原題:Eccentricities of a Blond Hair Girl

2009 年ベルリン国際映画祭出品

2009年4月30日ポルトガル公開

2009 年/ポルトガル・フランス・スペイン合作ポルトガル映画/ 全4 巻、1,736m、1x1.66、DOLBY DIGITAL、64 分、ポルトガル語/ 日本語字幕=齋藤敦子、柴田駿、字幕協力・資料監修=國安真奈 配給:フランス映画社

2010年10月9日(土)より、日比谷 TOHOシネマズ シャンテにて公開、全国順次

(C)フランス映画社 (C)FILMES DO TEJO Ⅱ、LES FILMS DE L’APRES-MIDI、EDDIE SAETA SA、2009

公開初日 2010/10/09

配給会社名 0094

解説


「ブロンド少女は過激に美しく」は1908年12月11日生まれのマノエル・デ・オリヴェイラが撮影中に100才の誕生日を迎えた映画だ。長編劇映画を100才で作った!とギネスブック的な驚きの報道が先行し、“現役最高齢の映画作家”という称号が強調されたが、実際に、09年2月のベルリン映画祭に登場した作品を見た人々はそんな驚きを超えた感動的な衝撃を受けた。
映画そのものが、全編、若い監督たちがおよびもつかない、過激なまでの若々しさ、みずみずしさ、魅力をたたえて疾走する傑作ではないか。批評家たちは“過激なエレガンス”と驚嘆し、オリヴェイラの“最も色っぽい、最もおおらかな、おそらく最も美しい傑作”と圧倒的な賛辞をおくった。
しかも、撮影開始が2008年11月下旬なのにほぼ2ヶ月後のベルリン映画祭に完成して出品している、そのスピードが驚きだ。21世紀の若い監督たちが追いつけないスピードではないか。この驚異的なスピードは、2010年のさらなる最新作『アンジェリカ(仮題、2011年フランス映画社配給で公開予定)』でも同様で、撮影開始が2010年2月22日で、5月14日にはカンヌ映画祭で完成上映している。謎はなにか。
撮影のサビーヌ・ランスマンは“撮影時にいつもイメージが完全に明確にできている”と感嘆しつつ、しかもそれが完成度が完璧な仕上がりなのだから“奇跡だ”と言う。

