが、今回初めて主演に挑みます。
バイプレイヤーから主役ヘステップアップすることの多い昨今、その真打登場となります。
さらに、チアキの同級生・ミズエ役にはこれも14歳の新人、はたのゆうを、小学校時代の同級生・ユカリ役には一般参加の中村桃花をそれぞれオーディションで選びました。チアキ役の派谷を含め、全くタイプの違ったこの3人、初出演となるこの映画でどんな魅力を見せてくれるか注目されます。
これらのメインキャストを支えるキャストはベテラン・個性派が勢揃いしました。まず、チアキの母親役に今や日本映画界を代表する女優となった原田美枝子。菊の昔の知り合い・マサヨシに夢の遊眠社出身でTVドラマなどでも活躍中の羽場裕一。そしてミュージシャンとしても活躍中の柏原収史。さらに強烈な個性で数多くの出演暦を誇り、「蜂祭りの島」で初主演を務めた土屋久美子、テレンス・マリック監督の「シン・レッド・ライン」にも出演した国際派・水上竜士、さらには文学座出身の名バイプレイヤー梅沢昌代らが脇を固めます。
監督には冨樫森。相米慎二・井筒和幸・中原俊・平山秀幸らを支えた名助監督の長編デビュー作となります。オムニバス「かわいいひと」の一篇で見せた的確な演出力とストーリーテリングの才はこの「非・バランス」を必ず見る人の心に残る名編に仕上げてくれることでしょう。
脚本は第2回PFFのスカラシップを最年少で受賞し、「冬の河童」「メロデ」などのインディーズ作品の名手として知られる風間志織があたり、初めて他の監督のために脚本を担当します。
そして、撮影は「愛を乞うひと」で数々の映画賞を受賞した他、「学校の怪談」シリーズや「ジュブナイル」など若手No.1の柴崎幸三が担当、ヴィヴィッドに瞬間を切り取ってゆきます。照明は数多くの柴崎カメラマン作品で照明部チーフを務めた尾下栄治、この作品で照明技師デビューとなります。美術には「ポルノスター」「ちんちろまい」などで独特の世界を築いた三浦伸一。録音は「草の上の仕事」をはじめとする篠原哲雄監督作品で技師を務める田中靖志。編集は「愛を乞うひと」「金融腐食列島—呪縛—」で2年連続日本アカデミーの最優秀編集賞を受賞した川島章正。さらに音楽は「KAMIKAZETAXI」「金融腐食列島—呪縛—」「ユキエ」などの川崎真弘が担当

ストーリー


主人公の名前は、松本チアキ。私立の女子校に通う十三才の中学二年生。
中学に進学するとき、彼女は自分でルールを作った。
一、友達を作らない
二、クールに生きていく
だからとにかく学校で彼女は孤立している。必要最低限のこと以外は、一言も口にしない、〈絶対孤立状態〉だ。だけど全然淋しくなんかない。それが彼女の選択した生き延びるための作戦なのだから。
身の回りには友達はおろか、話す相手さえ作ろうとしないヒロインは、ふとしたきっかけで”菊ちゃん”と出会います。はるかに年上で、ちょっと変わった”菊ちゃん”とヒロインは、友情ともいえる”微妙で心地よい瞬間”をいっしょにすごします。そして、二人は互いの心が真に通じ合ったことに気づきます。人と人とのつながり———二人は過去にとらわれることをやめて、未来に向かう決心をします。チアキは、それまでの深い穴の中にいるような生活から抜け出すために、傷つきながらも大きく飛び出すためのジャンプ台に立ち、そして”菊ちゃん”も新たな一歩を踏み出します……。

スタッフ

製作:長谷川憲/小松茂明/藤峰貞利
企画:サンダンス・カンパニー
プロデューサー:住吉道朗/佐藤央/木村典代/藤田義則
原作:魚住直子「非・バランス」(講談社刊)
脚本:風間志織
撮影:柴崎幸三
照明:尾下栄治
美術:三浦伸一
録音:田中靖志
編集:川島章正
衣装:宮本茉莉
ヘアメイク:金森恵
スクリプター:生田透子
助監督:原正弘
製作主任:森井輝
音楽:川崎真弘
音楽プロデューサー:天翔陽子
監督:冨樫森

キャスト

派谷恵美
小日向文世
はたのゆう
中村桃花
原田美枝子
羽場裕一
柏原収史
土屋久美子
水上竜士
梅沢昌代
とまと

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