原題:Before Night Falls

ぼくの魂はどこに還るのだろう

2001年第73回アカデミー賞主演男優賞ノミネート[ハビェル・バルテム] 2001年第35回全米映画批評家協会賞主演男優賞受賞 2001年第58圓ゴールデングローブ賞主演男優賞ノミネート 2001年第16回インディペンデント・スピリット賞主演男優賞受賞、作品賞・監督賞・撮影賞ノミネート 2000年第57回ヴェネチア国際映画祭 審査員特別賞、主演男優賞受賞 2000年ナショナル・ボード・オブ・レビュー 主演男優賞受賞 2001年サザン・イースタン映画批評家協会寅主演男優賞受賞 200l年シカゴ映画批評家協会賞 主演男優賞ノミネート 2000年トロント国際映画祭出品

2001年1月26日全米公開

2000年/アメリカ/133min/Dolby Digital/ 配給:アスミック・エースエンタテインメント

2003年09月05日よりビデオレンタル開始 2003年09月05日よりDVDリリース 2001年9月22日よりシネマライズにて公開

公開初日 2001/09/22

公開終了日 2001/11/16

配給会社名 0007

公開日メモ 現代文学を代表するキューバの伝説の作家、レイナルド・アレナスが死の直前に綴った自伝『夜になる前に』。極貧の幼年時代、詩作におぼれる青年時代、カストロに熱狂したキューバ革命、作家としてのデビュー、独裁政権下での検閲、投獄、迫害、亡命、そして発病。闘病生活の果てに、1990年にアレナスは47歳の若さでニューヨークにてエイズのため客死する。あまりにも純粋な自由を求め続けたがために、自由から隔絶されてしまった男の凄絶な手記を映画化。

解説



2000年9月4日、ワールドプレミアとなるヴェネチア映画祭の公式上映後、会場は興奮状態に包まれた。舞台に駆け上がる者、その場で泣き崩れている者。「ブラボー!」の声がそこここから飛ぶ。拍手は大きなうねりとなって何度も何度も湧き上がり、スタンディング・オベーションは7分間続いた。ジュリアン・シュナーベル監督やハビエル・バルデム、オリヴィエ・マルティネスら出演者はもちろん、そこに居合わせた全員が興奮を抑え切れずお互いの肩を抱き合って喜んだ。後にハビエルは感慨深げに語った、「あの夜は、神様からの贈り物だった」。

キューバの亡命作家レイナルドアレナスが
自らの死を前にして綴った自伝『夜になるまえに』。

あまりにも純粋に、あまりにも壮絶に自由を求め続けた作家レイナルド・アレナス。母国キューバでは処女作以外の全ての作品が発禁処分となるが第2作「めくるめく世界」がフランスで出版され、メディシス賞を受賞、一躍世界に名が知れ渡る。名実ともに現代ラテン文学の最高峰のひとりで日本でもすでに熱狂的なファンを獲得している。彼が自らの人生を語った自伝「夜になるまえに」を、『バスキア』のジュリアン・シュナーベルが、豪華キャストを迎え4年の歳月をかけて映画化。天国と地獄を行き来するようなアレナスの波乱に満ちた一生を、シュナーベルは繊細な演出によって湿り気と芳香を含んだ官能的でさえある映像美で綴っていく。主演のハビエル・バルデムは本作でヴェネチア国際映画祭をはじめ全米映画批評家賞、ゴールデンーグローブ賞そしてアカデミー賞にいたる各映画賞の主演男優賞に名乗りをあげた。観る者の心を感動に打ち震わせる、21世紀の新たなカルチャースタンダードともいえる本作が、いよいよ日本公開となる。

