2006年/日本/95分/カラー/35mm 配給:旦々舎

2007年5月5日、シネマアートン下北沢にてロードショー 2007年1月4日、シネマアートン下北沢にてロードショー

公開初日 2007/01/04

配給会社名 0268

解説


百年早かった天才!
尾崎翠の不思議で可笑しい世界を完全映画化!
 私たちは、98年に『第七官界彷徨‐尾崎翠を探して』(浜野佐知監督)を製作しました。東京国際女性映画祭に出品した後、岩波ホールでロードショー公開し、国内の女性センターや世界各地の映画祭、大学などで上映してきました。この作品は、翠の代表作である「第七官界彷徨」と、その当時は謎とされていた翠の後半生を、モザイクのように描いたものですが、翠の心髄である、シュールなまでの奇想と、比類のないユーモアの精神は、国境や人種を越えて伝わることが実証されました。また、この映画をきっかけに、地元鳥取でも、翠を世界に向けて発信する「尾崎翠フォーラム」が発足し、今年で6回を迎えようとしています。
 前作の製作当時は、県内でも尾崎翠を知る人が少なく、また誤った不幸伝説が流布していたため、実人生にスポットを当てる必要がありました。この映画によって、困難な時代を生きた、等身大の尾崎翠像が定着したものと自負しています。しかし、尾崎翠に、啓蒙や解説が必要な時期は、すでに過ぎました。私たちは、翠の作品世界そのものと向かい合い、「歩行」「地下室アントンの一夜」「こほろぎ嬢」という、翠が筆をおく直前に執筆した、最後の短編小説3作を、併せて映画化します。
 これらの作品は、長い間、方法的な模索を重ねてきた翠が、「第七官界彷徨」で独自の世界を築き上げ、精神的にも技法的にも、ピークの時期に書かれました。それぞれ独立した短編小説ですが、登場人物も共通し、愛すべき人間心理の分裂を描いた、連作とも言うべき作品です。ここで翠は、目の前の具体的な現実とは異なる、人の心の中の、もう一つ別な現実の可能性や、普通、人間の男女の間に成立すると思われている「恋愛」の概念を拡大させ、宇宙の目から、地上の人間や動物、植物、鉱物の関わり合いを、ユーモラスに見つめています。なかでも、一人の人間の中の男性と女性の分裂を描いた、ウィリアム・シャープとフィオナ・マクロードのエピソード(「こほろぎ嬢」)は、今日のジェンダーやセクシュアリティの問題を予見した、あまりにも先駆的な問題提起でした。
 私たちが今回取り組むのは、翠の奇想とユーモアに支えられた「不思議の国の恋愛映画」です。なお、「地下室アントンの一夜」は、翠にとって最後の小説となりました。

ストーリー


 故郷で、お祖母さんと暮らしている少女、小野町子。東京から心理学研究者、幸田当八が訪れ、戯曲の恋のセリフを、町子に朗読させる。ロマンチックな恋のセリフを、何日か朗読した町子は、当八が去った後、彼の面影を胸にいだいて、毎日を夢見るように暮らす。
 町子は、お萩とおたまじゃくしのビンを持って、引きこもり詩人の土田九作を訪ねる。「カラスは白い」という詩を書いた九作が、今度はおたまじゃくしの詩を書くと聞き、憤った動物学者の松木氏が、町子に実物を届けさせた。九作は、町子が深いため息をつくのを聞き、彼女が片恋をしていることに気づく。町子に惹かれる九作。だが、現実に恋をしてしまうと、恋の詩が書けなくなるといって、自分から町子を遠ざける。
 こほろぎ嬢の恋の相手は、図書館の奥で見つけたイギリスの神秘派詩人シャープ氏と、恋人のマクロード嬢だ。お互いに熱烈なラブレターまで書いた二人だが、実は…。

スタッフ

監督:浜野佐知
原作:尾崎翠

企画:鈴木佐知子 
脚本:山崎邦紀 
撮影:小山田勝治
照明:津田道典  
美術:塩田仁  
デザイン:奥津徹夫
音楽:吉岡しげ美 
編集:金子尚樹 
助監督:酒井長生
制作:横江宏樹 
ヘアメイク:馬場明子
ポスターデザイン:横山味地子 
ポスター写真:池田正晰
題字:住川英明
製作:株式会社旦々舎

キャスト

石井あす香 
鳥居しのぶ
吉行和子 
大方斐紗子
片桐夕子 
平岡典子
外波山文明 
宝井誠明 
野依康生
イアン・ムーア 
デルチャ・M・ガブリエラ
リカヤ・スプナー 
ジョナサン・ヘッド

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