原題:August Rush

きっと会える。この音の先に、愛が聞こえるから。

2007年/アメリカ/カラー/114分/ 配給:東宝東和

2008年10月22日よりDVDリリース 2008年6月21日(土)、日比谷スカラ座ほか全国ロードショー

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公開初日 2008/06/21

配給会社名 0002

解説



顔も名前も知らない両親と自分は、心に聞こえてくる音を通じてつながっている。そう固く信じ、施設で過ごす孤独な日々を耐えている11歳のエヴァン。ある晩、電線を伝う不思議な音に導かれるように、施設を抜け出してマンハッタンへやって来た彼は、ストリート・ミュージシャンのグループと生活を共にしながら、両親探しの第一歩を歩み出す。生まれて初めて楽器を手にしたことで、瞬く間に開花するエヴァンの音楽の才能。“僕が奏でるギターの音は、この世界のどこかにいる両親の耳にきっと届く”—その思いを胸に、街角で無心に演奏するエヴァン。そんな彼の心の声が通じたかのように、母のライラは死産だったと思っていた息子の行方を探し始め、父のルイスも、見えない運命の糸にたぐり寄せられるようにニューヨークへやって来る。果たしてエヴァンは、彼ら両親に会い、愛を伝えるという夢をかなえることができるのだろうか?

『ネバーランド』でピーターパンのモデルになった少年を演じ、世界中の映画ファンを虜にしたフレディ・ハイモア。続く『チャーリーとチョコレート工場』でも、まっすぐな心を持つチャーリー少年の役に自然体の魅力を輝かせた彼が、今度は、音楽のパワーを信じる心で夢をかなえていく少年の役に、健気な存在感を光らせる。本作『奇跡のシンフォニー』は、必ず会えると信じて両親を探す主人公エヴァンの一途な姿に涙し、再会の奇跡を呼び起こす音楽の魔法に心揺さぶられずにはいられない、珠玉のファンタジー・ドラマだ。

 感動的なクライマックスを予感させる物語は、主人公のエヴァンが、両親を探す冒険の中で、音楽を媒介に様々な人々と出会い、埋もれていた才能を開花させていく足取りをたどっていく。元ストリート・ミュージシャンのウィザードのもとで初めてギターに出会い、演奏によって自分を表現する術を学んだエヴァンは、聖歌隊の少女ホープから楽譜の読み方を習ったことをきっかけに、作曲に挑戦。両親へのあふれる思いを音符に託し、壮大なラプソディを創り上げていく。その過程で人間としても大きく成長を遂げていくエヴァン。誰からも理解されない悲しみを内に秘めた孤独な孤児だった彼が、人々との触れ合いを通じて自身の才能に目覚め、人間性を豊かにふくらませていく姿は、音が旋律となり、旋律が音楽になっていく過程とよく似ている。そして、エヴァンの投げかけた単音が、母のライラ、父のルイスの魂と響きあい、家族という和音に昇華していくドラマには、コーラスのハーモニーがぴたりと決まったような、すがすがしい感動が満ちあふれているのだ。

