原題:The Face of an Angel

イタリア犯罪史上最も国際的な注目を浴びた、英国人女子留学生殺害事件。 事件の“闇”に切り込む、映画監督トーマス。 彼が「映画」で伝えたかった、もうひとつの≪真実≫とは—。

2014年/イギリス・イタリア・スペイン合作/シネマスコープ/カラー/101分/字幕翻訳:松浦美奈/R15+ 配給:ブロードメディア・スタジオ

2015年9月5日、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で順次公開

(c)ANGEL FACE FILMS LIMITED / BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2014

公開初日 2015/09/05

配給会社名 0551

解説


世界的な一大スキャンダルと化した女子留学生殺害事件
その狂騒と闇の彼方に葬られた大切な〈真実〉とは?

 2007年11月2日、イタリアのペルージャにある共同フラットの一室で、メレディス・カーチャーというイギリス人留学生の他殺体が発見された。まもなく警察に逮捕されたのは、ルームメイトのアメリカ人留学生アマンダ・ノックスとその恋人のイタリア人男性。しかし事件は“一件落着”するどころか、捜査関係者さえも予想のつかない展開を見せていく。殺人容疑者アマンダが若く美しい女性だったため、地元イタリアのみならず米英のメディアの報道合戦が過熱化。セックスやドラッグが絡んだ事件の背景が誇張して伝えられ、アマンダや被害者のプライベートの情報がネット上に拡散するなど、事件の本質とはかけ離れたさまざまな問題が噴出した。さらに捜査上のミス、決定的な証拠や動機の欠如といった複数の要因により、裁判の判決が二転三転したことも混乱に拍車をかけた。

 かくしてイタリア犯罪史上最も国際的な注目を浴びた事件のひとつとなったこの実話“アマンダ・ノックス事件”に、一連のセンセーショナリズムとはまったく異なる視点で興味を抱いたフィルムメーカーがいた。『ひかりのまち』『イン・ディス・ワールド』『いとしきエブリデイ』といった多彩なジャンルの快作を放ち、近作『イタリアは呼んでいる』を日本で大ヒットさせたマイケル・ウィンターボトム監督である。

 すでに“アマンダ・ノックス事件”に関しては数多くのノンフィクションやドキュメンタリーが発表されており、ウィンターボトム監督の狙いは再現フィルム的なクライム・スリラーや真犯人を裁くためのミステリー映画を作ることではなかった。このうえなく惨たらしく悲劇的な殺人事件が、ふたりの若い女性を主人公にした昼メロ調のジェットコースター・ドラマに仕立てられ、大衆に消費されていったのはなぜなのか。イギリスを代表する名匠はそんなメディアの姿勢に疑問を投げかけながら、混迷した事件の闇の中に独自のヒューマンな“真実”を見出し、観る者の心を揺さぶる重層的な映画を完成させた。

実際の事件から登場人物の名前や舞台となる街を変更したウィンターボトム監督は、映画監督トーマスという架空の主人公を創造し、ドキュメンタリー的な題材とフィクションの手法を大胆に融合。劇中劇や幻想シーンの挿入、詩人ダンテの代表作である「神曲」「新生」の引用によって、奥行きのある映像世界を構築した。中世の面影を色濃く残す古都シエナの風光明媚な魅力と、迷宮的な街の構造を生かしたロケ撮影の妙も際立っている。

 そしてウィンターボトム監督が、本作を通して探求したのが“愛”や“尊厳”という根源的なテーマである。若くして命を奪われた被害者と遺族の悲しみに目を向けるとともに、心のよりどころを求めて苦悩するトーマスと愛娘の関係を描出。実際の事件の被告となったアマンダ・ノックスは人目を引く美貌の持ち主ゆえに“天使”とも呼ばれたが、ウィンターボトム監督は観客それぞれがかけがえのない愛する者=“天使”に思いを馳せずにいられなくなるエモーショナルな作品を紡ぎ上げた。

 監督が少なからず自身の心情を投影したであろう主人公トーマスを繊細に演じたのは、『ラッシュ/プライドと友情』のニキ・ラウダ役が記憶に新しいダニエル・ブリュール。『アンダーワールド』シリーズのようなアクション大作から良質なドラマまで幅広く活躍するケイト・ベッキンセイルが、トーマスのリサーチに協力するジャーナリストに扮している。また世界的なトップモデルのカーラ・デルヴィーニュが、窮地に陥ったトーマスを救う女子大生メラニー役で出演。本作の“希望”を象徴する重要なキャラクターをしなやかに体現し、本作で本格的な長編映画デビューを飾った。

ストーリー




イタリアの古都を舞台に大胆な視点で実話を映画化した
名匠マイケル・ウィンターボトムの新たなる挑戦

 2011年、イタリア・トスカーナ州シエナの街は、ある裁判の話題で持ちきりだった。4年前にイギリス人留学生エリザベスが殺害され、世界的な関心を呼んだ事件の控訴審が始まろうとしているのだ。この事件の映画化をオファーされた気鋭の監督トーマス・ラングは、リサーチのため現地に乗り込むが、そこで彼が目の当たりにしたのは大衆向けに扇情的な報道を繰り返すメディアの実態だった。はたして被告のセクシーなアメリカ人留学生ジェシカは、本当にエリザベスを殺したのか。その真偽が不確かな状況のもと、創作上の迷いに苦しむトーマスは、天真爛漫な女子学生メラニーの励ましに心癒やされ、被害者エリザベスとその遺族に寄り添った映画を作ろうと決意する。やがてその試みは、離婚した妻との間で愛娘の親権を争っているトーマス自身の行き詰まった人生にも変化をもたらすのだった……。

スタッフ

監督:マイケル・ウィンターボトム
製作:メリッサ・パーメンター
撮影:ヒューバート・タクザノウスキー
美術:カーリー・レディン
衣装:ダニエラ・チャンチョ
編集:マーク・リチャードソン
音楽:ハリー・エスコット

キャスト

ダニエル・ブリュール
ケイト・ベッキンセイル
カーラ・デルヴィーニュ

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