原題:The New Rijksmuseum

山形国際ドキュメンタリー映画際2009 インターナショナル・コンペティション部門正式出品作品 2010年モントリオール国際芸術映画祭審査員賞授賞

オランダ/2008年/オランダ語・英語・スペイン語/カラー/デジタル/120分 配給:ユーロスペース

2011年11月23日よりDVDリリース 2010年8月21日、渋谷 ユーロスペース 他全国順次公開予定

公開初日 2010/08/21

配給会社名 0131

解説


レンブラントにフェルメール、ゴッホからモンドリアンまで、数多くの芸術家を生み出したヨーロッパ切っての芸術大国オランダ。アムステルダム国立美術館はそんな芸術大国随一の美術館であるとともに、すぐ隣に位置するゴッホ美術館と並んで旅行者が必ずと言っていいほど訪れる、いわば国にとっての大切な観光資源でもある。その国立美術館がトラブル続きの改築工事によって何年も閉館したままになるという、日本ではおよそ考えられない出来事がまさに今、アムステルダムで起こっている。その舞台裏では展示室では決して見ることのできない、超個性的な人々が繰り広げる夢と涙と笑いと本音の人間模様が繰り広げられていた。

この大騒動の全容を明らかにしたのは、これまでホロコーストなどを扱い定評のある女性監督ウケ・ホーヘンダイク。4年以上にわたり、工事に関わる400人にもおよぶ関係者への綿密な取材を敢行、異なる立場の様々な意見が絡み合いこじれていく事態を、その冷静な観察力と完璧なカメラワーク、そして絶妙な編集で鮮やかにドラマティックに明らかにしてみせた。同時に、理想主義で飄々とした館長や、それぞれに一癖も二癖もある学芸員たち、オランダの国民性にふりまわされるスペイン人建築家、声高に主張するサイクリストたちなど、美術館に関わるひとりひとりの懐に入りこみ、個性溢れる素顔とその本音を見事に引き出している。度重なるトラブルに打ちひしがれながらも各々の方法で解決の糸口を探る姿は、どこか滑稽でユーモラスでもあり、思わず共感してしまう魅力を見つけることができるだろう。その様子は美術館が威厳に満ちた単なる建造物ではなく、喜怒哀楽と美術館への愛にみちた生身の人々が創り出す、生きた空間であることを教えてくれる。

また普段見ることの出来ない美術館の裏側を見ることができるのも、この作品の大きな見どころの一つだろう。学芸員たちが展示作品をシビアに取捨選択していく過程や、修復士が技術を駆使して時を経た絵画を元の姿に蘇らせる様子、そして美術館運営や工事に関わる政治的な会議の席まで、美術館の動く仕組みをあます所なくカメラは捉えている。一方、警備員の行く先をたどれば、美術館の地階深くから人気もなく廃墟同然の展示室を通り、街を見下ろす屋根の上までまさに美術館のバックステージツアーを体験することができるのだ。

ストーリー


2004年、レンブラントの「夜警」やフェルメールの「牛乳を注ぐ女」などの数々の傑作を有するアムステルダム国立美術館の、開館以来の大規模な改築工事が始まった。館長のドナルド・デ・レーウが「市民のための美術館」を作るのだと、意気揚々と解体の始まった美術館を案内してゆく。新しい美術館の設計にあるのは、スペイン人建築家クルス&オルティス。19世紀の建築家ピエール・カイパースの建築思想を活かしながら、革新的なミュゼオロジーを実現した新美術館の設計プランに、確かな手応えを感じていた。再オープンは2008年の予定。オランダ史上最も大規模な文化施設の改築工事が始まろうとしていた。

しかしこの工事は、まさにそのスタートから市民の猛反対に悩まされることになる。地元のサイクリスト協会は美術館を貫く交通路が閉鎖されることに反発、通路の権利を主張し、建築プランの変更を求める騒々しいキャンペーンを起こした。そしてアムステルダム市南区の地区委員会はサイクリスト協会の主張を後押しする見解を示したのだ。美術館と建築家が築き上げてきたプランは市民によってあえなく却下。予期せぬ出来事にうろたえる美術館側の対応は後手にまわり、結局振り回されたのは建築家だった。以後何度も妥協を強いられることになる建築家ユニットの一人オルティスは、この状況を「これは民主主義ではない。民主主義の悪用だ」と言い放った。

スタートでつまずいた計画はその後も問題が続発し、工事そのものが中断する事態にまで発展する。崩壊した壁に、「夜警」が取り外されがらんとした展示室—。ついに美術館は廃墟のようになってしまった。
だがそこでは裏方を支える人々が、新たな美術館を着実に築き続けている。壁のひびまで覚える程美術館を愛してやまない警備員は廃墟のような建物を見守り続け、装飾家は元の美術館を設計した名建築家カイパースの息吹を蘇らせるべく丹念に内装を施していく。
そして膨大な絵画が閉じ込められた収蔵庫では、学芸員たちが新たな展示について容赦ない議論をくりひろげ、修復士たちは類いまれな集中力をもって16世紀の集団肖像画を修復していた。

それでもこじれきった状況は一向に好転せず、開館予定日は遅れるばかり。何かが起こる度に苦労と妥協を強いられる関係者は、次第にその熱意を失っていく。改築のプロジェクトリーダーと20世紀美術の学芸員は退任。建築家コンビは美術館への不信感を強めてゆき、そしてさらに驚くべき出来事が—。
今では再オープンは2013年と言われているこの計画、はたして「市民のための美術館」はどうなってしまうのかー!?

スタッフ

監督:ウケ・ホーヘンダイク
撮影:サンダー・スヌープ、グレゴール・メールマン、アドリ・スフローヴェル、パウル・コーヘン
編集:ハイス・ゼーヴェンベルヘン
録音:マーク・ウェスナー
音楽:エルコ・ヴァンデメーベルグ、クリスティアーン・ヴァンヘメルト
製作・提供:ピーター・ファン・ハイステ

キャスト

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