原題:The Iron Lady

第77回ニューヨーク映画批評家協会賞 主演女優賞受賞!!

第84回米国アカデミー賞【主演女優賞】受賞!!

2011年/イギリス/カラー/105分/ 配給:ギャガ

2012年09月04日よりDVDリリース 2012年3月16日(金)より、TOHOシネマズ日劇ほかにて全国公開

(C)2011 Pathé Productions Limited , Channel Four Television Corporation and The British Film Institute.

公開初日 2012/03/16

配給会社名 0025

解説


世界を変えたのは、妻であり、母であり、ひとりの女性だった。
アカデミー賞®女優メリル・ストリープが全身全霊で挑む、
〈鉄の女〉マーガレット・サッチャーの真実。

 2008年、世界に衝撃が走った。西洋で史上初めて一国のトップに立った女性、元英国首相マーガレット・サッチャー。“鉄の女”のニックネームにふさわしい、強く、厳しいリーダーが、娘の回顧録で認知症に苦しんでいることが発表されたのだ。
 「臆病な男たちが言えないことを、誰かが言わなければならない」男社会で、男たちを牛耳り、数々の政策を導入した彼女は、英国を永遠に変える。フォークランド紛争での勝利、労働組合制度の改革、低迷する経済の立て直し、3度の総選挙を乗り切り、一時は73%の支持率を誇り、英国の、いや世界の歴史に名を残した。だが、そんな彼女にも、妻、そして母としての顔があり、老いが訪れていたのだった─。
 認知症を患い、時には夫がすでに他界したことも忘れるようになった晩年、サッチャーは自分の過去を振り返る。雑貨商の娘として育った少女時代。市長まで務めた父から受けた大きな影響。優しく、ユーモアのセンスあふれる青年デニス・サッチャーからのプロポーズ。保守党党首当選、そして首相就任。国民から愛され、嫌われ、多くのことを達成した一方、テロにより身の危険を感じたり、側近の死を目の当たりにもした。パワーを満喫していた頃には考えなかったことを、彼女は今にしてふと考え、幻想の夫に問いかける。「あなたは幸せだった?」と。

 現在も生きている有名な人物の人生を映画化するというのは、そもそも非常に大胆な企画。しかも、現代の映画界が誇る最高の女優メリル・ストリープがサッチャーを演じるというのだから、注目を浴びないわけはない。外から寄せられる高い期待を裏切らず、アメリカ人のストリープは微妙なイギリス英語のアクセントを確実にこなし、若い時から晩年まで幅広い時期にわたって、このひとりの人物を見事に演じてみせた。アカデミー賞ノミネーション最多17回という前人未到の記録を持ち、受賞も2度しているストリープが、この作品でついに3度目を獲得するかという声が、すでにあちこちから上がっている。対する夫役デニスを演じるのは、同じくアカデミー賞俳優ジム・ブロードベント。
 天才女優がもつ潜在性をすべて引き出してみせたのは、ストリープ主演の『マンマ・ミーア!』を、世界的大ヒットに導いた女流監督フィリダ・ロイド。オペラや舞台で知られてきた彼女は、今回、まったく新しい領域で改めて才能を発揮してみせた。脚本は、アビ・モーガン。舞台で長い経験をもつが、今年の賞レースで話題騒然の映画『SHAME─シェイム─』の脚本も手がけた、今注目の女性ライターだ。女性フィルムメーカーたちが語るこの物語は、決して政治家の伝記ではない。この映画は、ラブストーリーでもあり、一番高いところまで上りつめた人間がパワーを失うというのはどういうことなのかを描く「女性版リア王」でもあるのだ。
 人はみな、ひとりで生まれてきて、ひとりで死んでいく。どんな偉業を達成した人物であっても、それだけは変わらない。“鉄の女”も、今、その孤独に気づく。誇り高き女が心の中で流す涙に、我々も思わず涙せずにはいられない。感動の人間ドラマが、またひとつ誕生した。

