原題:Próxima salida

ロッテルダム映画祭 Hubert Bals Fund 2004年52回 サンセバスチャン映画祭/ZABALTEGI 新人監督部門参加 2004年24回フランス・アミアン映画祭/観客賞、審査員特別賞、SIGNIS 賞 2005年45回 コロンビア・カルタヘナ映画祭/最優秀新人監督賞・批評家賞 2005年13回 ベルギーOpen Doek 映画祭/Delta Lloyd jongerenprijs 2005年5回 スペイン・パンプローナ映画祭/最優秀賞Reyno de Navarra

2004年/アルゼンチン/110分 配給:Action Inc.

2008年12月15日よりDVDリリース 2008年4月12 日より渋谷ユーロスペースにてロードショー

公開初日 2008/04/12

配給会社名 0596

解説



「出口は きっとある」

この作品は、アルゼンチンのニコラス・トゥオッツォ監督が、34歳にして撮った初の長編劇映画である。今や、第二のニューシネマブームと言われているアルゼンチン。若手監督たちは、自らの経験と想像力を元に脚本を書き、プロの俳優を使わず、低予算で独立系作品を作り出している。ニューシネマの旗手たちと同年代にありながら、初めて監督する作品に社会的なテーマで挑戦し、ダリオ・グランディネッティを初めとするアルゼンチンの硬派ベテラン俳優を起用したことから、トゥオッツォ監督は、アルゼンチンはもとより、欧米でも注目されている。

「アルゼンチン映画にとってうれしい驚き」と書いているのは、日刊紙ラ・プレンサ。「今もアルゼンチン人を揺さぶるあの時代の出来事が、よく構築された脚本、台詞を越えて物語る映像と俳優の演技とともに、悲劇に走らずユーモアも忘れず、リアルに描かれている。監督としての今後が、楽しみだ」この5人の失業した鉄道員たちは、年代も家族構成も違う。あと2年で退職できるブラウリオから、親分肌のゴメス、人の良いアティリオ、妻と一人娘と暮らすカルロス、そして病気の幼い息子を持つ若いダニエルまで。

しかし、カルロスが「父も兄も鉄道員だった。私も15歳からこの仕事をしている」ということからも分かるように、みな、叩き上げの労働者であり、鉄道員として誇りを持っているところで、つながっている仲間であり、第二の家族である。妻や子供たちも、鉄道員の家族ということで、横のつながりを持っている。特に子供たちは、幼なじみであり、鉄道員の父親の背中を見て育って来た。父が自殺してしまったアベルを、まるで兄弟のようになぐさめるカルロスの娘、ラウラとそのボーフレンド、ホアン。3人とも鉄道と共に育って来たのだ。明日からの生活のために仕事を探さなければならなくなった大人たちは、現実の厳しさに直面する。鉄道がなくなったことで、鉄道員だけではなく、失業者が増え、面接には長蛇の列ができる。
失意のどん底に落ちて行く大人たちを見守っているのが、子供たちだ。

父親が自殺したアベルは「運命は変えられないのだろうか」と思う。「闘わなかった父は、臆病だったのか」と。カルロスの娘ラウラは、仕事もなく突然、トイレの配管工事を始める父と働く母の間のぎくしゃくした関係のクッションになっている。ホアンは、幼いとき、アベルの運転で乗った機関車までなくなった、と悔しがる。「機関車はあるよ、奥のほうに」とアベルが言う。希望もなく、出口が見えない状況の中で、ゴメスが犯罪に手を出し、マスコミの注目が集まった。アベルは決心する。今夜こそ、行動に移すべきだ、と。それは、誰もが予測しなかった光景だった。子供たちは、自殺した父を初め、絶望する大人たちが最も欲していたことを実現し、「次の出口」へ向かって闘い続ける事を宣言する。

