遙か遠くの故郷への断ち切れぬ想い。 痛切な魂の叫びは、やがてその海を越えた。

2000年/カラー/スタンダード/90分/シグロ作品 配給:シグロ

2007年10月27日よりポレポレ東中野にてロードショー

公開初日 2007/10/27

配給会社名 0035

解説


1996年の秋、スタートしたばかりの私たちの中国戦争被害女性を支援する会に一通の手紙が届いた。中国湖南省双峰県郵便局職員からで、同県に韓国出身の戦争被害女性がいるということだった。「彼女は70才を過ぎた高齢で、しかもガンに罹っています。どうしても死ぬ前に50数年離れていた生まれ故郷を一度見てみたいと言う宿願があったのです。なんとかして生きているうちに一目生まれ育ったところを見せる事はできないだろうか。」と言う内容だった。
その年の10月26日に彼女に会いに行った。彼女の家は都会から離れた静かな山村にあった。穏やかで、品のあるおばさんだった。話を聞くと、17 才のとき、ある男に大田織物工場へ働きにいかないかと誘われ、家が貧しかったので、そのまま信じてついて行った。しかし、連れていかれたのは、ある海辺の施設だった。そこに一ヶ月くらい監禁され、日本の軍服姿の韓国人が現れて、中国の武漢市に強制的に連れて行かれたということだった。
残り5ヵ月、限られた生命の時間で、彼女がこの百倍の時間をかけて思いつづける祖国を本当に見ることができるのだろうか。彼女はもうすでに、母国語・韓国語を話せなくなっており、生まれ故郷の住所もはっきりと覚えていないのだ。1996年の年末、私は彼女が示した「カンキャンウプ」という村の名前を元に石の山を一軒一軒訪ねて、証人探しをした。最後に82才の老婦人が彼女の事を知り、証言してくれた。
翌年の1997年の早春、彼女の韓国への“永住帰国”の入国許可が下りた。村を出るときに、300人ほどの山村の人々が全員爆竹を鳴らして、彼女を見送った。村人は皆泣いた。山村は煙と爆竹の音で満ちた。最後に彼女は『私は必ず戻ってきます。もし、韓国で死ぬようなことがあれば遺骨をこの村に埋めて!』という一言を残して、韓国へ旅立った。しかし、半世紀を越えて思い続けた故郷に、彼女の肉親は一人もおらず、昔の面影すらなかった。その後、帰国の事がマスコミに大きく報道されたことも手伝って、少女時代の親友、姉妹にも会えた。しかし、皆が歓迎してくれたとは言えなかった。ガンが進行し死ぬ前にまた中国に残した息子や孫に会いたいという彼女の希望はついに実現しなかった。

ストーリー

スタッフ

製作:山上徹二郎
監督・撮影:班忠義
編集:佐藤真
整音:弦巻裕

キャスト

鄭順意

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