ストーリー







「教えて。あなたは幸せだった?」
マーガレット・サッチャー、86歳。最愛の夫亡き今振り返る、
政治家としての栄光と挫折、そのために犠牲にしたかもしれない愛を—。

 夫は他界、子供たちは独立し、ひとり静かに晩年を送るマーガレット・サッチャー。夫の遺品を整理する決心がつかないマーガレットは、8年目にして、ついにある決意をした。だが、夫デニスは、今もまだマーガレットの幻想の中に存在する。時には朝食の食卓に現れたり、子供たちの昔のビデオを一緒に見たり、彼はいつだってそばにいるのだ。自叙伝に旧姓でサインをしてしまったマーガレットは、ふと過去を振り返る。夫と出会う前、夫との出会い、結婚生活、そして、“鉄の女”の名で知られた政治家としての人生を─。
 マーガレット・ロバーツは、小さな雑貨店を営むアルフレッド・ロバーツの娘に生まれる。町民議会で演説する父の姿を見て育ったマーガレットは、オックスフォード大学を卒業すると、政治家を目指す。だが、下院議員選挙に立候補し、落選。落ち込んでいる彼女に声をかけたのは、かねてから彼女に好意をもっていた青年デニス・サッチャーだった。突然のプロポーズに驚くマーガレット。彼のことは愛しているが、「料理や育児や掃除だけじゃなく、人生にはもっと大切なことがある。私は食器を洗って一生を送りたくはない」と、専業主婦にはならない意志をはっきりと告げる彼女に、デニスは「だから君と結婚したいんだよ」と優しく微笑む。
 男の子と女の子の双子に恵まれ、幸せな家庭を築くマーガレット。政治へも意欲を注ぎ続ける彼女は、ついに下院議員に当選した。国会議事堂に向けて車を出発させる母を、幼い子供たちは悲しそうに見送る。国会議事堂は、文字通りの男社会だった。スーツを着た男性の中で、ただひとり、パンプス姿。だが、彼女は決して負けてはいない。やがて教育科学相に任命されたマーガレットは、ヒース内閣が総選挙で破れると、保守党党首選への出馬を決意。朝食を作っている時にそう告げられて、デニスも娘のキャロルも複雑な気持ちを隠せない。
 「私はたぶん当選しない。でも、立候補することで党に揺さぶりをかけたい」そう決意したマーガレットに党内のエアリー・ニーブ議員らが力を貸し、髪型から発声法まで研究。成果が実り、党首に当選する。79年には保守党を総選挙で勝利に導き、英国史上初の女性首相が誕生した。
 だが、彼女を待ち受ける環境は、決して温かくなかった。英国は、1934年以来の高い失業率と不況に苦しんでいる。にも関わらず、マーガレットは支出削減政策を推進し、反感を買う。一方で、IRAはテロ攻撃を仕掛けてくる。そんな時、アルゼンチンがフォークランド諸島に侵攻した。国内外の慎重派を押し切って、マーガレットはすぐにイギリス軍を出動させる。戦死者の名前が届き始めると、マーガレットは遺族に自ら手紙を書いた。母である彼女には、子供を亡くした親の気持ちが真から理解できるのだ。
 英軍は、見事勝利をおさめ、英国の嫌われ者だったマーガレットは、たちまちカリスマ的リーダーとなる。経済の立て直しも軌道にのり、3度目の総選挙も勝ち抜き、怖いものなしのマーガレットは、個人の収入に関わらず課せられる税金「人頭税」を提案、国民の怒りと、党内の分裂を招く。そんな状況を受けて、彼女の理解者だった副首相ジェフリー・ハウが辞任。マーガレット自身はまだまだ続投する気でいるが、党内の大臣たちが次々と「あなたは勝てない」と、聞きたくない事実を告げてくる。「ただ、世界をよくしたいと思った」“鉄の女”にも、引き時がやって来たのだ。
 現在のロンドン。過去の栄光と挫折を思い返しながら、夫・デニスのスーツを手にとる。そして初めてあるひとつの疑問が彼女の心をよぎる。「あなたは、幸せだった?」と─。

スタッフ

監督:フィリダ・ロイド
製作:ダミアン・ジョーンズ
脚本:アビ・モーガン
美術:サイモン・エリオット
撮影:エリオット・デイビス
編集:ジャスティン・ライト
衣装:コンソラータ・ボイル

キャスト

メリル・ストリープ
ハリー・ロイド
ジム・ブロードベント
アンソニー・ヘッド
リチャード・E・グラント
ロジャー・アラム
スーザン・ブラウン
オリビア・コールマン
ニック・ダニング
ジュリアン・ワダム
アレクサンドラ・ローチ
マイケル・ペニントン
デビッド・ウェストヘッド
リチャード・ディクソン
ヒュー・ロス

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