シネマ歌舞伎『怪談 牡丹燈籠』
幽霊より怖い人間の業− 18年ぶりに仁左衛門・玉三郎が、美しく欲深い夫婦を演じた 名人・三遊亭円朝創作の、怪談噺の傑作がスクリーンに登場!
2009年/日本/カラー/155分/ 配給:松竹
2009年7月11日(土)から東劇ほか全国順次ロードショー
(c)松竹株式会社
公開初日 2009/07/11
配給会社名 0003
解説
牡丹燈籠が灯るとき、浮かび上がる人間の業—
18年ぶりに仁左衛門・玉三郎が、美しく欲深い夫婦を演じた
名人・三遊亭円朝創作の、怪談噺の傑作がスクリーンに登場!
三遊亭円朝の傑作『怪談 牡丹燈籠』は、明治二十五年(1892)に三世河竹新七の脚色により、歌舞伎座で上演され空前の大当たりとなりました。
以来、人気演目として今日に至っておりますが、シネマ歌舞伎にもなった中国の昆劇『牡丹亭』もその下敷きとなったと言われています。今回上映致しますのは、昭和四十九年(1974)に大西信行氏が文学座のために書き下ろしたものです。言葉は口語に近く、人物像もより深く掘り下げられた、笑いどころも満載の、現代版『怪談 牡丹燈籠』になっております。
伴蔵とお峰は、十八年ぶりに仁左衛門と玉三郎が演じ、イキのあった絶妙な夫婦のやりとりを見せています。そこに萩原新三郎(愛之助)とお露(七之助)、宮野辺源次郎(錦之助)とお国(吉弥)の二組の男女の物語が重なり、幽霊よりも怖い人間の業の世界が展開していきます。カラン、コロンという下駄の音を響かせ、牡丹燈籠を手に現れるお露とお米(吉之丞)の二人の幽霊の怖さとおかしみも見どころです。またこの大西本は、原作者である円朝が舞台にも登場してい高座で『牡丹燈籠』を「噺す」という趣向をとっており、こちらも三津五郎の力演によりたっぷりとお楽しみいただけます。
ストーリー
旗本の飯島平左衛門の一人娘であるお露は、身分違いの浪人である新三郎を恋い慕うあまり病に罹り世を去り、お米もお露の後を追って自害してしまった。死んでからも新三郎のことが忘れられないお露は幽霊となってお米と新三郎の家に現れる。しかし新三郎は幽霊となった二人に気付かず、お米の勧めるまま、お露と枕を交わすのであった。
一方、飯島平左衛門(竹三郎)は、下女のお国に手をつけこれを後添えに迎えたのだが、お国(吉弥)は、飯島家の隣家の次男である宮野辺源次郎(錦之助)と不義を重ねている。
お国は源次郎を飯島家の養子に迎えようと画策したものの、平左衛門(竹三郎)がこれを許さないので、お国と源次郎は平左衛門を殺すことを決意する。そこへ平左衛門が現れ、平左衛門は不義密通をした源次郎を手討ちにしようとするが、逆に討たれてしまう。瀕死の平左衛門は、家督を相続する人間も決まっていないのに、当主が死ねば家が改易となるのは当然だと、お国たちの浅はかな企みを嘲笑って絶命したところに、女中のお竹(壱太郎)がやって来て、平左衛門の死を知るので、お国と源次郎は口封じのためにお竹も殺し、奈落の底まで一緒だと言って抱き合うのであった。
その頃、伴蔵(仁左衛門)の家では女房のお峰(玉三郎)が、伴蔵の帰りを待っている。やがて伴蔵が帰って来、蚊帳の中で晩酌をしていると伴蔵のもとへ牡丹燈籠が飛んできた。これを見たお峰は不審に思い、蚊帳の中の伴蔵を窺うと、伴蔵が誰かと話をしている様子。その後牡丹燈籠は消え去り、伴蔵は今起こったことの次第をお峰に話し始める。
それは、お露とお米の幽霊は毎夜新三郎の家に通っていたが、新三郎の死相に気がついた占い師が、このままでは新三郎が憑り殺されることを告げ、新三郎は身を守る為に家のあちこちにお札を貼り、お守りとして授けられた海音如来の金無垢の尊像を常に携えている。そのため、お露は、新三郎に近づくことが出来なくなり、お札を剥がし海音如来の尊像を隠してくれとのことであった。
伴蔵はお札を剥がすかどうかを躊躇していたが、お峰に百両の報酬が貰えるのであれば、お札を剥がしても良いのではと勧められる。伴蔵も百両の金が手に入れれば楽な暮らしが出来ると、お峰の勧めに従うことにする。そしてお露とお米が現れると、伴蔵は百両の金が貰えるなら、お札を剥がしても良いと請け合うのだった。
翌日、お峰と伴蔵は海音如来の尊像を、瓦で出来た不動明王と取り替え、海音如来の尊像を土の中へと隠すのだった。その後牡丹燈籠がやって来て、天井から謝礼の百両の金が降り注いでくるので伴蔵とお峰は互いに喜び合う。
