2006年/日本/カラー/87分 配給:アートポート

2007年7月7日から13日、シアターN渋谷にてレイトショー 2007年7月21日から27日、シアターN渋谷にてレイトショー

© 2006 アートポート

公開初日 2007/07/07

公開終了日 2007/07/13

配給会社名 0014

解説


◆江戸川乱歩の最高傑作、4度目の映画化!
1925年に発表された『屋根裏の散歩者』は本格ミステリと乱歩独特の猟奇と耽美の世界が見事に融合した傑作として、21世紀の今なお多くの読者の心を掴かみ、70年の木俣堯喬監督、76年の田中登監督、94年の実相寺昭雄監督と過去に3度も映画化されている。これは乱歩映画では最多リメイクとなる。『村の写真集』(03)などほのぼのとした世界を得意とする監督の三原光尋は今までと180度違う世界観の映画に挑むこととなったが、4度目となる本作を乱歩にトリビュートしつつ、視聴覚への強い刺激を持った全く新しい“屋根裏”を創り出すことに成功している。
田中版、実相寺版では屋根裏からの完全犯罪を目論む“散歩者”郷田三郎を軸に、比較的原作に沿った展開をしていたが、本作では設定を現代に置き換え、郷田は死後もなお東栄館に息づく伝説の画家として描き、“散歩者”を女性とした大胆解釈を加え、乱歩の代名詞とも言える猟奇と耽美と時代感を最大限に散りばめたのが瀬々敬久監督との名コンビで『MOON CHILD』(03)、『刺青 堕ちた女郎蜘蛛』(06)などの脚本を手掛けた井土紀州。

◆覗き、情痴、殺戮、そして…。人間の本性を炙りだした乱歩世界の集大成!
雑誌記者の富岡奈緒子は、一部でカルト的な人気の亡き画家、郷田三郎のルーツを探るため、彼が生前に暮らしていた東栄館へ取材のために訪れる。そこの住人こそ、郷田が描いた作品のモチーフになった人たちであり、東栄館そのものが郷田の世界そのものなのである。
郷田は生前、屋根裏が好きだったことを耳にした奈緒子は、屋根裏に上ると天井の隙間から館の住人たちの密室となった部屋を覗き見た。不倫の情事に耽る男女の肉体、娘を虐待する母親の姿、そして…。奥の部屋を覗くとそこには…、かつて郷田が描いた作品と全く同じ光景があった。その光景とは…、“悲鳴”と“苦痛”と“殺戮”に満ちた猟奇の世界。奈緒子は見てはならないものを見てしまった、と同時に、この館には底知れぬ恐怖が棲み着いていることを悟る。

◆乱歩ワールドという屋根裏を這う散歩者たち
“散歩者”奈緒子を演じるのはグラビアクイーンから女優として見事に転身を果たした嘉門洋子。かつてない大胆な艶技を披露しているのも見所のひとつである。相手役の優介には『最終兵器彼女』(06)などの若手実力派・窪塚俊介が務め、翳ある青年を好演している。その他、劇団☆新感線などの舞台を中心に活躍している村木仁、『寝ずの番』(06)などの木下ほうか、『パッチギ! LOVE&PEACE』(07)などのでんでん、TVドラマを中心に活躍している遊井亮子、『紅薔薇夫人』の永瀬ひかり、『神の右手 悪魔の左手』(06)の名子役・清水萌々子などが脇を固めている。

ストーリー



編集者の富岡奈緒子は、おどろおどろしい作風でカルト的人気を得ている今は亡き画家、郷田三郎の特集記事の取材で、彼が生前に身を寄せていた東栄館を訪れる。館はあたり一面の草原と雑木林に囲まれ、まさに人の目を避けるようにひっそりと佇んでいる。東栄館には主人の山根、病気療養中の青年・桜井優介、借金取りに追われて館に辿り着いた阿久津夫妻と10歳になる娘のマドカ、そして家政婦のカオリが住んでいた。
郷田ファンでもある奈緒子は、館内に飾られた郷田の作品群に興奮を覚え、次々とシャッターを切っていく。到着した夜に悪夢にうなされた奈緒子が翌朝鏡を見ると、首筋や鎖骨のあたりに蝋(ロウ)が付着していた。訝しげに思う奈緒子であった。

奈緒子は優介の案内で館の周りを散策しながら、生前の郷田のことを聞きだそうとしていた。「絵がうまいただの精神病患者」と言い放つ優介。そんな言葉が気に入らず喰って掛かる奈緒子に「あまり首を突っ込まない方がいい」とクギを刺すと、優介はその場を去ってしまう。ひとりになった奈緒子は途中の湖畔でマドカと出会う。そこで奈緒子はマドカから、郷田は屋根裏が大好きだったことを聞かされる。
部屋に戻った奈緒子はベッドに横たわり天井を見上げると、付着していた蝋のことと、先ほどのマドカの言葉が脳裏によぎる。その夜、懐中電灯を片手に押入れから屋根裏に上った奈緒子は“散歩者”となって、天井から東栄館の住人たちの知られざる世界を目にする。二十日鼠とひとり戯れる優介、互いの肉体をむさぼり合う阿久津とカオリ、隣室でカオリの喘ぎ声を聞いてイライラしながらマドカにあたる母、そして一番奥の部屋を覗きこむと、そこには全裸のまま椅子に縄で縛り上げられている女性がいた。ハッとした奈緒子はその場を急いで立ち去る。
翌日、奈緒子は草原で切断された女性の指を発見するという不可解な出来事にも遭遇する。

一連の出来事に、この館には何かがある、と思った奈緒子は真実を確かめるために女性が縛られていた奥の部屋のノブに手をかける。しかし鍵が掛かって開かない。意を決した奈緒子は再び屋根裏へと足を運び、奥の部屋へと降りていく。まるで地獄を思わせるような赤い基調の内装。そこには昨日の女性が瀕死の状態で縛られていた。縄で縛られた柔肌の上を這う芋虫たち。まるで郷田の絵を彷彿とさせるその光景を、奈緒子は興奮しながらシャッターを切っていく。ドアの外からゴトッとう音を耳にした奈緒子は再び押入れに身を潜める。部屋に入ってきたのはナイフを持った顔面白塗りのピエロだった。ピエロは狂ったような笑い声を上げながら女性の身体を切り刻んでいく。この世のものとは思えぬ惨劇を目の当たりにした奈緒子は、この館には底知れぬ恐怖が棲み着いていることを悟る。取材を放り出して一刻も早く東栄館から逃げ出そうとする奈緒子であったが…。

スタッフ

監督:三原光尋 
原作:江戸川乱歩
製作:松下順一 
プロデューサー:武内健 
アシスタントプロデューサー:佐藤嘉一 
脚本:井土紀州 
音楽監督:遠藤浩二 
撮影:芦澤明子(J.S.C.) 
美術:中川理仁 
照明:米川史朗 
録音:二瓶尚穂 
VE:宇津野裕行 
編集:菊井貴繁 
助監督:菅原丈雄 
制作担当:村田亮
制作:円谷エンターテインメント 
製作:アートポート

キャスト

嘉門洋子
窪塚俊介
村木仁
永瀬ひかり
清水萌々子
遊井亮子
木下ほうか
でんでん

LINK

□公式サイト
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す