 そんな物語の感動を一身に担うフレディに加え、彼をサポートする共演者も魅力の顔ぶれだ。才能あるチェロ奏者だったが、ある事故をきっかけにコンサート活動をやめてしまうエヴァンの母ライラを演じるのは、『ウェイトレス 〜おいしい人生のつくりかた』で注目を集めたケリー・ラッセル。ライラとひと目惚れの恋に落ちながら、仲をひき裂かれ、音楽への情熱を失ってしまうロック・ミュージシャンのルイスを演じるのは、『マッチポイント』の美形の演技派、ジョナサン・リース=マイヤーズ。ロマンチックな恋のエピソードでドラマを盛り上げる2人に加え、エヴァンにストリートの厳しさを教えるウィザードの役で、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』のオスカー俳優ロビン・ウィリアムズが出演。さらに、『クラッシュ』、『ブレイブワン』などで売れっ子街道を歩むテレンス・ハワードが、ライラとエヴァンの母子再会に尽力する児童福祉局職員に扮し、人間味のある演技で魅了する。
 監督は、長編デビュー作の『Disco Pigs』で数々の賞を受賞し、父ジム・シェリダン監督によって映画化された『イン・アメリカ/三つの小さな願いごと』の脚本でアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞にノミネートされたカーステン・シェリダン。エヴァンの目線で物語を語り継ぐ繊細なストーリー・テリングや、音と映像を通じて登場人物の情感を伝えていく演出に、新人ばなれした手腕を発揮している。
 スタッフにも一流のメンバーがそろった。エヴァンの音感を刺激する自然と都会の情景を、ダイナミックな映像で捉えた撮影監督は、アカデミー賞候補になった『グラディエーター』をはじめ、リドリー・スコット監督とのコラボレーションで知られるジョン・マシソン。ニューヨークの息づかいを的確に捉えたプロダクション・デザインは、『ボーイズ・ドント・クライ』のマイケル・ショウ。編集には、『愛と哀しみの果て』などで3度アカデミー賞にノミネートされている大ベテランのウィリアム・スタインカンプがあたっている。
 映画の第2の主役とも言うべきテーマ音楽を手がけたのは、『ザ・シューター/極大射程』のマーク・マンシーナと、『ライオン・キング』でオスカーを受賞したハンス・ジマー。ヴァン・モリソンの「ムーンダンス」から、クラシック、ゴスペルまで、様々なジャンルがクロスオーバーする劇中曲の音楽監修は、ジェフリー・ポラック、ジュリア・マイケルズ、アナスターシャ・ブラウンの3人のスーパーバイザーが担当。彼らが監修したナンバーで、ハーレムのインパクト・レパートリー・シアターが本作のために書き下ろした「Raise It Up」は、第80回アカデミー賞の主題歌賞にノミネートされた。
 
 「音楽は身のまわりのあちこちにある。 あとはただ耳をすませばいいんだ」
エヴァンのように、楽器の弾き方がわからなくても、楽譜が読めなくても、リズムに身をゆだね、気持ちを表現すれば、必ず伝わるものがある。心の耳をすませば、聞こえてくる何かがある。
 両親に会いたいと願うエヴァンの真心(まごころ)を、音楽の持つ不思議なチカラが包み込んで起こした奇跡の化学反応。『奇跡のシンフォニー』 は、そのパワーに驚かされると同時に、音楽は決して限られた人たちのものではなく、誰もがその喜びを享受できることに気づかせてくれる。

ストーリー




エヴァン・テイラー(フレディ・ハイモア)は、ニューヨーク州ウォルデンの男子養護施設で育った11歳の少年。風の音からベッドがきしむ音まで、あらゆる音がメロディとして感じられるほど鋭い音感を備えた彼は、音楽を通じて、顔も名前も知らない両親と自分が結ばれていると固く信じている。そのせいで、施設の仲間に変人と呼ばれ、いじめにあうエヴァン。そんな彼の面接を受け持った児童福祉局の職員リチャード(テレンス・ハワード)は、施設を出て養子になることをエヴァンにすすめるが、心の音で響きあっている家族が必ず迎えに来ると信じているエヴァンは、「ここを離れたくない。だって生まれて最初に来たこの場所から離れたら、パパとママが僕を探し出せなくなるから」と、涙を流すのだった。
 エヴァンの直感は正しかった。彼の音楽の才能は、それぞれクラシックとロックの分野で成功をおさめた両親から譲り受けたものだった。