ストーリー

アルゼンチンの小さな町。夜。降りしきる雨の中、10代の子供たち3人が走っている。聞こえるのは、男の子の声だけ。「運命は変えられるのか?」

父親が自殺したアベルの声だ。鉄道を中心に栄えたこの町に民営化の波が押しよせ、ある日、突然、路線の廃止が言い渡される。組合を代表して交渉にのぞんだのが、アベルの父親のアンヘルだったが、「どんなに闘っても、運命を変えることはできない」と自ら命を絶つ。
組合の新たな代表となったアントニオはこのタイミングを逃すと補償金も取れなくなる、と組合員たちに、自主退職を促す。鉄道員仲間のアンヘルの弟、カルロスとブラウリオ、ダニエル、アティリオ、そしてゴメスの5人は、自主退職に反対する意向だった。しかし、まわりの労働者たちは、給与が2ヶ月遅配していることもあって、次々にサインしていく。

娘と離れて住むブラウリオ(ウリセス・ドゥモンド)は、修理工場に住み着き、猫を相手に、理不尽な世の中に対する怒りをぶちまけ、何が何でも自分の職場である修理工場を守る、自主退職届けにサインはしない、と言い張る。働く妻と娘がいるカルロス(ダリオ・グランディネッティ)は、悩みながらも、決心がつかない。
家は立ち退きを迫られ、マルチ商法の健康食品販売の話を聞きにいっても納得できず、
「本物の仕事がしたいだけだ」と外に出る。
すると、ゴメス(オスカル・アレグレ)が、サンドイッチマンをしているのに、出くわす。「唯一あった仕事がこれだ」天涯孤独のゴメスと長年つきあって来た娼婦のカルメン(ルクレシア・カペーリョ)に「いつか金持ちになると言っていたが、もうムリだ」という。ゴメスが支払うお金を、そっとズボンのポケットに返すカルメン。

喘息の子供をかかえる若いダニエル(パブロ・ラゴ)は、仕事がなくなって妻との仲もギクシャクしている。妻が両親のもとに、金を借りに行かなければ、子供の治療費も支払えない状況だったことから、自主退職届けにサインする。そして、息子の名付け親からの紹介で、仕事を得る為に、妻に黙って銃の訓練をし始める。
独り者のアティリオ(バンド・ビリャミル)も、何とかタクシーで仕事をしようとするが、襲撃されたり、偽札を掴まされたりで前途多難だ。その上、瀟洒な家に大きな新品のテレビを運んでいくと、そこにいたのは、元労働組合代表のアントニオだった。
「おれたちを騙したな!」テレビを投げつけるアティリオ。
親の代からの仕事である、鉄道員としての誇りが、失業とともに消えてしまった。自らの尊厳までなくし、なすすべもなく絶望する5人の男たち。そんな中、ゴメスは、カルメンに言い続けた「いつか、金持ちになる」という夢を実現しようと、ついに犯罪に手を染める。ゴメスとその一味は、スーパーマーケットに強盗に入り、人質をとってろう城。そこで、ガードマンをしていたのは、昔の同僚、ダニエルだった。警察が包囲し、テレビ中継が始まる。有名なテレビのトークショー司会者は、言う。「なぜ、失業した鉄道員たちがこうなるのか。私には分かりません。みなさんには、分かりますか。」

それを聞いたカルロスは、いたたまれず、テレビに出て話し始める。
鉄道員にとって、鉄道がなくなることは、絶望に等しい、と。
一方、現場では、警察が強行突入するのか、犯人と交渉するのか、どんどんと緊張が高まっている。父を失ったアベル、カルロスの娘とそのボーイフレンド、ホアンは、親たちの苦悩をみながら、自分たちが話し合ってきたことを、ついに実行に移す時がきた、と動き出す。今夜しかない。鉄道員の家族としての誇りを取り戻すために。「出口は、きっとある」ことを示すために。

スタッフ

監督:ニコラス・トゥオッツォ
制作:マルコス・ネグリ、パブロ・ラット(「M」)
脚本:マルコス・ネグリ、ニコラス・トゥオッツォ
撮影:パブロ・デレーチョ
音楽:セバスチャン・エスコフェット(「21グラム」リミキサー)

キャスト

ダリオ・グランディネッティ
メルセデス・モラン
ウリセス・ドゥモント
パブロ・ラゴ
バンド・ビリャミル
オスカル・アレグレ

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