そして伴蔵は、お露とお米を伴って新三郎の家へ案内し、全てのお札を剥がし取るので、お露は嬉しそうに家の中へと入っていき、久し振りに新三郎との対面を果たすと、そのまま新三郎を憑り殺すのであった…。
その後、伴蔵は郷里の栗橋に戻り、お露から得た百両の金を元手に今では関口屋という荒物屋を営み、大層な羽振りである。その栗端宿のはずれの土手に、平左衛門とお竹を惨殺した源次郎が住み着いて物乞いをして生計をたてている。一方、お国は笹屋という料理屋で酌婦奉公をして、勤めの合い間に源次郎のもとへやって来ている。だが源次郎は、このところお国に執心の関口屋伴蔵のことが気にかかり、お国に関口屋の座敷には出ないでくれと頼むが、これも1年前に手傷を負った源次郎の病を寮治するための金を得るためといって、源次郎を宥める。
関口屋では、すっかり商人の妻らしい品を備えたお峰が店番をしている。ここへ馬子の久蔵(三津五郎)が通りかかり、伴蔵が笹屋の酌婦に入れあげている浮気情報を探る為お峰は久蔵を呼び止め、酒を飲ませたり小遣いを与えるなどして久蔵をもてなす。久蔵は、お峰の口車に乗って、お国と伴蔵の馴れ初めや、お国の身の上まで全てを明かしてしまう。その日の夜更け、お峰は針仕事をしながら、関口屋で雇うことにした旧知のお六に、自分が幸せか不幸せがわからなくなったと言い、伴蔵も変わってしまったと愚痴をこぼす。
ここへ伴蔵が、酌婦のお国やお梅(壱太郎)、お絹に送られて帰ってくる。伴蔵が上機嫌で戸を開けるようにと言うと、お峰が只ならない様子で戸を開けるので、伴蔵はお峰の機嫌を取ろうと様々語りかける。だがお峰はお国の名前を出して伴蔵の様子を窺うと、伴蔵はもうお国とは逢わないので許してくれと訴える。これを聞いて機嫌を直したお峰は、伴蔵に旧知のお六を雇うことにしたと語る。だが伴蔵は態度を一変させ、以前の自分達を知る者が店へ顔を出し、この辺りの人間に以前のことが知られては困ると厳しく叱り付ける。
するとお峰は、一年前までは萩原新三郎の奉公人同様に働き、貧しいながらも幸せな生活を送っていたことを忘れたのかと言い、自分と別れたいなら、あの時の百両を手切れとして渡せと毒づく。そして大声で百両を得た折の伴蔵の悪事を言い立てる。さすがの伴蔵も慌てふためき、お峰に頭を下げて深く詫び、今日まで尽くしてくれたお峰に感謝して、今からは心を入れ替えると約束する。
ところ変わって笹屋への帰りがけ、源次郎の住む土手へお国とお絹、お梅の三人が通りかかる。お梅に故郷のことを訪ねると、姉の一周忌を迎えるにもかかわらず、勤めのために墓参りさえも出来ないと泣き出してしまう。実はお梅の姉こそ、お国と源次郎に殺されたお竹で、これを知ったお国と源次郎はその因果を知って驚く。お国はせめてもの罪滅ぼしにと、自らの金をお梅に小遣いだと言って渡し、二人を店に帰らせる。やがて土手に潜んでいた源次郎が姿を現し、平左衛門を殺して一年が経つのかと呟き、この一年間の身の不幸を歎く。お国が慰める内に、源次郎は何者かに誘われて、飛び交う蛍の群れを追いかけていく。そして転んだ拍子に自らの刀で自分を突き刺してしまう。瀕死の傷を負った源次郎に、何も知らないお国は抱き付き、源次郎の胸に刺さる刀のために、お国も息絶える。
一方、伴蔵は態度を改めてお峰に尽くすので、お峰も上機嫌の様子である。悪事が露見する前に、場所を変えて人生をやり直そうという伴蔵は、海音如来を埋めた幸手堤にお峰と共に現れて、海音如来を掘出し始める。だがこの伴蔵の話は真っ赤な嘘で、お峰を安心させて、その隙にお峰を殺す腹積もりであった。やがて伴蔵はお峰に斬りかかり、お峰は必至に応戦するものの、ついに殺されてしまう。
こうしてお峰を殺害した伴蔵は、そのまま幸手堤を立ち去ろうとするが…。
スタッフ
原作:三遊亭円朝
脚本:大西信行
演出:戌井市郎
キャスト
伴蔵:片岡仁左衛門
伴蔵女房 お峰:坂東玉三郎
三遊亭円朝・船頭・馬子久蔵:坂東三津五郎
萩原新三郎:片岡愛之助
娘 お露:中村七之助
お国:上村吉弥
宮野辺源次郎:中村錦之助
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