原題:Les Yeux clairs

第55回ベルリン国際映画祭フォーラム部門出品 第13回フランス映画祭ヨコハマ2005出品

2005年/フランス/カラー/87分/ 配給:アステア

2007年9月1日、渋谷シアター・イメージフォーラム他、全国順次ロードショー

公開初日 2007/09/01

配給会社名 0820

解説


フランスの村からドイツの森へ−−。
ずっと孤独と隣り合わせに生きてきたファニーがはじめて優しい愛に出逢うまでを描いた心のロードムービー

不思議な幸福感に溢れた大人のおとぎ話
ファニーはちょっと、いいえ、かなりおかしな女の子。女の子と言うには、もう、すっかり大人だけど……。
お兄さんのガブリエルと、お兄さんの妻と同居しているものの、どうにも居心地が悪い。
お父さんのお葬式に参列できなかったことも、心に暗い影を落としている。「私はお父さんに愛されていたの?」
そんなある日、兄嫁の秘密を目撃してしまったファニーは、イライラを募らせていく。
そこでファニーは一大決心。大きな目的を胸に秘め、冒険の旅に出る。
国境を越え、深い森を抜けていくと−−。
明るい光が差し込むログハウスに暮らす、若い木こりのオスカーに出逢ったファニーは、初めて優しい愛を知る。

物語は、フランスの兄の家での暮らしぶり、ドイツの森の中で見つけたひと時の安らぎと、前後半で微妙にテイストを変えながら紡がれる。うまく社会に馴染めない一人の女性の物語でありながら、その内面世界の変貌を繊細に細やかに、そしてユーも羅を湛えて描き出した本作は、見る者の心をほぐし、クスクス笑いさえ沸き起こす。
そして後半、言葉も通じない2人が、視線を交わすことで心を通わせていく交流は、何とも言えぬ幸福感に溢れ、眩しい輝きに満ちている。
“みにくいアヒルの子が、森でクマさんに出逢い、美しい白鳥となって飛び立とうとしている”−−そんなおとぎ話を思わせる映画である。

なぜか女性が癒されるファニーの魅力
ファニーの行動は、兄嫁から嫌われるし、村の子供たちからも変人扱いされるが、不思議と見る私たちは不快感を覚えるどころか、いつの間にかファニーの面白さ、純粋さ、正直さに惹かれていく。
お兄さんの部屋のクローゼットの中に隠れたり、旅の途中で、隣の人のパンを口に放り込んでおすまししたり。ファニーの言動に驚かされながらも、何だか憎めない、まるで子供みたいなそのキャラに、あなたも虜になってしまうだろう。
ファニーを演じた主演女優のナタリー・ブトゥフが、「彼女は臆病でもあり、ちょっとズル賢くもあり……、彼女のような人は数多くいる。誰かとうまく関係が結べず、馴染めないなんて人はたくさん」と言っているように、私たちはファニーの中に自分の断片を見つけるから、愛しく思えるのかもしれない。

コミュニケーション、人と違うこと、自己再生、ロハス生活など……現代の気になるテーマがいっぱい!
益々他人とのコミュニケーション能力の低下が指摘され、「人と違うこと」がイジメを誘引するような殺伐とした現代。監督が、「確かに病的なところはあるけれど、ファニーは自らの意思で孤立し、本当は他の人よりずっと強い。少なくとも彼女の兄や兄嫁よりはね」と語るように、これは“他人に合わせて自分を誤魔化し、妥協して社会に適合することを、そうした成長を拒否した女の子の話”でもある。そんな彼女が、不器用ながらも自分の居場所を見いだしていく姿が、人間関係に疲れ、ストレスを抱える現代女性の心に深く響くのだ。と同時に、人と繋がることにおける“言葉の無力さ”も感じさせてくれる。コミュニケーションの本質や、人と繋がることの意味、大切さを深く考え、心で感じさせてくれる映画なのだ。
一方で見終えた後、私たちの心に清涼感や瑞々しさが残るのは、映像による魅力も大きい。木こりのオスカーが暮らす森の中の暮らしは、現代人の憧れのロハス生活。大自然に抱かれ、木漏れ日を浴びながら、おいしい空気を胸いっぱいに吸う満たされた気持ちを、映像からたっぷり味わえるはずだ。
さらにファニーの“ダサ可愛いファッション”や、オスカーの家の居心地よさげな親密な空間、色とりどりの椅子椅子を抱えて歩く男の滑稽な姿、またその黄色の一脚がオスカーの家に置かれるなど、ユニークかつ精密な色彩設計、絶妙なセンスも本作の大きな魅力だ。

