原題:The Namesake

名匠ミーラー・ナーイル監督が贈る、 ピュリツァー賞受賞作家・ベストセラー小説の待望の映画化!

2006年/アメリカ作品/原題:The Namesake/上映時間:2時間2分/ビスタサイズ/ Dolby Digital SR・SRD/日本版字幕:太田直子/オリジナル・サウンドトラック:ユニバーサル クラシックス&ジャズ 原作:ジュンパ・ラヒリ著「その名にちなんで」(小川高義訳/新潮クレスト・ブックス/新潮社刊) 配給:20世紀フォックス映画

2008年06月06日よりDVDリリース 2008年12月22日よりシャンテシネほか全国ロードショー

© 2006 Twentieth Century Fox

公開初日 2007/12/22

配給会社名 0057

解説


 人は誰でも名前を持っている。そして、ひとつひとつの名前には、付けた者にしかわからないドラマがある。よりよい未来を求めて、インドからアメリカへ渡って来たアショケとアシマの夫妻は、生まれてきた我が子に「ゴーゴリ」と名付けた。その名に宿る奇跡が、子供の将来に限りない幸福をもたらすと信じて——。
 デビュー作の『サラーム・ボンベイ!』でカンヌ映画祭のカメラ・ドール(新人監督賞)を受賞し、『モンスーン・ウェディング』でヴェネチア映画祭金獅子賞に輝いたミーラー・ナーイル。周囲の偏見とお互いのカルチャー・ギャップを乗り越えて結ばれていくカップルや、辛い過去に訣別を告げて新しい愛に漕ぎ出していく女性たちの姿を、力強く、情感豊かに描いてきた彼女は、国際舞台で活躍する世界有数の女性監督のひとりだ。そんなナーイルが、ピュリツァー賞作家ジュンパ・ラヒリのベストセラー小説を映画化。長い年月をかけて熟成されていく夫婦の愛、そして、名前をめぐって反発しあいながらも決してちぎれることのない親子の絆の物語を、心に染みるタッチで描きあげた。本作は、熱い涙と豊かな感動に満たされた家族のドラマである。
 インドで見合い結婚をした若いカップルを中心に展開する物語は、移住先のアメリカで新しい家族を作り上げていく2人の30年におよぶ軌跡をたどっていく。胸を期待と不安でいっぱいにしながら、右も左もわからないニューヨークで新生活をスタートさせる新妻のアシマ。そんな彼女を、不器用ながらも精一杯の優しさで見守るアショケ。お互いをよく知り合う間もなく一緒になったふたりは、夫婦喧嘩、出産、親の死といった家庭内の「事件」を乗り越えるたびに、お互いへの理解を深め、絆を強めていく。その夫婦愛の濃密さが増していく過程を、ナーイル監督は女性ならではの細やかなセンスで描写。同時に、アシマの女性としての成長ぶりを鮮やかに捉え、観る者の共感をぐっと惹きつける。
 その夫妻が、無償の愛を注ぎかける息子のゴーゴリ。アメリカ生まれの彼は、故郷の慣習を重んじる両親との間に、世代とカルチャーの両方のギャップを感じながら成長。高校卒業を機に改名すると言い出したり、ブロンドの恋人を実家に連れてきたりして、親たちをハラハラさせる。そんなゴーゴリが、父の死という人生最大の試練に直面したとき、アショケとアシマの子供として生まれたことに誇りを見出し、そこに自分自身のアイデンティティを見出していくところは、劇中の最も心揺さぶるエピソードだ。100%わかりあうことはできなくても、心の深いところで結びついている家族。子供の幸せを願う親と、親の幸せを願うようになっていく子供の情愛を丹念に描き出したドラマには、誰もが、自分自身の家族アルバムを見ているような懐かしさと温かさを覚えずにはいられないだろう。
 ヒロインのアシマに凛とした美しさを光らせるのは、インドで50本以上の映画に主演し、数々の賞を受賞している美貌の演技派女優タブー。夫のアショケには、『マイティ・ハート/愛と絆』や『ダージリン急行』などのハリウッド映画でも活躍する国際派のイルファン・カーンが扮し、飄々とした味で魅了する。さらに、『Harold & Kumar Go to White Castle』でブレイクした人気の若手俳優カル・ペンが、恋愛とアイデンティティの問題で揺れ動くゴーゴリを熱演。新境地を開拓したことが、全米公開時に大きな話題を呼んだ。
 原作は、2003年の出版と同時に国際的なベストセラーになり、ニューヨーク・マガジンのブック・オブ・ザ・イヤーに選ばれたジュンパ・ラヒリの処女長編。脚色は、『サラーム・ボンベイ!』や『ミシシッピー・マサラ』にも参加したスーニー・ターラープルワーラーが、ナーイルと共同で行っている。撮影監督は、ジム・ジャームッシュやアン・リーとのコラボレーションで知られるフレデリック・エルムズ。今回、彼とナーイルは、アショケ夫妻の故郷であるインドのコルカタと、彼らの第2の故郷となるアメリカのニューヨークを、橋や雑踏のロケーションでリンクさせていく映像を思いついた。ひとつの命がニューヨークの橋のたもとで生まれ、ひとつの命がコルカタの橋の下で消えていくといった具合に、観る者の思いを、人間の営みのテーマへと誘う印象深い名場面を生み出している。美術のステファニー・キャロル、編集のアリソン・C・ジョンソン、衣装デザイナーのアージュン・バーシンは、ナーイル監督と何度も仕事を共にしているチームの常連たち。音楽は、イギリスで幅広い活動を行っているティン・ソーニーが担当。ベンガルの民族音楽が、現代のヒップホップにクロスオーバーしていくユニークな音を創り上げている。

