完全なる墜落。

2009年/日本/カラー/ビスタサイズ/80分/ステレオ/35mm/R-18+ 配給:アートポート

2009年9月5日(土)より、銀座シネパトス他全国順次ロードショー

(C)2009 アートポート/ベルヴィー

公開初日 2009/09/05

配給会社名 0014

解説


衝撃の「本番」、そしてスター誕生…。
全ての伝説はここから始まった

1981年(昭和56年)のお盆を過ぎたあたりから、民放各局のワイドショーはこぞってある映画の話題を取り上げるようになる。大島渚監督の『愛のコリーダ』から5年ぶりとなる本番映画『白日夢』である。
若松孝二、高橋伴明、中村幻児といった名だたる監督のもとでピンク映画に出演していたほとんど無名と言ってもいい青山涼子が愛染恭子の名前で初めて世に出た映画として現在も語り継がれているが、当時としては愛染の相手役として本番に挑んだ佐藤慶に話題が集中していた。
既に大作映画や高視聴率ドラマには欠かせない名脇役として活躍していた佐藤は大島渚監督作品の常連として名を上げた俳優だけに、『愛のコリーダ』以来の本番映画出演は何か運命めいたものを感じた者が多かったようだ。

公開直前になるとスポーツ新聞や夕刊紙、週刊誌などの男性諸氏が目にするメディアを飛び越え、女性週刊誌などでも誌面で取り上げられるようになり、一大センセーショナルを巻き起こす。『白日夢』はもちろん成人指定を受けた映画(今で言うR-18+)であるが、前年に公開された同じく成人指定を受けたアメリカ映画の『カリギュラ』が興行収入12億円の成績を上げたこともあり、興行界でも一気に大ヒットの期待が高まる。そして迎えた初日、1981年9月12日、劇場には長蛇の列ができ、成人指定を受けた日本映画としては異例の興行収入15億円のヒットとなり、大阪地区では名作中の名作『ブルース・ブラザース』、スティーブ・マックイーンの遺作『ハンター』より稼いだ作品として記録に残っている。

『白日夢』の大ヒットはまた、思わぬスターを誕生させる。佐藤慶を相手に本番を演じた愛染恭子である。公開後も男性誌のグラビアで惜しげもなく見事な肢体を披露していくほか、「徹子の部屋」、「笑っていいとも!」といった人気テレビ番組に登場してお茶の間でも広く知られるようになる。更に、80年代前半から中半にかけて胎動を始めたビデオレンタル創世期の中核商品とも言えるアダルトビデオに数多く出演し、現在のアダルトカルチャーの基礎を形成した人物と言っても過言ではない。

ストーリー



わたくしって、ふしだら?

とあるアパートの一室、制服警官の倉橋誠一が倒れている。どうやら拳銃で撃たれたようだ。
荒い息を吐きながら、傷口を押さえる倉橋。無線が応答を呼びかけているが、倉橋には応える力が残っていない。倉橋の意識が遠のいていく…。
倉橋がハッとなって目を覚ます。倉橋は派出所で居眠りをしていたのだ。胸の辺りを確認して安堵する倉橋。悪夢でぐっしょりと汗をかいている。と、机の上の電話が鳴り続けていることに気づいた。あわてて受話器を取る倉橋。電話は空き巣の被害届だった。
倉橋は自転車に乗って、届けのあったアパートに向かった。
一室を訪ねる倉橋。部屋では被害者の葉室千枝子が待っていた。美しく清楚な容姿の千枝子にドキッとする倉橋。倉橋は千枝子に状況を聞きながら、荒らされた部屋の様子を見ていく。ふと、デジャヴにとらわれる倉橋。先ほどの悪夢が倉橋の脳裏にフラッシュバックする。この部屋は、先ほど自分が撃たれて倒れていた部屋ではないか…。同じような家具が置かれているが微妙に違うような気もする。
食事中に歯が抜けた倉橋は向った歯科医院で助手として働いている千枝子と偶然再会する。
歯科医の日高が倉橋の歯を治療し、あとの処理は千枝子が担当する。千枝子に口元を触られ、また千枝子を間近に感じて、倉橋は陶然となるのだった。
倉橋は翌日から、巡回パトロールの途中に千枝子のアパートの周辺を回るようになった。不審人物を見かければ、積極的に職務質問をした。千枝子のアパートに入った空き巣を捕まえ、千枝子が盗まれたアルバムを取り戻してやりたかったのだ。だが、空き巣と思しき人物を捕まえることは出来なかった。倉橋は千枝子に惹かれはじめていた。
そして、次の非番の日、倉橋は治療のために、日高歯科医院にやってきた。千枝子と会うのが楽しみだった。しかし、辞めてしまったということで千枝子の姿はなかった。同僚の助手の言うことには、葉室千枝子は歯科医の日高と不倫関係にあった。二人の関係は日高の妻・さゆりの知るところとなり、歯科医院を辞めるはめになったのである。倉橋がその事実を知る頃には、千枝子は既にこの町を去っていた。
実は、千枝子の部屋が空き巣に荒らされたのも、さゆりの差し金だった。さゆりは千枝子に対してある疑念を抱いていた。その疑念を確証にするため、興信所の探偵を使って千枝子のアルバムを盗ませたのだ。

