原題:CUT

第68回ヴェネチア国際映画祭 オリゾンティ・コンペティション部門オープニング作品 第36回トロント国際映画祭正式出品 第16回釜山国際映画祭正式出品

2011年/日本/カラー/132分/ 配給:ビターズ・エンド

2011年12月17日、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー!

© CUT LLC 2011

公開初日 2011/12/17

配給会社名 0071

解説


映画のために死ね
秀二は映画監督。兄が遺した莫大な借金を返すため、陽子とヒロシを巻き込みながら、殴られ屋をしている。殴られるたびに名作映画を想い浮かべる秀二。何度殴られても、映画への愛情が秀二をふたたび立ち上がらせる。何故、そこまでできるのか。この試練を乗り越えることで愛する映画を救おうとしているのだろうか……。

間違いなく、今年のヴェネチア映画祭で最も意義のある一本だ。
——Screen Daily

アンリ・ラングロア meets 『レザボア・ドックス』! 史上、最も独創的な映画。
——Positif

傑作。その言葉だけで十分だ。
——アルベルト・バルベラ(トリノ国立映画美術館館長/元ヴェネチア国際映画祭ディレクター)

美しい! 考え抜かれ、編集も見事。
——フレデリック・ワイズマン(映画監督)

ヴェネチア熱狂!! 止まらないスタンディングオベーション!
第68回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門のオープニング作品としてワールド・プレミア上映され、10分に及ぶスタンディングオベーションで熱狂的に迎えられた『CUT』。上映に立ち会った主演の西島秀俊は「満席のお客さんに受け入れてもらえて感無量」と感慨を隠さず、常盤貴子も「賛辞の言葉をいただけ、本当にうれしい」と喜びを語った。そして、オープニング上映の噂を聞きつけた映画ファンが殺到し、3回目の上映では100人以上が溢れ、急きょ4度目の上映を組むという異例の事態になった。
映画祭のプログラマー、メディアも『CUT』の熱気に注目し、様々な媒体で賞賛記事が並ぶとともに、映画の真実を問う本作の内容に論議を呼び話題となった。

名作の数々に彩られた映画への愛情に溢れた映画『CUT』 本作が現在の映画界に一石を投じる!
秀二は愛する映画を守るため、世界にたった一人で立ち向かう。まるで『タクシー・ドライバー』のトラヴィスのように、『許されざる者』のマニーのように。“この世界を正すため”、世界に戦いを挑むのだ。自分が信じる“映画”のために命をも投げ出す秀二のように、自分が愛するなにかのためにここまでできるだろうか。
小津安二郎、溝口健二、新藤兼人、黒澤明、ロベール・ブレッソン、バスター・キートン、ジョン・フォード、オーソン・ウェルズといった巨匠たちの作品へのリスペクトを込めつつ、数多くの名作を引用し、現在の日本が、世界が失ってしまったかもしれない「映画愛」をとり戻すための物語。
主人公・秀二はトラメガで叫ぶ。「映画は真に娯楽であり、芸術である!」。いま、その“映画の真実”が崩れ去ろうとしている。それを食い止めるため、映画界に一石を投じるのが『CUT』なのだ。

主演、西島秀俊とアミール・ナデリ監督 運命の出会いが生んだ奇跡の作品
ナント三大陸映画祭で2度のグランプリに輝いたほか、カンヌ、ヴェネチアなどの国際映画祭で作品を発表し続けているアミール・ナデリ。イラン出身でキアロスタミ作品に脚本を提供するなど、イラン映画界のニューウェーブとして注目された後、現在はNYに拠点を移して活躍している世界的名匠である。
秀二を演じるのは映画・テレビドラマと活躍が目覚ましい西島秀俊。自身も熱心な映画ファンである西島が2005年のTOKYO FILMeXで審査員としてナデリ監督と出会ったことからこの企画は始動した。元から温めていた企画であった『CUT』を演じるにふさわしい俳優との出会いにナデリ監督は興奮し、「おまえは俺と映画を作る運命にある!」と告げた。その監督の期待に西島は全身全霊をかけて応え、その結果に「僕の俳優人生は『CUT』前と『CUT』後で変わる」とまで言いきる。
秀二をとりまく人々を演じる俳優にも豪華な顔ぶれが揃った。日本映画のみならず海外作品、テレビドラマと輝き続ける常盤貴子がヤクザの世界で働く女・陽子に扮しこれまでのイメージを一新、日本映画に不可欠な俳優・笹野高史が秀二を見守るヤクザ・ヒロシを熱演する。また、でんでん、菅田俊、鈴木卓爾ら、いぶし銀の名優たちが脇を固め、作品に奥行きを与えている。