「キーボードに両手をすべらせる。すぐ、すべてが動きだす。
カチャ、カチャ、カチャカチャという音が、音楽が、はじまる」レイナルド・アレナス

1943年6月16日キューバにて生誕。極貧の幼年時代、カストロに熱狂したキューバ革命を経て、20歳で作家としてデビュー。しかし独裁政権下では、作家、またはホモセクシュアルというだけで迫害の対象となり、アレナスは投獄される。80年、ニューヨークヘ亡命。エイズ発病。90年、鎮静剤の多量摂取により自殺——。
熱狂的な原色、音楽、エロスと暴力的なエネルギーみなぎる南国キューバ。独裁政権から逃れるため故郷を捨て、アレナスがめざしたのは摩天楼と資本主義と自由の国アメリカ。しかし彼の旅はそこで終着しなかった。帰りたい、帰れない、帰りたくない、でも帰りたい。対照的な二つの国の狭間で揺れ動くアレナスの理想と幻滅は、作品世界の通奏低音となって、深く静かに胸を刺す故郷を、自由を切望する彼の想いは、言葉となって紡がれる。弾圧も亡命も病気すらもアレナスの筆をとめる理由にはならなかった。照明のないキューバの独房では“夜になる”、そしてニューヨークでは“死が訪れる”、その最後の一瞬まで、溢れ出る言葉を書きつづけた。彼にとって本当に「帰りたい」ところとは何処だったのか。この映画が答えのひとつを示唆してくれるだろう。

80年代のNYアート界を率いた画家ジュリアン・シュナーベル薄身の感動作

1996年、80年代NYアートシーンの寵児ジャン=ミシェル・バスキアの栄光と孤独を描いた『バスキア』で監督デビューを果たした画家ジュリアン・シュナーベル。同じ表現者としてアレナスに強く共感を覚えたシュナーベルが、映画『ブエナ・ビスタ・シアル・クラブ』の大ヒットで記憶に新しいキューバのもうひとつの側面を描いていく。散文詩のように細かく章立てされた原作から、流麗な構成によってひとつの力強いドラマを引き出し、キューバの光と影をカメラの前に映し出した。それはちょうど二重露出のようにアレナス自身の光と影をも浮き彫りにしていく。一方で画家ならではの視点で捉えた映像美。むせかえるような緑濃い森林、王冠のような雨のしずく、青空と草原と一本道。死神、気球、窓辺のバラ。一貫してクールな映像の中で寄せては返す波のように繰り返し挟み込まれる自然のモチーフによって、シュナーベルは映画にリズムと奥行きを作り出していく。さらに、効果的に挿入されるキューバ音楽やルー・リードのメロディとあいまってアレナスのめくるめく世界をスクリーンに現出させることに成功した。
アレナスは彼の作品そのものだった。彼は自分の全てを言葉に変えた。アレナスが伝えたかった言葉を、シュナーベルは映像に移した。シュナーベルの心を捉えて放さなかった慟哭の詩人の一生は、映画によって強烈な光の記憶となった。シュナーベルを衝き動かした感動は、今、観客に、心を揺さぶられる映像体験となって伝わる。