「ブロンド少女は過激に美しく」はポルトガルの文豪エサ・デ・ケイロスが1873年に書いた短編小説<ブロンド少女の特異さ>が原作だ。
オリヴェイラ自身が脚色して舞台は現代のポルトガルに移している。
原作の物語をベースに、リスボン発の列車で主人公マカリオが、“妻にも 友にも言えないような話は 見知らぬ人に話すべし”という言葉とともに隣の席の夫人に語りかける列車での構成を加え、詩人ペソアの言葉を全編にちりばめるなど、オリヴェイラ独特のしかけは随所で、アイロニーとユーモア豊かに爆発していく。一方、デ・ケイロスの原作からの言葉は一字一句改変せずに映画にするという、離れ業もさりげなく軽々とやりとげている快作だ。
リスボンから南の保養地アルガルヴに向かう列車。マカリオは隣りあわせた夫人に“話して楽になりたいんです”と言い、“どうぞ、話して楽になって”と夫人。マカリオは衝撃的な体験を語りはじめる。彼は叔父フランシスコに雇われて洋品店の2階で会計士として仂きはじめた。リスボンの街が暮れなずんで、夕べを告げる鐘が鳴る頃、通りの向かいの家に窓が見え、白いカーテンが風にそよぐ。窓に、扇を手にしたブロンドの少女があらわれる。その少女ルイザに、マカリオはゲーテの詩にあるような恋に落ちた。やがて少女に出会い、結婚の許しを得ようとするまでに進展するが、叔父フランシスコは頑として結婚を許さず、マカリオはクビになって、ルイザへの思いでさまよう・・・。
主人公マカリオを演じるのは監督オリヴェイラの孫であるリカルド・トレパ。初の主演で、爽やかな甘い魅力でみごとな輝きだ。彼の話を優雅にユーモラスに受け答えする夫人役は「アブラハム渓谷」いらいオリヴェイラ映画でミューズの存在のレオノール・シルヴェイラ。マカリオの叔父役に謹厳な長い顔でおなじみのディオゴ・ドリア。ルイザの母親ヴィラサ夫人役はオリヴェイラ映画で長年スクリプターをつとめつつ時に出演もするジュリア・ブイゼル。本人として登場してペソアの詩の朗誦で感動を呼ぶ名優ルイス=ミゲル・シントラ。オリヴェイラ映画おなじみの顔ぶれに、ブロンド少女ルイザ役は、オリヴェイラ映画初出演のカタリナ・ヴァレンシュタインだ。
スタッフは、製作が「コロンブス 永遠の海」からオリヴェイラの信頼があつい40代の新進プロデューサーのフランソワ・ダルトマールで、ポルトガル・フランス・スペイン3国の合作チーム。撮影のサビーヌ・ランスラン、美術のクリスチャン・マルティ、衣装のアデライデ=マリア・トレパ、サウンドのアンリ・マイコフ、オリヴェイラとともに編集のカトリーヌ・クラソフスキー、制作のジャック・アレックス、オリヴェイラ組の強力な常連たちだ。
音楽は、マカリオがルイザに接近するパーティーで実際に登場するハーピスト、アナ=パウラ・ミランダが演奏するドビュッシーの<アラベスク>。
「ブロンド少女は過激に美しく」はポルトガル、フランス、スペイン、イギリスほかで一般公開されてたいへん好調なヒットを飛ばしている。

ストーリー

リスボン発、南の保養地アルガルヴ方面への長距離列車。
“妻にも友にも言えないような話は、見知らぬ人に話すべし・・・”
見知らぬ婦人と隣あわせたマカリオは、自分に起きた衝撃的な事件を語る。
マカリオは会計士。叔父フランシスコが経営するリスボンの高級洋品店で、店の2階で仕事を始めた。ベランダごしに、通りの向かいの家に白いカーテンの窓が見える。
宵を告げる鐘が鳴る頃、窓辺にブロンドの少女が。手には中国風の扇。その過激なまでの美しさにマカリオは恋をした。“扇にではなく、彼女に恋したのでしょう?”と列車の婦人。
2週間後の昼間、少女が母親とともに店を訪れてくるのを見て、マカリオは店への階段を駆け下り、叔父フランシスコに厳しく叱責される。
食事どきに、叔父は、高級ハンカチーフがなくなったと言う。
数日後の朝、通りを歩く男が向かいの家の母親に親しげに挨拶しているのが見える。
男は友人だ。紹介してもらえる!とマカリオは歓喜して小躍り。
その友人を訪ねて会員制のサロンへ。19世紀の文豪エサ・デ・ケイロス(この映画の原作の作者)を記念してサラザール独裁政権当時の大物政治家が作った文学サロンだ。友人に母親の名はヴィラサ夫人、良家の母娘だと聞いて安心し、マカリオは紹介をたのみこむ。
土曜の夜、公証人の豪邸での上流層の集い。ハープでドビュッシーの<アラベスク>が奏でられている。少女ルイザはそこに美しくいた。
名優シントラがペソアの詩<羊の番人>を朗誦する。
・・・ 世界の不幸は 善意であれ悪意であれ 他人を思うことから生じる魂と天と地 それだけで充分だ
それ以上を望めば 魂や天や地を失い 不幸になる ・・・
別室でのカードゲームに、マカリオとルイザが加わる。ルイザに配られたチップが不思議なはずみで行方不明になる。

ヴィラサ夫人宅での親しい友人の集い。マカリオは招かれて、人々が去った後、夫人にルイザへの思いを打ち明け、翌朝、叔父フランシスコに結婚のゆるしを乞う。しかしフランシスコは激しく反対し、結婚したいなら今すぐ出て行けと、彼をクビにする。

