原題:Sin Nombre

2009/アメリカ・メキシコ/シネマスコープ/ドルビーデジタル/スペイン語/ドラマ/96分/ PG-12/日本語字幕:石田泰子 配給:日活

2011年02月04日よりDVDリリース 2010年6月19日(土)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー!

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公開初日 2010/06/19

配給会社名 0006

解説


サンダンス映画祭で監督賞を受賞。
世界が注目する日系監督キャリー・ジョージ・フクナガの長編デビュー作。
ガエル・ガルシア・ベルナルとディエゴ・ルナがほれ込んだ新たな才能に絶賛の嵐!

 名匠ロバート・レッドフォードの主催により、1978年から開催されているサンダンス映画祭。アメリカの新人監督の登竜門と呼ばれるこの映画祭は、コーエン兄弟、クエンティン・タランティーノ、ブライアン・シンガー、スティーヴン・ソダーバーグなど、現在のハリウッドをリードする天才・鬼才を数多く輩出したことで知られている。そのサンダンスからまたひとり、注目の映画作家が誕生した。キャリー・ジョージ・フクナガ。父方の先祖が日本出身という日系アメリカ人だ。本作は、彼のみずみずしい感性が光る長編監督デビュー作。2009年のサンダンス映画祭ではドラマ部門に出品され、監督賞と撮影監督賞を受賞。低予算インディーズ映画を対象とした賞の中で最も大きいと言われている、インディペンデント・スピリット賞3部門(作品賞、監督賞、撮影賞)ノミネートをはじめ、今なお数々の映画賞を受賞し続けている。
俳優のガエル・ガルシア・ベルナルとディエゴ・ルナが製作総指揮に名を連ねている点でも話題を呼んだ本作は、全米公開においても、「最初から最後まで輝きを放つ作品」(ロジャー・エバート)、「“本物”の称号を与えられてしかるべき映画」(NYタイムズ紙)、「フクナガの作品には切なくも悲しい真実がある」(LAタイムズ紙)と、名だたるメディアから絶賛を浴びた。

ホンジュラス、メキシコからアメリカへ——
希望の地を目指す少女と少年のはかなくも美しい魂の触れ合いが心を揺さぶる!
明日を生き抜く人々へ贈る感動のロードムービー。

主人公は、ホンジュラス出身の少女サイラ。アメリカという約束の地をめざし、父と叔父と共に故郷を旅立った彼女は、多くの移民たちがひしめきあう列車の屋根の上で、カスペルという名のメキシコ人少年と運命の出会いを果たす。彼は、強盗目的で列車に乗り込んだギャングの一員。だが、サイラにとっては命の恩人となる。彼女に暴行を加えようとしたギャングのリーダーを殺したからだ。その結果、裏切り者として組織から追われることになったカスペルと、彼に信頼と淡い恋心を寄せ、行動を共にするサイラ。途中で列車を降りた2人は、トラックで国境を目指すのだが……。
 国境巡視隊の目をかいくぐり、組織の待ち伏せをかわし、アメリカへと続く困難な道のりを歩み続けるサイラとカスペル。絶望と希望が交錯するなか、よりよい未来を求め、死と背中合わせの旅に挑む2人の姿が、胸を熱くさせる。彼らの物語は、単なる不法移民の物語ではない。それは懸命に今日を生き抜こうとする人々の物語であり、無垢な少女と居場所も何もかもを失ってしまった少年の魂の触れ合いを描く物語だ。それを、フクナガ監督はリアルかつリリカルに描写。力強さと切なさが同居する美しいロードムービーに仕立てあげた。果たしてサイラとカスペルは、無事アメリカにたどり着けるのか!? 衝撃の展開に一筋の救いの光が差し込むラストでは、誰もが深い感動を覚えずにはいられないだろう。

私たちにもひとごとではない中南米社会の“衝撃的な真実”を映し出すリアルなドラマ

 本作の出発点は、フクナガ監督の短編「Victoria para Chino」(04)。トラックに閉じ込められたまま放置された不法移民の窒息死事件を題材にしたこの作品は、サンダンス映画祭をはじめとする複数の映画祭で賞を受賞し、フクナガに長編デビューのきっかけをもたらした。その際、移民のテーマをさらに深く掘り下げようと決意したフクナガは、メキシコのチアパス州に滞在。シェルターの移民たちにインタビューし、刑務所にいるギャングを取材。さらに、自ら列車の屋根に乗り込み、移民の足跡をたどる旅を三度にわたって経験した。
 その身体を張ったリサーチが、作品のディテールとして生きていることはいうまでもないだろう。映画を通じて、私たちは、列車の屋根で移動する移民たちの過酷な現実を知り、12歳の無邪気な少年を凶暴な殺人者に変貌させる実在のギャング組織マラ・サルバトゥルチャ13(MS13)の恐るべき実態を目にすることになる。アカデミー賞候補になった『シティ・オブ・ゴッド』や『そして、ひと粒のひかり』がそうであったように、物語の中に中南米の“今”が息づいている本作は、社会派ドラマとしても超一流の輝きを放っている。

