「ずっとひとりで作り続けてきた」アーティスト・奈良美智が はじめて「誰かと一緒に作りあげた」ときに生まれたもの

2007年/日本/カラー/93分/ 配給:東北新社

2008年02月22日よりDVDリリース 2/24〜3/2 シネマライズ 3/3〜ライズエックス他にて全国順次公開

(C)2006 Hako Hosokawa

公開初日 2007/02/24

配給会社名 0051

解説


街をつくりたい—
奈良美智とクリエイティブユニットgrafが共に描いた夢
2006年夏、弘前の古いレンガ倉庫にひとつの街が生まれた
YOSHITOMO NARA + graf
AtoZ
それは、3ヶ月で8万人を動員した奇跡の展覧会 
世界を巡る『AtoZ』への長い道のりを追った奈良美智完全密着ドキュメンタリー!

「AからZまでの26個の小屋が建ち並ぶ街並。ひょっとしたらそれ以上の数の。小屋をめぐるすべての旅は、その街に通じていました…」

この映画は、奈良美智の故郷、青森県弘前市の景観に溶け込む古いレンガ倉庫で、アーティストの奈良美智、豊嶋秀樹他graf AtoZチームと、大勢の人達の手によって作り上げられた、手作りの展覧会『AtoZ』に至るまでの旅の軌跡であり、アーティストの素顔、制作過程、奈良美智という人間がどこから来て、今どこに立っているのかが垣間見られる、ファニーでパーソナルなドキュメンタリーである。そして、二度と見られない架空の街『AtoZ』を追体験できる貴重な映像が詰まった作品だ。

奈良美智の作品の魅力。それはあえて語る必要もないだろう。それぞれの感じ方があるはずだから。それはこんな彼の言葉が一番象徴している。
「僕の書いた本を読んでください。僕は自分を説明するのが苦手だから…」
海外のジャーナリストにそう話す奈良美智の言葉が彼の表現理由そのものを表している。好きなロック音楽をかけ、自分の心の中に入りこみ、プールの底へ沈むようにあぐらをかきつつ、過去、現在、未来、の自分と対話する。そんな作業から生まれる“カタチ姿”がカンバスに表出する。そんな孤独な作業からしか生まれ得ない(だからこそ嘘偽りのない)“すべて”が、日本のみならず、海外でも広く評価される奈良美智の作品の“普遍性”に繋がる。
だが彼の描く“カタチ少女”が、少しずつ変わり始めていることに気づく人も少なくはないだろう。変化というのが、なだらかな曲線の中でいつ気づいたかということでしかないにしても、その過程で、大阪を拠点に活躍するクリエイティブユニットgrafの豊嶋秀樹との出逢いが少なからず影響しているはずだ。ドイツから日本に戻り、自分が不特定多数の“視線”に曝される以前の、悶々とした孤独な自分の部屋を再現したいという欲求を、具現化、またはその手助けをしてくれるアザー・ハーフの出現と共に、新しく刺激的な何かを見出すようになったのかもしれない。一人ではない、一人ではできない、共同作業の魅力は、そこに信頼関係という新しい感情を生み出す。
そこから二人の旅が始まった。そして一度開かれた心には、実作業と共に、より多くの人々が入り込むようになる。ソウル、横浜、ニューヨーク、大阪、ロンドン、バンコク・・・そして時間と体験と作品が集積し、彼の故郷、青森県弘前市で開催された『AtoZ』展に辿り着く。街のランドマークのレンガ倉庫に、彼の地元の幼なじみや、あらゆる場所から集まった数千人のボランティアが加わり、彼を頭とする、ひとつの大きな“生き物”が動き始める。
「友だちができた感じ…」と彼は自分の中で起こり始めた変化について語る。「良い言い方をすると、大人になったのかな…」と呟く。「でも悪い言い方をすると、自分より人を大切にしすぎてるかな…」と。
そんな変化は彼の作品にも顔を覗かせ始めていた。“少女”の表情はやわらかくなり、色彩は温かさを讃える。だがすでに、それに対する彼の反応も入り込み始めていた。心地よさへの不安、そんな自分への困惑…。かつては世界を敵に回していたはずの少女に、抱きしめられた時の感情が理解できず、「なんで…」と呟くような迷いの色が帯び始める。
だが時間の巻き戻しは利かない。もう前へ進むしかない。アート施設主導ではなく、自分たちの手で作った、大規模だが、パーソナルな展覧会は画期的な試みだった。そして弘前の『AtoZ』展は、8万人の動員を記録した。
そして祭の終焉と共に、増えた仲間も、それぞれの道へ散っていくことになる。
だが旅はまだ続く。奈良美智とgraf豊嶋秀樹の共同作業は、そのまま金沢21世紀美術館の『Moonlight Serenade – 月夜曲』へ続くことになる。そして今後も、先のことは分からない、と彼らは云うだろう。小学生のように、肩を並べ、互いの高い志と、秘密基地を作るような遊び感覚を大切にしながら、たとえ、地球の違う場所にいたとしても、夢を語っていくに違いない。

ストーリー

スタッフ

監督:坂部康二
アニメーション:STUDIO4℃
音楽プロデューサー:伊藤圭一
音楽監督:井田栄司
エンディング:Eastern youth「荒野に進路を取れ」
協力:小山登美夫(小山登美夫ギャラリー)、AtoZ実行委員会

キャスト

奈良美智
graf(豊嶋秀樹、野澤祐樹、青柳亮、小西康正、高野夕輝、脇本秀史)
ナレーター:宮崎あおい

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