ある日、そのアルバムが遺失物として届けられる。そのアルバムには見知らぬ女性とさゆりが写っている写真が何枚も貼ってあったが、千枝子が写っている写真は1枚も無い。しかし倉橋は、これは千枝子のアルバムであると直感した。なんとか彼女のもとにアルバムを返そうという思いが強くこみ上げてきた倉橋は千枝子の所在を探すため、彼女が先日まで住んでいたアパートの連帯保証人を訪ねて三浦半島の漁港へと向う。
倉橋はその漁港で千枝子と再会する。憔悴しきった千枝子は倉橋に全てを打ち明ける。アルバムのさゆりと一緒に写っている写真は整形手術で顔を変える前の自分であること、自分とさゆりは学校の同期で、その頃から日高を取り合ったこと等。倉橋はなんとか千枝子の助けになりたいと思い、その思いが次第に恋心へと移り変わっていく。
しかしその思いがあまりにも強すぎるのか、倉橋は頭の中はで千枝子との情事を妄想するようになる。現実か? 妄想か? 自分でも分からなくなっていく中、千枝子に「さゆりを殺して」と囁かれる。これも現実か? 妄想か?
倉橋と千枝子はさゆりを拉致して絞殺し、遺体をゴミ捨て用の黒いポリ袋に包んで奥多摩の山中に埋める。倉橋は千枝子に「怪しまれないよう、しばらく会うのは避けましょう」と言われる。
千枝子に会えない日々。倉橋の妄想は既に千枝子の領域を超え、さゆりにまで及んでいた。ゴミ捨て場でモゾモゾと動く黒いポリ袋を見るようになる。精神状態破壊寸前のところまで来ている倉橋は、かつて千枝子が住んでいたアパートを見に行く。そこで倉橋が目にしたものは、全裸の千枝子と日高が重なり合っている光景だった。日高と結ばれるために倉橋を利用してさゆりを殺し、そして倉橋も道具のように“棄てられた”のである。寸前から完全に精神状態が破壊された倉橋は、腰のホルスターに手を掛けるのであったが・・・。

スタッフ

原作:谷崎潤一郎(中央公論新社 刊)
監督;愛染恭子、いまおかしんじ

製作:松下順一、窪田一貴
企画:加藤東司
プロデューサー:小貫英樹
ラインプロデューサー:藤原健一
脚本:井土紀州
音楽:碇英記
撮影:田宮健彦 
照明:藤井勇
美術:羽賀香織
録音:沼田一夫
編集:目見田健
助監督:伊藤一平 
制作担当:山口通平
スチール:中居拳子
制作協力:円谷エンターテインメント 
制作:本田エンターテインメント
製作:アートポート 、ベルヴィー

キャスト

西条美咲
大坂俊介
小島可奈子

坂本真
福永ちな
姑山武司
渡会久美子
飯島大介 
菅田俊
鳥肌実

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