ストーリー




 ホンジュラスで暮らす少女サイラ(パウリーナ・ガイタン)の元に、長らく別居していた父が戻って来た。アメリカから強制送還された父の望みは、サイラを連れてもう一度アメリカに行き、向こうにいる家族と一緒に暮らすこと。サイラにとって、それはあまり気乗りしない提案だったが、このままホンジュラスにとどまっていても未来は明るくない。結局サイラは、父と叔父と共に、グアテマラとメキシコを経由してアメリカのニュージャージーを目指す長く危険な旅に出た。

 メキシコのチアパス州タパチュラ。カスペル(エドガー・フロレス)は、マラ・サルヴァトゥルチャと呼ばれるギャングの一員として未来の見えない生活を送っている。彼には、リーダーのリルマゴ(テノック・ウエルタ・メヒア)に知られたくない秘密があった。組織の仕事をさぼり、恋人のマルタ(ディアナ・ガルシア)と密会を重ねていたのだ。しかし、その熱愛の日々はまもなく終わりを告げる。リルマゴに犯されそうになったマルタが、抵抗した拍子に頭をぶつけて死んだのだ。

 そのころ、チアパスまでたどり着いたサイラたちは、アメリカ行きの貨物列車の屋根に乗り込んだ。雨ざらしの屋根の上には、同じようにアメリカを目指す移民たちがひしめきあっている。やがて列車がトナラの近くにさしかかったとき、人々の間から悲鳴が上がった。リルマゴ、カスペル、そしてカスペルが仲間に引き入れた12歳の少年スマイリー(クリスティアン・フェレール)が、強盗目的で列車の屋根に上がってきたのだ。3人は移民たちを脅し、なけなしの金品を容赦なく強奪。さらにリルマゴは、泣き叫ぶサイラに銃をつきつけて暴行を加えようとした。それを見たカスペルの脳裏には、同じような経緯で命を落としたマルタの姿が浮かぶ。とっさにカスペルは、手にした鉈をリルマゴに向けて振り下ろした。驚きの表情を浮かべ、列車から転落するリルマゴ。その瞬間、カスペルは、越えてはいけない一線を越えたことを知った。

 組織を裏切ったカスペルには、列車にとどまって旅を続ける以外に選択の余地はなかった。そんな彼に命を救われた恩を感じ、近づいていくサイラ。列車の旅を続けるうち、彼女は、サバイバル能力に長けたカスペルに淡い恋心を抱くようになる。ある朝、カスペルがこっそり列車を降りたとき、サイラは父に黙って後を追った。

 サイラというお荷物を抱えて逃亡の旅を続けなければいけない状況に、カスペルは頭を抱えた。アジトへ戻ったスマイリーの報告を受けた組織が、追跡の網をはりめぐらせていることはわかっている。捕らえられ、殺されるのは時間の問題だ。それなのに、サイラはそんな自分を頼りにしているのだ……。

 とりあえず、サイラを連れてかつての仕事仲間の家に向かったカスペルは、車両運搬の積み荷にまぎれて国境の町へ向かうべく逃亡の手はずを整えてもらう。目的地のレイノサでは、仕事仲間の通報を受けた組織の者たちが待ち伏せしていたが、手前でトラックを降りたカスペルとサイラは、移民シェルターに隠れ場所を求めた。そのシェルターで、列車で一緒だった男と再会したサイラは、国境巡視隊にみつかった父が列車から転落死したこと、叔父が強制送還になったことを知る。家族を失った悲しみに泣き崩れるサイラの肩を、カスペルはただ黙って抱きしめた。
 サイラとカスペルが、川を越えてアメリカへ渡る日がやって来た。「何が何でもお父さんの家族をみつけろ」というカスペルの励ましを受け、川に足を踏み入れるサイラ。カスペルが川岸で見守る中、渡し人の先導で泳ぎだしたサイラは、無事対岸へたどり着いたかに見えたのだが……。

スタッフ

脚本・監督:キャリー・ジョージ・フクナガ
撮影:アドリアーノ・ゴールドマン
美術:クラウディオ・コントラレス
編集:ルイス・カルバリャール/クレイグ・マッケイ
音楽:マーセロ・ザーヴォス
プロデューサー:エイミー・カウフマン
製作総指揮:ガエル・ガルシア・ベルナル、ディエゴ・ルナ、パブロ・クルス

キャスト

サイラ:パウリーナ・ガイタン
カスペル/ウィリー:エドガー・フロレス
スマイリー:クリスティアン・フェレール
リルマゴ:テノック・ウエルタ・メヒア
マルタ:ディアナ・ガルシア

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