ストーリー








秀二(西島秀俊)はいつも兄の真吾からお金を借りて、映画を撮っている。秀二の映画が陽の目を見ることはほとんどなかったが、秀二は自分の映画と映画の持つ力を信じていた。最近の映画館ではなかなか観られないような映画を自主上映したり、“いわゆるエンターテインメント映画だけではなく、もっとアート映画を観るように”街中で演説をして警察に追われたり、同じく監督を志すナカミチ(鈴木卓爾)と映画談議をする日々。

ある日、真吾が借金のトラブルで死んだという知らせを受ける。ヤクザの世界で働いていた真吾は秀二のためにヤクザ事務所から金を借り、それがもとでトラブルになり、命を落としてしまったのだ。何も知らずにいた自分を責める秀二。兄のボスである正木(菅田俊)から、真吾が遺した借金額が1,254万円であること、それを2週間以内に返済しなくてはいけないことを告げられ、秀二は途方に暮れる。

借金を返すあてもなく、兄が死んだヤクザ事務所を離れられない秀二。そこへ現れた正木の弟、高垣(でんでん)が秀二に「拳銃をくわえて引き金を引いたら金をやる」とからかい半分に持ちかける。引き金を引く秀二だが、銃に弾は入っておらず一命を取り留めた。それをきっかけに秀二はヤクザ相手に体を張って金を稼ぐこと——殴られ屋をすることで借金を返す決心をする。殴られる場所は兄が死んだ場所でなければ、兄の痛みを一緒に感じなければ殴られる意味がない、と考えた秀二は、ヤクザ相手に仕事をする陽子(常盤貴子)と組員のひとりであるヒロシ(笹野高史)を巻き込みながら殴られ屋を始める。

殴られるたびに自分の愛する映画監督たちが撮った作品を想い浮かべる秀二。何度殴られても、映画への愛情が秀二を支える。しかし、莫大な借金を簡単に返せるわけもない。追い打ちをかけるように、「出ていけ」と言われているにも関わらずヤクザ事務所で殴られ屋を続けていたため、ショバ代としてさらに金をむしり取られる秀二。それでも、この場所にこだわり続ける。

カネはもはや問題ではなくなっていた。
苦しさに耐えること、殴られても立ち上がること——それはどんなに汚されても、まだ光を失わない“映画”そのものの再生を信じているかのようだ。
秀二はすでに死を覚悟しているのだろうか。それとも、この試練に立ち向かうことで愛する映画を救おうとしているのだろうか……。

スタッフ

監督・脚本・編集:アミール・ナデリ
脚本:アボウ・ファルマン
共同脚本:青山真治、田澤裕一

撮影:橋本桂二
照明:石田健司
録音:小川 武
サウンドエディター:横山昌吾
美術:磯見俊裕
特殊メイク:梅沢壮一
プロデューサー:エリック・ニアリ、エンギン・イェニドゥンヤ、レジス・アルノー
制作:定井勇二、ショーレ・ゴルパリアン
共同プロデューサー:ビンセン・ラルニコル、キム・ジソク、デビット・コッタキオ
スペシャル・アドバイザー:黒沢 清、市山尚三
企画・製作:東京ストーリー
プロダクション協力:マッチポイント
制作協力・配給:ビターズ・エンド

キャスト

西島秀俊

常盤貴子
菅田 俊
でんでん
鈴木卓爾

笹野高史

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