クビになり、貧しい借り部屋に暮らしはじめたマカリオ。職を探すが、叔父の知り合いには次々断られて窮する。ルイザに、今は求婚できなくなったが、大きな取引があると嘘をついてなだめ、夜の河辺をさまよう。
街で、派手なカンカン帽の旧知の男から、貿易商がカーボヴェルデに行って働く男を探していると聞いて、マカリオは即座に受ける。アフリカ西端の、むかしポルトガルの植民地だった島々の国だ。仕事は過酷だろう。
マカリオは、ルイザに別れを惜しみながら出発し、彼女への愛に焦がれながら懸命に働き、一財産を築いてリスボンに帰還する。
マカリオはヴィラサ夫人を訪問し、晴れて結婚の許しを得る。“よかったこと”と列車の夫人は祝福。しかし、“それがそうでもなかったんです”・・・。
例のカンカン帽の友人は金属商を始める資金のためにとマカリオを保証人にし、不倫の恋で逐電してしまったのだ。マカリオは破産して再び借り部屋に。その借り部屋に貿易商の代理人が来て、再びカーボヴェルデに赴任する話をもちかける。悩んだあげく、マカリオは決心する。
夜、マカリオはルイザの家の前にたたずんで無言で別れを告げ、叔父フランシスコを訪ねて、カーボヴェルデに旅立つ決心を告げる。
叔父フランシスコは冷淡に応じるが、実はすべてのいきさつを知っていて、言い放つ、明日から店の2階に戻って仕事しろ、店の名におまえの名を加える、ルイザと結婚しろと。ついにルイザとの結婚をみとめてくれたのだ。
しかし、マカリオをさらなる衝撃が襲う・・・。
晴れて結婚の願いがかない、マカリオはルイザをつれて一流宝石店に。結婚指輪を選び、品の引き取りと支払を明日の正午と決めて出ようとすると、店員が立ちふさがる。マカリオにはわけがわからないが、店員は奥様がおわかりですと言う。ルイザの手のなかにダイヤの指輪が・・・。
まさかルイザが盗みをするとは。あまりの襲撃にマカリオはルイザをどなりつけ、2度と会えない別れをしてしまう。
母の家に戻ったルイザは、鳴りしきる午後の鐘の音のなかで思いにくれる。
長距離列車は、衝撃をのせて走りつづけていく・・・。

スタッフ

監督:マノエル・デ・オリヴェイラ
原作:エサ・デ・ケイロス
脚色・脚本:マノエル・デ・オリヴェイラ
撮影:サビーヌ・ランスラン
美術:クリスチャン・マルティ、ジョセ= ペドロ・ペニャ
衣装:アデライデ= マリア・トレパ
サウンド:アンリ・マイコフ
編集:マノエル・デ・オリヴェイラ、カトリーヌ・クラソフスキー
制作:ジャック・アレックス
製作:フランソワ・ダルトマール、マリア= ジョアン・マイエール、ルイス・ミニャーロ

製作= FILMES DO TEJO Ⅱ、LES FILMS DE L’APRES-MIDI、EDDIE SAETA SA

キャスト

マカリオ:リカルド・トレパ
ルイザ:カタリナ・ヴァレンシュタイン
叔父フランシスコ:ディオゴ・ドリア
ヴィラサ夫人:ジュリア・ブイゼル
列車の夫人:(特別出演) レオノール・シルヴェイラ
ルイス= ミゲル・シントラ:(特別出演) ルイス= ミゲル・シントラ
パーティーの来客の夫人:(特別出演) グロリア・デ・マトス
ハープ演奏(ドビュッシー<アラベスク>):アナ= パウラ・ミランダ
文学好きの友人:フィリペ・ヴァルガス
カンカン帽の友人:ロジェリオ・サモラ
公証人:ミゲル・セアブラ

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