原題:Irina Palm

普通の主婦が迷い込んだ“ラッキー・ホール”。 そこには思いがけない発見と幸せが待っていた−−。

2006年/イギリス、フランス、ベルギー、ドイツ、ルクセンブルグ/カラー/103分/ 配給:クレストインターナショナル

2007年12月8日、bunkamuraル・シネマにてロードショー

公開初日 2007/12/08

配給会社名 0096

解説


『やわらかい手』は、何が起きるかわからない人生そのものを見事にすくい上げ、その痛快なラストには思わず拍手を送りたくなる素晴らしい人生の逆転劇だ。愛する者のために身を挺す一人の女性の姿を通して、愛はどんな世界でも何よりも強く美しく、どんなときも誇りを失わずに崖っぷちで踏ん張る勇気を与えてくれる。観客は、刺激的な性風俗の世界への覗き見的な興味から、しだいに強くて優しい主人公・マギーの母性的な魅力に心奪われ、その底力が発揮されるときの痛快さに喝采を叫ぶ。普通の主婦・マギーに、捨て身の行動に走らせた原動力は、何の見返りも求めぬ孫への無償の愛。愛する者を守るためには、犠牲も恐れず、何ものにも揺るがない。肝っ玉の据わった彼女は、まさしく女という生き物そのものだ。どんな境遇にあっても誇りを失わず、崖っぷちで踏ん張る姿は、潔く美しい。そして、最後に彼女が手にしたものを見たとき、観客の心は暖かい感動に満ち、ひとりの人間が持つ可能性に勇気づけられることだろう。
圧倒的な母性を持つ主人公マギーを演じたのは、かつてミック・ジャガーの恋人としてだけでなく、貴族出身の気品と美しい容姿で世界中を虜にした伝説のミューズ、マリアンヌ・フェイスフル。スターの座からの転落・ドラッグ中毒・ホームレスなどの壮絶な実人生を乗り越え、女優としての堂々たる復活を果たした。平凡な主婦が自信をつけ、女としての魅力をしだいに開花させていく変化を見事に演じきる。人生のどん底を知る彼女だからこその説得力ある演技と圧倒的な存在感は、観る者の心をつかんではなさない。近年『マリー・アントワネット』(06)のマリア・テレジア役や『パリ、ジュテーム』(06)のガス・ヴァン・サント監督編への出演など、印象的な脇役での出演を重ねてきた彼女だが、本作の脚本を読んで即座にオファーを快諾、『あの胸にもう一度』(68)以来実に38年ぶりの主演映画となる。マギーの揺るがない強さや潔さは、マリアンヌ・フェイスフルその人自身に重なる。彼女は、年輪を重ねた今もなお、「美しい人」であり続ける。
「イキイキとした脚本と素晴らしい演技に、無駄のない演出が加わって最高の映画が生まれた」という絶賛を受けた本作のメガホンをとったのは、短篇映画やCMで活躍するベルギーの精鋭、サム・ガルバルスキ。刺激的な舞台設定ながら、色調を押さえた気品ある画面を作り上げ、簡潔なセリフと繊細な表情、間を大切にした演出によって感情の動きをリアルに映し出した。原案・脚本を手がけたフィリップ・ブラスバンは、映画の脚本を手がける他に、小説家としても活躍している。マリアンヌ・フェイスフルに勝るとも劣らぬ存在感で強烈な印象を残すのは、マギーと心通わせるセックスショップのオーナー・ミキを演じたミキ・マノイロヴィッチ。『アンダーグラウンド』(95)をはじめとするエミール・クストリッツァ監督作品の常連である彼は、旧ユーゴスラビアを代表する実力派俳優。風俗業界で生き延びてきたタフで非情なビジネスの顔と、その陰に見え隠れする少年のような心を、陰影に富んだ演技で見事に表現した。息子夫婦を演じるケヴィン・ビショップとシボーン・ヒューレットは共に次世代を担う俳優として、イギリス本国を中心に数々のテレビドラマ、映画への出演が続いている。イギリス、フランス、ベルギー、ドイツ、ルクセンブルグといった実にEU5カ国が本作の製作に参加。ヨーロッパの精鋭たちの才が集結し、魅力的な大人の映画が誕生した。

ストーリー


ロンドン郊外の小さな町。中年の主婦マギー(マリアンヌ・フェイスフル)は、難病に倒れた孫のオリーの治療費をまかなうため、住み慣れた家さえも手放ししていた。それほどでに、この小さな孫を愛していたのだ。しかし、オリーの病気は悪化するばかり。

ある日、マギーと息子夫婦のトム(ケヴィン・ビショップ)とサラ(シボーン・ヒューレット)は、医者から「6週間以内にオーストラリアで特別な手術を受けなければオリーの命が危ない」という残酷な宣告を受ける。息子夫婦には費用を工面する余力はなく、マギーは自分がなんとかしようと必死になるが道は開けない。絶望の中ふらふらと迷い込んだのは歓楽街のソーホー地区。偶然目にした「接客係募集・高給」の貼り紙に思わず飛びついた。

しかし、そこは壁にあいた穴越しに手で男をイカせる”ラッキー・ホール“の風俗店だった。オーナーのミキ(ミキ・マノイロヴィッチ)は、ウェイトレスの職を想像している世間知らずの中年主婦に呆れながらも、そのなめらかな手に、「接客」業の素質を見て取り、彼女を雇おうと考える。驚きあわてて逃げ出すマギー。だが、残された道はない。覚悟を決めて「仕事」を始めてみると、意外にも彼女はゴッド・ハンドの持ち主だったのだ!

長蛇の列ができる売れっ子になっていくマギーについた源氏名「イリーナ・パーム(手のひらイリーナ)」。その名は瞬く間にソーホー中に広まっていく。一方、オリーの病状は、ますます深刻になっていた。一刻も早く手術費を工面したいマギーは焦るばかり。図らずも迷い込んでしまったこの世界で彼女の人生は思いがけない方向へ廻り始めていくのだが、その先にあるものは?

スタッフ

監督:サム・ガルバルスキ
脚本:フィリップ・ブラスバン
サム・ガルバルスキ
マーティン・ヘロン
撮影:クリストフ・ボーカルヌ

キャスト

マリアンヌ・フェイスフル
ミキ・マノイロヴィッチ
ケヴィン・ビショップ
シヴォーン・ヒューレット
ジェニー・アガター

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