原題:Man in Love

2014年/韓国/カラー/120分 配給:アルシネテラン

2015年10月02日よりDVDリリース 2015年4月4日公開

(C) 2013 NEXT ENTERTAINMENT WORLD Inc. & SANAI PICTURES Co. Ltd. All Rights Reserved.

公開初日 2015/04/04

配給会社名 0013

解説


男は40年間、自分の思い通り好き勝手に生きてきた。これからも、何ものにも束縛されることなく、勝手気ままに生きるつもりだった。だが、ある日、思いがけず彼女に出会ってしまった。彼女をひと目見た瞬間、雷に撃たれたかのように、恋に落ちてしまう男。それは、男にとって、人生でたった1度の、最初で最後の恋だった。
『傷だらけのふたり』は、そんな無骨な男の、つたなくも一途な愛と、その愛によって手繰り寄せられる家族の絆や友情の物語だ。韓国では、2014年1月22日に公開され、観客動員数累計200万人のスマッシュヒットを記録。日本でも、〈SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014〉長編コンペティション部門で正式上映され、観客の感涙を大いに喚起した。素朴だが人間味にあふれ、眼を潤ませながらも、思わず笑みがこぼれるような、心を熱く揺すぶる珠玉のラブストーリーである。

高利貸しの借金取立てを生業とするテイルは、粗野で喧嘩っ早い反面、情に脆く案外お人好しの男だ。ある日、昏睡状態に陥った男の借金を取立てるために、病院を訪れたテイルは、そこで、甲斐甲斐しく父親の看病をする女性ホジョンと出会う。成行きから、娘のホジョンに借金の肩代わりを強いるテイルだったが、内心では彼女にひと目惚れしてしまう。何とかホジョンの気を引きたいテイルは、毎日1時間、自分とデートすれば借金を帳消しにしてもいいと持ちかける。最初は嫌々応じるホジョンだったが、ぎごちない逢瀬を重ねるうちに、テイルの意外な根の優しさに触れ、徐々に心を開いていく。

テイルを演じるのは、男の純愛を体現しきった『ユア・マイ・サンシャイン』(05)と、犯罪組織のN0.2を鮮烈に演じた『新しき世界』(13)で、2度の青龍映画賞主演男優賞に輝いたファン・ジョンミン。ノワールな作品からメロドラマ、コメディまで、様々な役を演じ分ける、幅広い演技力に定評のある実力派俳優だ。本作でも、甲斐性のないダメ男で、一度キレたら手のつけようのない乱暴者。一方では人情に厚く、口下手で愛に疎い分、誰よりもピュアで思いやりのあるテイルを、一瞬にして変化する豊かな表情で、リアルに活き活きと熱演。何より、彼の目からあふれ出すせつなくも愛しい男の涙に、誰もが胸を連打されることだろう。
ホジョンに扮するのは、溌剌としたヒロインを好演したドラマ「がんばれ!クムスン」(05)や、運命に翻弄されるヒロインを毅然とした美貌で演じた歴史ドラマ大作「朱蒙(チュモン)」(06〜07)などで、国民的人気を博すハン・ヘジンである。銀行の窓口係の仕事のかたわら、父親の看病に勤しむ地味で健気な女性ホジョン。彼女の生活に、いきなり土足で踏み込んできたチンピラ、テイルを初めは嫌悪しながら、いつしか心を寄せていく女心の機微を、些細な仕草や目線の移ろいで、キメ細やかに表現。彼女の透明感のあるナチュラルな美しさが、映画にある種の気品を与えている。