アレナスに魅せられて集まった才能たち

アレナスを演じるために約13,5kg体重を落とし、英語とキューバなまりのスペイン語を特訓したのはスペインのスーパースター、ハビエル・バルデム。この役でヴェネチア映画祭ほか各映画祭にて主演男優賞を独占、アカデミー賞にもノミネートされ一躍世界中の映画ファンの知るところとなった。病に倒れるアレナスを最後まで献身的に支える親友ラサロ・ゴメス・カリレス役には、フランス映画界で将来を嘱望されるオリヴィエ・マルティネス。若きアレナスを惹きつけて惑わせるぺぺ・マラス役を好演するのは、イタリア俳優アンドレア・ディ・ステファノ。シュナーベル監督とは、『バスキア』(96)に次いで2作目となるマイケル・ウィンコットも、公の場で家族を弾劾するという多くのキューバ人が味わった苦痛を持った将校役を演じ脇を固める。さらに本作では、名実ともにスターとなったジョニ一・デップが意表をつくロールで場面をさらう。アレナスに重要な示唆を与えるクコ・サンチェスには同世代の俳優の中でも一目置かれる存在で、2001年カンヌ国際映画祭に監督作“The Pledge”を出品したショーン・ぺン。名監督たちに愛される個性派俳優たちとともに、映画監督のエクトル・バベンコやイェジー・スコリモフスキが特別出演しているのも見逃せない。
シュナーベルとともに本作の製作をたちあげたのは、シュナーベルとは『バスキア』(96)を製作した盟友、ジョン・キリク。メキシコに見事なハバナのビーチを再現したのは、バズ・ラーマン監督作『ロミオ&ジュリエット』(96)に参加したサルバドール・パーラ。そのほかメキシコ・アカデミー賞やスペインのゴヤ賞の常連が顔を揃える。音楽に、コーエン兄弟監督作のすべてを手がけるカーター・バーウェル。どこか郷愁を誘うキューバ音楽とともに、ローリー・アンダーソンとルー・リードによる曲も織り交ぜ、キューバとNYの狭間で揺れたアレナスの人生に余韻を加えている。

ストーリー



1943年オリエンテ州

アレナスは1943年7月16日に生まれた。美しく若い母親はほどなく彼の父親に捨てられる。この男性優位の社会で苦々しい貞節を貫くしかなかった母親は、息子のアレナスを連れ、キューバのオリエンテ洲こある実家の農場に戻る。アレナスの子供時代は、貧困と彼を取り巻く自然の輝きという対比に特徴づけらる。この対照的な環境によって与えらた豊かさと無名の名かで、彼は計り知れない自由を見つける。少年は自分の衝動のおもむくまま、詩を書いたり、裸の若い男性が川で水遊びをするのを見たり、快楽に耽ったりしていた。

1958年オルギン

1958年にアレナスの一家はオルギンの町へ移る。14歳のときパティスタ独裁政権を打倒するためのカストロ率いる暴動に加わる。1959年1月革命の勝利とともに、農業会計士になる学校Wに入り、新政権の若者を教育するという野心的なプログラムに参加する。