ストーリー



誰もが親からもらう名前———。
そこには、それぞれの運命的なドラマが秘められているかもしれない。
これは名前をめぐって、親から子への信じられないほど深くて純真な愛を繊細に温かく描いた、涙と感動の物語。

1974年。コルカタの学生アショケ・ガングリー(イルファン・カーン)は、ジャムシェドプルに住む祖父を訪ねるため、列車で旅に出た。道中、親しくなった老人から、「海外に出て経験を積め」とすすめられるアショケ。その直後に、列車が転覆。夜の闇の中に放り出されたアショケは、手に握りしめていた本の切れ端が目印となり、奇跡的に救出された。彼の命を救った本のタイトル——それは、ニコライ・ゴーゴリの「外套」だった。
 3年後の1977年。老人のアドバイスに従ってアメリカの大学で工学を学んでいたアショケは、コルカタで親のすすめる相手と見合いをする。相手のアシマ(タブー)は、料理と英語が得意な美しい娘だった。「家族や友達と離れ、アメリカでひとりになっても大丈夫か?」と問うアショケの父に、「ひとりじゃなく、ふたりでしょう?」と答えるアシマ。その瞬間、アショケはアシマに恋をした。数週間後、家族や親戚に祝福され、盛大な結婚式をあげた2人は、アメリカへと旅立つ。
 ニューヨークでの新生活。アシマにとっては、お湯の沸かし方から買い物の仕方まで、日常のすべてを学ばなくてはいけない日々が始まる。夫は優しい先生だったが、アシマがコインランドリーで服を縮ませてしまったときは機嫌が悪くなった。最初の夫婦喧嘩は、それが原因だった。
 アシマがようやくアメリカの生活に慣れてきたころ、夫妻の間に元気な男の子が生まれた。ふたりとも、子供の名前は決めていなかったが、正式な名前が決まるまで、子供を愛称で呼ぶ故郷の慣習に従うつもりであった。しかし、産院から出生証明書に名前が必要だとせかされた2人は、とりあえず息子をゴーゴリと名付けた。アショケにとって、子供の誕生は、列車事故を生き延びたことに続く「2番目の奇跡」だったからだ。
 アシマは、頼る人のいない異国で子供を育てることに不安を感じ、できればインドに帰りたいと思った。いっぽうのアショケは、チャンスの国アメリカで育つことが、子供のためになると信じた。アシマは彼に従い、同じ夢を見ることにした。
 やがて娘のソニアが誕生。一家は郊外に一軒家を購入して移り住む。ゴーゴリが小学校にあがるころ、ガングリー夫妻は息子の正式な名前をニキルに決めた。しかし、ゴーゴリ本人は、ニキルよりもゴーゴリのほうがいいと主張。アショケは、「この国では子供が決める」と笑い、息子のわがままを許した。
