原題:LA TOURNEUSE DE PAGES

フランス映画祭2008上映作品

2006年/フランス/カラー/85分/ 配給:カフェグルーヴ+トルネード・フィルム

2008年4月19日(土)より、シネスイッチ銀座、渋谷シネ・アミューズほか全国順次ロードショー

©Philippe Quaisse

公開初日 2008/04/19

配給会社名 0785/0633

解説



『譜めくりの女』は、ピアニストへの夢を絶たれた少女メラニーの物語を主軸に、憧れと絶望、時を経て立場が逆転した二人の女性の愛憎を、クラシック音楽の演奏という緊張感あふれる舞台を背景に、きめ細かく、情感豊かに描いた傑作である。
2006年カンヌ映画祭「ある視点」部門で公式上映され、フランス映画の伝統を汲む重層的な心理描写に、クラシック音楽の構成を見事に取り入れた作品と絶賛を浴び、その後、世界中での配給が決定している。

物静かな少女メラニーの夢は、ピアニストになること。しかし、コンセルヴァトワールの実技試験で、審査員である人気ピアニスト、アリアーヌが取った無神経な態度に翻弄され、ピアニストへの夢を捨てる。やがて妖しいまでに美しく成長したメラニーは、アリアーヌとの再会を果たす。そうとは知らないアリアーヌは、メラニーに演奏会の成功の鍵を握る“譜めくり”を依頼し、やがて絶大な信頼を寄せていくのだが・・・。

監督のドゥニ・デルクールは、高い評価を受けるヴィオラ奏者でもあり、現在、フランス・ストラスブール国立音楽院教授というフランス映画界きっての逸材である。パリ国立音楽院時代には、プレイエル、カーネギーといった世界一流の舞台でソロ演奏も行っている。長編第5作目となる『譜めくりの女』で、一曲のクラシック音楽作品さながらにドラマを仕立て、また演奏家たちの緊張や不安といった巧みな心理が描けるのも、こうした経歴をもつデルクールならではと言えるだろう。

2005年、フランス外務省の招きで研究者として京都に半年間滞在し、人生の岐路を前に戸惑う少女を描いた作品“Ukiyo, Monde flottant”を製作するなど、日本文化にも造詣が深いたデルクール。抑制の効いたスクリーンから醸し出される繊細な情感の秘密が、ここにもありそうだ。
 
情熱と絶望を内に秘め、美しく危険な香りのするメラニー役には、『ある子供』(ジャンピエール&リュック・ダルデンヌ監督)での少女ソニア役が記憶に新しいデボラ・フランソワ。『ある子供』は、2005年カンヌ映画祭で最高賞のパルムドール大賞を受賞、彼女自身もセザール賞最優秀新人女優賞に輝いた。その次回出演作に選んだのが、この『譜めくりの女』で、その後も出演依頼が絶えない人気若手女優である。

大人の無神経な言動から一人の少女の人生を狂わせてしまったピアニスト、アリアーヌ役を演じるのはカトリーヌ・フロ。『家族の気分』(セドリック・クラピッシュ監督)でセザール賞主演女優賞を受賞するなど、今やフランスを代表する女優の一人である。上品でどこかとぼけたいつもの役柄から一転、今回は、不安とプライドを抱えるピアニストの心理を巧みに演じている。

また、アリアーヌの夫、ジャンに扮するのは、エリック・ロメール、パトリス・シェロー作品の常連であるパスカル・グレゴリー。その他、名優たちが『譜めくりの女』を脇から支えている。さらに、音楽を担当したジェローム・ルモニエは、どこか不安げな雰囲気を漂わせる冒頭から、アリアーヌ一家に思わぬ結末が訪れるクライマックスまで、作品に独特なトーンと緊張感と与え、物語を盛り立てている。

ストーリー

 透き通るような白い肌に長い髪を束ねた少女メラニーの夢は、コンセルヴァトワールに入学してピアニストになること。その憧れは、やさしく見守る両親が想像する以上に、静かに、熱く燃えていた。

入学試験の日。人気ピアニストとして活躍する審査員長アリアーヌを前に、自信に満ちた表情で弾き始めるメラニー。しかし、アリアーヌが見せた無神経な態度にメラニーは激しく動揺し、演奏を中断する。こうして、メラニーはピアニストになる夢を封印した。

十数年後。妖しいまでに美しく成長したメラニーは、名高い弁護士であるジャン・フシェクールの事務所で実習生として働き始める。やがて、ジャンが息子トリスタンの世話係を探していると知ったメラニーは自ら子守を申し出る。ジャンの妻は、ほかでもない、メラニーがピアニストになる夢を絶ったアリアーヌだったのだ。

アリアーヌは、メラニーにピアノの経験があると分かると演奏会での“譜めくり”役を依頼する。譜めくりとは、決して目立たぬ存在ではあるが演奏の出来を大きく左右する大切な役。言い換えれば、ピアニストを陰で支配し得る役回りだ。特に最近のアリアーヌは、交通事故で受けた心の傷からか、明らかに演奏に自信を失っていた。

練習を重ねるうち、アリアーヌはメラニーに信頼と好意を寄せていく。

演奏会。メラニーが傍らにいることでアリアーヌは自信を取り戻し、彼女の三重奏団は、難曲をもろともせず成功させる。観客の賞賛を浴びて輝くアリアーヌを、憧れのまなざしで見つめるメラニー。と同時に、アリアーヌの成功も幸せも、いまや支配するのは自分であることを確信し、ひそかに「ある計画」を進めるのだった。

こうして、メラニーはアリアーヌの心をもてあそぶかのように振る舞い始める。三重奏団のチェリスト、ローランの謎のケガ、息子トリスタンが隠す秘密、演奏直前の失踪・・・。メラニーが来てから次々と起こる出来事で、信頼と不安がないまぜになり、アリアーヌの精神は前にも増して不安定となる。もはや自分の中でメラニーの存在が絶大になってしまったことに気づいたアリアーヌは、動揺を隠すことができない。

やがて休暇を終え、出発を翌日に控えたメラニーは、少女の頃から憧れながらもひそかに憎しみ続けたアリアーヌに、ある願い事を申し出る・・・。

スタッフ

監督・脚本:ドゥニ・デルクール
脚本協力:ジャック・ソティ
製作:ミシェル・サンジャン
撮影:ジェローム・ペイルブリュンヌ 
編集:フランソワ・ジェディジエ
録音:オリヴィエ・モーヴザン、ブノワ・イルブラント、オリヴィエ・ドーフー
セット・衣装:アントワーヌ・プラトー
メイク:シャンタル・レオティエ、ヴェロニック・デルメストル
キャスティング:ブリジット・モワドン
助監督:ラファエル・ラヴィネヴィルベル
ユニット・マネージャー:ジェローム・ペタマン
エグゼキュティブ・プロデューサー:トム・デルクール
オリジナル音楽作曲・オーケストレーション:ジェローム・ルモニエ

キャスト

カトリーヌ・フロ
デボラ・フランソワ
パスカル・グレゴリー
アントワーヌ・マルティンシウ
クロティルド・モレ
グザヴィエ・ドゥ・ギルボン
ジャック・ボナフェ
クリスティーヌ・シティ
ジュリー・リシャレ

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