1962年ハバナ

1962年まで、アレナスはハバナ大学に通い、農地改革局、国立図書館、図書協会と勤務先を移していく。社会革命と平行して、性の革命も起きており、アレナスも恋人を見つける。その中には、彼をハバナの同性愛者のサブカルチャーに紹介してくれた、ペペ・マラスもいた。
革命の初期の頃は、アレナスはホモセクシュアルであると自分のアイデンティティを模索している時期で、喜びに燃えながらどちらも熱く追求していた。ビルヒリオ・ピニューラやホセ・レサマ=リマといったキューバで有名な作家とも親交を結ぶ。20歳でで処女小説、“Celestino antes del alba(Singing From the Well/夜明け前のセレスティーノ)”を書き、同書はキューバ作家芸術家連盟の小説コンクールで選外佳作に輝いた。
“Celestino antes del alba(Singing From the Well/夜明け前のセレスティーノ)”は、アレナスが母国で出版した唯一の著書になる。60年代の後半になる頃には、キューバ政府は芸術家やホモセクシュアルに対して残忍な弾圧を始めていた。作家たちは自分たちの作品を破棄し、ホモセクシュアルは一斉検挙されて収容所へ送られ、収容施設とは名ばかりの残酷な待遇を受ける。危険も顧みず、アレナスは書き続け、彼のタブーな世界を思うままに描いた。彼の2作目の小説.『めくるめ<世界』は、キューバからこっそり持ち出され、フランスで出版されメディシス賞を受賞、彼の名は一躍世界に知れ渡る。一方、当局からはカストロ政権への反逆子としての烙印を押される。それから数年というもの、政府や警察から家宅捜査をされたり、作品が没収されたり、友人まで脅されたりと、彼は容赦無い迫害を受ける結果となった。 1973年モーロ 1973年に、浜辺での口論がきっかけとなり、無実の暴行罪で訴えられ、逮捕される。彼は脱獄し、決死の覚悟でゴム・タイヤに乗って島から脱出しようと試みる。しかし失敗し、アレナスはついに逃亡者という立場になってしまった。彼は再度レーニン公園の近くで逮捕され、74年悪評高いモーロ刑務所に送られ、殺人やレイプといった一般の犯罪者とともに2年間受刑する。彼は獄中、受刑者たちが妻や恋人たちに送る手紙を代筆することで、生き延びる。それを理由に、自分自身の執筆に必要な紙と鉛筆を確保することができたのである。 しかし、自分の作品をこっそり刑務所から出そうとした企ては無惨にも発覚してしまい、ひどい仕打ちを受ける。作品を破棄するか、地球上から消えるかという選択を前に、アレナスは前者を選んだ。 モーロ刑務所から出たアレナスは、住む場所のない受賞作家であった。友人のひとりが彼のためにホテルに1室を見つけ、そこでアレナスは生涯を通じて大親友となるラサロ・ゴメス・カリレスと出逢うことになる。 1980年NY 1980年カストロは、同性愛者、精神病患者、犯罪者がマリエル港から出国するのを許可する。パスポートを変更しアレナスも母国を離れる。ニューヨークに落ちつき、亡命者としての生活が始まる。それは金も国籍も失った生活ではあったが、彼の人生と執筆への貪欲さはまだ激しく、衰えることを知らなかった。エイズにかかってからは、進行中の作品を完成させるまでは死ねないと、壮絶な死との闘いを迎えた。1990年に生涯を終えるまでに、アレナスは反カストロ運動を展開する一方で実に数多<の短編、詩、エッセイ、戯曲を書き上げた。アレナスの回想記『夜になるまえに』が1993年に英語で出版され、ニューヨーク・タイムズ・ブックレビューより年間最優秀図書に選ばれた。 1988年には、ホルヘ・カマチョとともに、このままカストロを国の指導者として存続させるか否かの判断はキューバの人民に委ねるべきだとし、無記名で秘密投票の国民投票を求めるフィデル・カストロ宛の手紙を世界に公開した。8名のノーベル賞受賞者を含む163名の世界中の名だたるアーティスト、作家、俳優たちが署名したその書簡は、新聞や雑誌に掲載された。その数週間後、アメリカの上院議員28名による同様の手紙がカストロ宛に送られ、それに続いて議会の47名からも同様の打診があった。しかしカストロは、この国民投票への要求を無視した。 1990年マンハッタン 12月7日 鎮痛剤の多量摂取により自殺

スタッフ

監督:ジュリアン・シュナーベル
プロデューサー:ジョン・キリク
脚本:カニンガム・オキーフ、ラサロ・ゴメス・カリレス、ジュリアン・ジュナーベル
撮影監督:ハビエル・ベレス・クロベ、ギジェルモ・ロサス
フロダクション・デザイナー:サルパトール・バーラ
編集:マイケル・ベレンバウム
共同プロデューサー:マティアス・アーレンバーグ
コスチューム・デザイナ:マリエステラ・フェルナンデス
音楽:カーター・パウェル
特別挿入曲:ルー・リード&ローリー・アンダーソン

キャスト

レイナルド・アレナス:ハビエル・バルデム
ラサロ・コメス・カリレス:オリヴィエ・マルティネス
ヘベ・マラス:アンドレア・ディ・ステファノ
ビクトル中尉:ジョニー・デップ
クコ・サンチェス:ショーン・ペン
エベルト・ソリーシャ・オチョア:マイケル・ウィンコット
フイナ・コレア:ナジャ・ニンリ
ヒルヒリオ・ヒニェーラ:エクトル・バベンコ
アレナスの母:オラッツ・口ベス・ガルメンディア
10代のレイナルド:ヴィトマリア・シュナーベル

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