 そんなゴーゴリ(カル・ペン)も、高校生になるころには、自分の名前を嫌うようになっていた。「よりによって、超変人のロシア人作家と同じ名前だなんて!」名前に不満いっぱいの彼は、高校の卒業祝いに、父から「ゴーゴリ短編集」を贈られても、少しもありがたいと思わなかった。その年、家族と出かけたインドでタージ・マハルを見学したゴーゴリは、大学で建築を専攻しようと決意。ついでに、名前をニキルに改めようと決めた。それを聞いたアショケは、「アメリカ流に好きにすればいい」と言っただけだった。
 数年後、ゴーゴリは建築家として自立。マンハッタンのアパートに住み、恋人のマクシーン(ジャシンダ・バレット)と自由に愛しあう日々を謳歌していた。そんなある日、オハイオの大学で教鞭をとることになったアショケの単身赴任が決まった。出発前日、マクシーンを連れて食事にやって来たゴーゴリを短いドライブに誘い出したアショケは、ゴーゴリの名前の由来になった列車事故のことを話す。「僕を思うたびに事故のことを思い出す?」という息子の問いかけに、「むしろそれ以降のすべてを思い出す。その後の毎日が天の恵みだ」と答えるのだった。
 ゴーゴリにとって、それが父との最後の会話になった。赴任先のオハイオで、アショケは心臓発作を起こし、あっけなくこの世を去ってしまったのだ。遺体を引き取りに行き、深い後悔にかられた。ゴーゴリの名に未来への夢と希望を託した父の思いを、なぜもっと優しく汲み取ることができなかったのか……と。昔、アシマの父が亡くなったときにアショケがしていたように、ゴーゴリは、頭を丸めて父の喪に服すのだった。
 アメリカの自宅で執り行われたベンガル式の葬儀。そして、インドで行われた散灰式。長男として、父を葬る務めを果たしたゴーゴリは、自分自身のベンガル人のルーツを意識することに、ある種の居心地のよさと誇りを感じるようになった。
 そんなゴーゴリの変化に着いていけなくなったマクシーンは去り、入れ替わりに再会した幼なじみのモウシュミ(ズレイカ・ロビンソン)と、ゴーゴリは結婚する。
 いっぽう、アショケの亡きあと、図書館員の仕事を続けることで寂しさをまぎらわしていたアシマの胸には、このままアメリカにとどまるか、帰国するかという迷いが生じ始めた。アショケと二人三脚で築いてきた幸せな結婚生活。それが終わりを告げたいま、自分の求める幸せはどこにあるのだろう? 第三の人生に思いをめぐらせるアシマは、ついにある決断を下す……。

スタッフ

監督:ミーラー・ナーイル
製作:リディア・ディーン・ピルチャー
エグゼクティブ・プロデューサー:小谷靖/孫泰蔵/ロニー・スクリューワーラー
共同プロデューサー:ロリ・キース・ダグラス/木藤幸江/
ザリーナ・スクリューワーラー
原作:ジュンパ・ラヒリ
脚本:スーニー・ターラープルワーラー
撮影:フレデリック・エルムズ

キャスト

カル・ペン、タブー
イルファン・カーン
ジャシンダ・バレット
ズレイカ・ロビンソン

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