原題:House of the Sleeping Beauties

2005年/ドイツ/カラー/103分/
配給:ツイン、ワコー

2008年06月25日よりDVDリリース
2007年12月15日より ユーロスペースにてロードショー 他順次全国公開

(c)2005 Alossa Film All Rights Reserved

公開初日 2007/12/15

配給会社名 0251/0321

解説


川端康成の禁断のデカダンス文学をドイツ人監督が格調高く映画化
 ベルリンの街の一角にひっそりと建つその館は、何もかもが謎めいていた。信用のおける年老いた顧客だけが出入りを許されるこの秘密の空間では、まるで死んだように眠っている美しい娘とベッドで一夜を共にすることができるのだ。友人からこの館の存在を教えられた孤独な事業家エドモンドは、眠れる美女たちの虜となり、夢の中であやされるかのような陶酔の日々を過ごすのだが……。
 文豪、川端康成の晩年の代表作であり、三島由紀夫が「熟れすぎた果実の腐臭に似た芳香を放つデカダンス文学の逸品」と絶賛した『眠れる美女』。この異端的な傑作小説が、ドイツのヴァディム・グロウナ監督の手によって格調高く映画化された。舞台を現代のベルリンに置き換え、オリジナルの登場人物や独自の解釈を付け加えながらも、原作のエッセンスがしっかりと息づく文芸ロマンに仕上げている。『善き人のためのソナタ』『ドレスデン、運命の日』『素粒子』『厨房で逢いましょう』『4分間のピアニスト』など、多様な秀作を次々と世に送り出しているドイツ映画界から、新たに届いた必見の話題作といえよう。
 観る者を瞬く間に映画へと引き込むのは、秘密の館が提供するセクシュアルな悦楽の特異さである。プロの娼婦が男性をもてなす通常のそれとはまったく違い、ここでは深い眠りに落ちたままの娘が一糸纏わぬ姿で差し出される。特殊な麻酔のようなもので眠らされているらしい娘たちは、顧客がその場にいるうちは絶対に目を覚ますことがない。館を運営するマダムは「悪いおふざけはなさらないでください」「娘を起こそうなどとなさらないように」などと幾つかの注意事項を述べ、夜が明けると朝食を用意し、顧客を館から送り出していく。「娘たちは目を覚ましたとき、何も知りません。誰が自分のそばにいたのかも。ですから、ご心配はいりません」。いったい、このマダムは何者なのか。なぜ、この館は老年客だけを招き入れるのか。時折、真夜中にやってくる男たちが、館から車で運び出す荷物の中身は何なのか。そしてマダムは、どのようにして娘たちをここに連れてきて眠らせているのか。さまざまなミステリーを提示するこの映画は、妖しいエロティシズムを濃密に匂い立たせつつ、犯罪スリラーめいた危うい緊迫感をはらんで進行していく。
 経験豊かな娘、見習いの娘、情熱的な娘……。主人公エドモンドは館を訪れるごとに新しい“眠れる美女”と出会い、ふくよかで瑞々しい肉体の温もりやそこから放たれる甘美な匂いに胸を高鳴らせ、官能の渦に溺れていく。このめくるめく非日常的なエロス体験は彼の内に眠っていた情熱を激しくかき立てる一方、事故で他界した妻と娘、そして優しかった母親や若かりし頃の初恋の記憶までも呼び覚ます。エドモンドが秘密の館を訪れる5つの夜の出来事を通して、人間の性、孤独、老い、死といった根源的なテーマを浮かび上がらせる映像世界からひとときも目が離せない。原作小説にはない荘厳かつ神秘的なラスト・シーンも本作の大きな見どころとなる。
 監督、製作、脚本、主演を兼任し、このセンセーショナルな企画に挑んだヴァディム・グロウナは、俳優として40年以上も活躍しているベテランで、最近では『4分間のピアニスト』に出演。監督としてもカンヌ国際映画祭カメラドールの受賞経験をもち、数多くの映画、TV作品を演出してきた鬼才である。現代人の寂寥感を象徴するかのように古都ベルリンの風景を捉え、鉛色の空にカラスが舞う不吉なショットで“死の影”を表現した繊細な映像は、『フラミンゴの季節』の監督でもあるシーロ・カペラッリが撮影を担当。ヨーロッパ的な退廃美に満ちた秘密の館のシーンにおける流麗な移動撮影も見ものだ。
 また、ある思惑を胸に秘めて主人公を館へと誘う友人コーギを演じるのは、ドイツ語圏の国際的な名優マクシミリアン・シェル。さらに、顧客に心を許そうとしない厳格なマダムに扮して圧倒的な存在感を放つ舞台女優アンゲラ・ヴィンクラーなど、実力派が脇を固めている。