2005年ジャン・ヴィゴ賞を受賞!期待の若手有望監督

監督は、長編第2作となる本作で、新鮮味のある叙情的な作風が評価され、フランスの映画賞で新人賞にあたる「ジャン・ヴィゴ賞」を受賞したジェローム・ボネル。本作はまたベルリン国際映画祭「フォーラム部門」にも出品されている。01年の長篇デビュー作『Le Chignon d’Olga』もシカゴ国際映画祭で国際批評家連盟賞を与えられるなど、既に世界的に高い評価を得た新鋭。3月には新作『J’attends quelqu’un』の公開も控え、最近、復調を見せるフランス映画界で、まさに今、次世代を担う新たな存在として期待を集める注目の若手監督だ。

映画を彩る4人の個性派俳優たち
主演のファニーを演じたナタリー・ブトゥフは、ジェローム・ボネル監督が短編を撮り始めた頃からコラボレーションをスタート。近年ではパトリス・シェロー監督『ソン・フレール 兄との約束』、アルノー・デプレシャン監督『キングス&クイーン』や諏訪敦彦監督『不完全なふたり』など、作家性の強い作品に出演する個性派女優だ。
教師、兄、夫の顔をそれぞれ繊細に演じ分けたファニーの兄ガブリエル役のマルク・チッティもまた、監督と短編時代からの付き合い。主な主演作はパトリス・シェロー監督『王妃マルゴ』やジャック・オーディアール監督『天使が隣で眠る夜』など。
ガブリエルの妻セシルを演じたジュディット・レミーは、セドリック・クラピッシュ監督の短編や、ファニー役のナタリー・ブトゥフの短編監督作などに脇役として出演。
木こりのオスカーを演じたラルス・ルドルフは、ドイツ出身の前衛ミュージシャン。現在もバンド活動をしているが、その強い存在感は、主演を務めたタル・ベーラ監督の幻想的な映画『ヴェルクマイスター・ハーモニー』で証明済み。
4人の強い個性が、絶妙にぶつかり、融合し、『明るい瞳』の世界が完成した。

ストーリー

周囲から変人扱いされている女性ファニーは、当然のように世話になっている兄ガブリエルの妻とうまくいかない。耐えられなくなった彼女は、敬愛していた亡き父の墓のあるドイツへと旅立つ。ヒッチハイクの途中、ある農家で親切にされたファニーは、そこで一人の男性と出会い愛を育んでゆく・・・。デビュー作の前作で国際的な注目を集めたボネル監督の期待の第2作。

スタッフ

製作:ルネ・クライトマン
監督・脚本:ジェローム・ボネル
製作総指揮:ベルナール・ブイ
撮影:パスカル・ラグリフル
編集:ファブリス・ルオー
録音:ローラン・ベナイム
美術:アンヌ・バカラ
衣裳:キャロル・ジェラール
メイクアップ:イザベル・ニッセン
スクリプト:ロズリヌ・ベレック
音楽:ロベルト・シューマン
ピアノ演奏:イングリッド・サアコペル、ナタリー・ブトゥフ

キャスト

ナタリー・ブトゥフ
マルク・チッティ
ジュディット・レミー
ラルス・ルドルフ
オリヴィエ・ラブーダン
ポーレット・デュボスト
エリック・ボニカット

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