 それは、11年前の満月の夜。コンサートでニューヨークへやって来た新進チェリストのライラ(ケリー・ラッセル)と、サンフランシスコ出身のロック・ミュージシャン、ルイス(ジョナサン・リース=マイヤーズ)は、ワシントン広場を見下ろすビルの屋上で、運命の出会いを果たした。輝く月の光とストリート・ミュージシャンが奏でる「ムーンダンス」の曲に彩られ、ロマンチックな一夜を過ごす2人。だが、ステージ・パパとして権力をふるうライラの父トマス(ウィリアム・サドラー)の介入によって、2人は連絡先を伝えあうこともできず、仲を引き裂かれてしまう。まもなく妊娠に気づいたライラは、父の反対を押し切ってシングル・マザーになることを決意するが、臨月で交通事故にあった彼女を待ち受けていたのは、お腹の子が助からなかったという哀しい知らせだった。それ以来、コンサート活動を退き、故郷のシカゴで傷心を癒す日々を送るライラ。いっぽう、彼女を失ったことで音楽への情熱も失ってしまったルイスは、兄たちと組んでいたバンドを脱退し、サンフランシスコに戻って金融ビジネスの世界に身を投じた。ライラとの愛の結晶である子供が、この世に存在していることも知らず……。

 ある晩、電線を伝う不思議な音に導かれて夜中に施設を抜け出したエヴァンは、親切な果物屋のトラックに拾われて、マンハッタンにやって来た。地下鉄、クラクション、信号、スチームなど、生まれて初めて体験する大都会の音の洪水に包まれて、エヴァンは大興奮。いつのまにか迷子になってしまった彼は、街角でギターを奏でていた少年のアーサー(レオン・トマス・3世)に誘われるまま、ストリート・パフォーマーの子供たちが共同で生活する廃墟の劇場へ足を踏み入れる。そこでエヴァンが出会ったのは、子供たちから「ウィザード」と呼ばれている元締めの男(ロビン・ウィリアムズ)だった。元ストリート・ミュージシャンの彼にギターの天才ぶりを見出され、街角に立つようになるエヴァン。自分の演奏をたくさんの人に聞いてもらうことが、両親探しの近道だと信じる彼は、「オーガスト・ラッシュ」という芸名をもらい、懸命に演奏した。
 しかし、その日々は長く続かなかった。エヴァンたちが寝泊まりする劇場に、児童福祉局の手入れが入ったのだ。大あわてで地下鉄に逃げこみ、夜の闇の中にさまよい出たエヴァンは、ゴスペルの歌声に誘われて教会の中へ。そこで出会った聖歌隊の少女ホープ(ジャマイア・シモーヌ・ナッシュ)の指導で、たちどころに楽譜の読み方をマスターする。そんな彼が、モーツァルトに優るとも劣らない作曲の天才であることに気づいた教会の牧師は、エヴァンをジュリアード音楽院に推薦。入学を許されたエヴァンは、正式に音楽を学ぶことになった。

 そのころ、死の床にある父親から、自分の子供が生きていると知らされたライラは、その子の行方を追い求めてニューヨークへやって来た。児童福祉局のリチャードの助けで、探していた子がエヴァンであると知るライラ。行方不明のエヴァンと会える日を信じてニューヨークに留まろうと決断した彼女は、自分の音楽がエヴァンの耳に届くことを願って、ニューヨーク・フィルと共演するコンサートのオファーを引き受けた。
 いっぽう、ルイスの人生にも大きな変化が生じていた。自分がいまだにライラへの愛を断ち切れないでいることに気づいた彼は、その思いをラヴソングに託し、音楽の世界に復帰しようと決意。かつてのバンド仲間と共にニューヨークへやって来る。

 まだ見ぬ両親への思いを込めて、ジュリアードで「オーガストのラプソディー」を作曲するエヴァン。彼の11年間の人生が集約されたその曲は、奇しくもライラが出演するのと同じセントラル・パークの野外コンサートで演奏されることになった。だが、そのリハーサル中に思わぬ邪魔が入る。金蔓のエヴァンの居所をつきとめたウィザードだ。父親だと名乗るウィザードの手で、無理矢理ストリートに連れ戻されたエヴァンは、永遠に両親と再会する機会を失ってしまったかに見えたが……。ニューヨークの夜空に「オーガストのラプソディー」が鳴り響いたとき、思いがけない奇跡が起こる!

スタッフ

監督:カーステン・シェリダン

キャスト

フレディ・ハイモア 
ケリー・ラッセル 
ジョナサン・リース=マイヤーズ
ロビン・ウィリアムズ

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