2人を取り巻く登場人物たちも目が離せない。月利49%という高利の金融会社テサン実業の社長であり、テイルの旧友でもあるドゥチョル役には、大ヒット作『7番房の奇跡』(12)の寛大な模範囚が記憶に新しいチョン・マンシク。非情だが一本筋の通った裏社会の人間を演じ、独特の存在感を放つ。理髪店を営むテイルの兄ヨンイルを演じるのは、舞台でキャリアを積み、ドラマ「ファントム」(12)で一気に知名度を上げたクァク・ドウォンだ。警察沙汰を起こしてばかりいる弟に嫌気がさし、兄弟喧嘩が絶えないながら、実は誰より弟を気遣う兄の心情を緩急自在な演技で体現する。その妻でテイルと高校時代からの友人ミヨン役には、ドラマを中心に活躍する美人女優キム・ヘウン。夫や義弟に向ける辛辣な言葉もどこか憎めない、気丈でラブリーな妻ミヨンを自然体で演じ、夫婦の絆を際立たせた。さらに、叔父のテイルに友だちのように接し懐く、現代っ娘の姪ソンジを、弾ける若さでヴイヴィッドに演じきったカン・ミナ。ともすればバラバラになりそうな家族を1つにまとめる役回りを、気負いなく見せて清々しい。そして、70歳を越え、認知症が危ぶまれるテイルの父を演じた、ベテラン俳優ナム・イル。不肖の息子テイルと、その息子が唯一愛した女性ホジョンに向ける、寡黙ながらも深い情愛が、しっとりとした情感を醸し出し、温かな余韻を残す。ちなみに、理髪店で髭剃りの準備をするミヨンのお尻をしつこく触り、ヨンイルとテイル相手にひと騒動起こす男性客は、『新しき世界』でファン・ジョンミンと対抗する犯罪組織のNo.3を演じたパク・ソンウンである。

メガホンを取るのは、本作で長編映画デビューを飾ったハン・ドンウク監督である。10代で撮影現場に入り、照明部や演出部、助監督など、15年近くスタッフとして実績を積んできた若き中堅だ。ハン監督が助監督に就いた『生き残るための3つの取引』(10)『新しき世界』(13)に出演していた俳優ファン・ジョンミンと、「いつか濃厚なラブストーリーを撮ろう」という話が持ち上がり、彼の推薦により監督に抜擢されて、本作の企画がスタート。撮影監督ユ・オク、照明のペ・イリョク、プロダクション・デザイナーのチョ・ファソンほか、『新しき世界』を担った制作スタッフが再結集し、ハン監督のデビュー作を支えている。 これまで、男臭い映画との関わりの多かったハン監督だが、そういう荒々しい世界に生きる男でも、誰かと恋愛することはあるはずと思い至り、トレンディに流されない愛の普遍性を描こうとしたという。また、リアリティを重視するために、日常のディテールにこだわり、頻出する食事シーンでも、そのメニューや食べ方が、テイルとホジョンの関係性によって微妙に変化。父親の葬儀の後、テイルの前で骨付きの鶏肉を手づかみで食べるホジョンの気持ちは、その日を境に急速にテイルに傾いていくのだ。あるいは、2人の親愛の情をさりげなく表す“オナラ”。可笑しくも微笑ましい、現実味のある日常風景である。加えて、照明へのこだわりも徹底。その色合いや色調で、主人公たちの内面や、今までとは違う側面を引き出すために、編集段階まで色の調整に気を配った。そうしたハン監督の緻密でリアルな語り口と、主人公やその家族を見守る慈愛のこもった眼差しが、誰もが共感を抱ける、普遍的な愛のドラマを創り出したと言えるだろう。

ところで、物語の舞台となる群山(クンサン)市は、ハン監督いわく「もう1人の主人公」である。韓国メロドラマの傑作『八月のクリスマス』(98)の舞台ともなったこの街は、韓国では珍しく、日本統治時代の日本家屋が残る湾岸都市。母親の故郷であり、両親の恋愛の場所でもあったクンサン市が大好きだと語るハン監督は、この街に1、2ヵ月住み込んで、ソウルを舞台にした元の脚本を脚色。並行してロケハンにも力を入れ、この街独特の情緒や印象を映画に取り込んでいく。撮影も、セットは一切使わず、クンサン市でオールロケを敢行。大都会ソウルの喧騒から離れた、ゆったりとした時間の流れや、少々停滞感の漂うノスタルジックな雰囲気が、テイルとホジョンのエモーショナルで繊細な恋愛模様を彩り、絶妙な効果を発揮している。

ストーリー




スタッフ

監督: ハン・ドンウク
製作: パク・ミンジョン
脚本: ユ・ガビョル

キャスト

ファン・ジョンミン
ハン・ヘジン
クワァク・ドゥオン
チョン・マンシク
キム・ヘウン
ナム・イル

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