ストーリー


エドモンドはすでに老齢に差し掛かった事業家である。15年前、妻と娘を自動車事故で亡くしてから、夜の帳が下りると絶望感に包まれ、待つ人の無い家には滅多に帰らなくなっていた。空いていた高速道路で、娘を乗せた妻はなぜ運転を誤り橋から峡谷に落ちたのか。離婚話でお互いが貶めあっていた時期に、エドモンドを苦しめたくて自殺したのかもしれないと自らに苛まれている。その様子を見ていた友人のコーギが、君にぴったりだとある館(メゾン)に行く事を勧める。老齢の男性が通うその館は、深く眠らされた一糸も纏わぬ美少女がベッドに横たわり、お客と一夜を共にする。何をされたのかも、誰が傍らにいたのかも、眠り続ける少女たちには解らない。
初めてその館を訪れた夜。お客と少女の世話をする上品でミステリアスなマダムに案内され、エドモンドは部屋へ入った。深紅の怪しげなクロスと豪華なシャンデリアのある部屋を抜けると、日本風の屏風とガウン、照明で飾られた部屋へ続く。さらにその奥には、今は使われていない様子の家具とともに、布を懸けたマリア像が置かれた部屋がある。日本風の屏風の傍、天上から吊り下げられた黒いレースのカーテンが、鮮やかなピンクのサテンで覆われた大きなベットを囲い、その奥に横たわる美少女の白い肌を透かせている。服を脱ぎ少女に寄り添うとまるで動き出しそうな温かみを感じるが、彼女は乱暴に扱っても目を覚まさなかった。この少女からは離乳前の子供の匂いがしている。乳の匂いが、60年以上前の母の匂いを思い起こさせた。そんな昔の事を覚えているのだろうか・・・、少女の香りに包まれたまま、エドモンドは眠りに就く。
2週間後、少女を午後11時までに眠らせておく、というマダムの言葉に従い、エドモンドは時間通りに館を訪れた。今夜の娘は美人で経験豊かだというが、何を意味するのかエドモンドには解らない。少女は深く眠ったままである。しかしなぜかこの少女とは、眠ったままでも通じ合い、愛し合っているような気持ちになる。すっかりこの館の虜になった彼は、規則に反して少女が目覚めるのを見たいと思い、街で出会ったら声を懸けたいと言い出す。マダムはつまらぬ感情は禁物だと、規則を理由にエドモンドを近づけない。
4日後、突然館を訪れたエドモンドは、見知らぬ者のように玄関先で追い返される。深く詮索をしようとしたのがまるで解ったように、事情が変わったのだからもう行かない方がいいのではと、コーギが注進するが、エドモンドは聞かなかった。
1週間後、マダムは少女をあてがい、後をエドモンドに任せると自分は部屋を出て行った。前回きつく当たったのは、必ず来ると思っていたからだと話すマダム、一体何者なのかとふとエドモンドは思う。年配だが美しく、成熟した女性の妖しい魅力に包まれている。今回の少女は“眠れる美女の見習い”だった。彼女が慣れていないため、扱いに気を遣わなければならない。その傍らでまた、エドモンドはある女性を思い出していた。夜明けに愛し合った後、結婚するのと言ったハンブルグの女性。
この後、いつものようにコーギを尋ねた。しかし門のところで止められて、会うことも叶わなかった。なぜなのか理由も聞かせてくれない。「お気をつけて」メイドは言いながら門を閉める。
違う寒い日の夜。今度は情熱的な女の子だった。この夜は、10歳の頃肺炎で生死をさ迷った時、母がエドモントを救ってくれた時の事を思い出す。反対に母が腸チフスで助からないといわれた時、髪を食べろといわれ、自分のでは足らずエドモンドの髪を食べた。彼が丸坊主になる頃、母は奇跡的に助かったのだ。少しは眠ったのだろうか、マダムの声で起される。
2日後、館を訪れたエドモンドは、先頃新聞に載った老人が死亡した記事の件でマダムに詰め寄る。突然死の老人の名前を決して認めようとしないが、この館で死んだ老人がいることは暗に認めた。ある夜、マダムが人を使って、布に包まれた何かを運び出す瞬間を見ていた。それを承知でエドモンドも来ていたのだ。老人が死んだ時も、“どんな時も目覚めない工夫”をしているから、娘は何も気づかなかったと話す。その夜は、妻と娘の命日だった。褐色の肌をした少女と、白い肌をした少女の二人がエドモンドを迎えた。睡眠薬を飲んで、再び様々なことを思い出し考えているうち、褐色の肌の少女がベットからゆっくりと床へ崩れていった・・・。 

スタッフ

原作:川端康成「眠れる美女」
監督・脚本:ヴァディム・グロウナ
製作:ヴァディム・グロウナ、レイモンド・タラバイ
撮影監督:シーロ・カペラッリ
美術:ペーター・ヴェーバー
衣装:ルーツィェ・ベイツ
メイク:イェカタリーナ・エルテル
音響:トーマス・クノップ
脚色:チャーリー・レーツィン
音楽:ニコラウス・グロウナ、ジギー・ミュラー

キャスト

ヴァディム・グロウナ
アンゲラ・ヴィンクラー
マクシミリアン・シェル
ビロル・ユーネル
モナ・グラス
マリーナ・ヴァイス
ベンヤミン・チャブック
ペーター・ルッパ

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