2007年/日本映画/106分/カラー/DTSステレオ/アメリカンビスタ 支援:文化庁 配給:日活

2010年09月22日よりDVDリリース 2008年3月19日よりDVDリリース 2007年9月22日、テアトルタイムズスクエア、銀座テアトルシネマ、シネセゾン渋谷ほか全国公開

(c)めがね商会

公開初日 2007/09/22

配給会社名 0006

解説


 人が旅に出るのではない、旅が人を連れ出すのだ。ある作家が、旅行記の冒頭に記した言葉です。確かに、人の一生には何度か、何かにさらわれるように旅に出たくなる瞬間が訪れるもの。そのとき、あなたならどこへ行くでしょう。そして、何に出会うでしょう。
 そんな旅のひとつのかたちが、一本の映画になりました。2006年に公開され、静かに熱い反響を呼んだ『かもめ食堂』。そのキャストとスタッフがふたたび集い、今度は南の海辺を舞台に、あらたな物語を生み出したのです。
 登場人物は、3人の女と2人の男。ひとりの女性が、心の赴くままに訪れた南の海辺で、物語の幕が開きます。主人公である旅人・タエコを演じるのは小林聡美。『かもめ食堂』で見せた清潔なたたずまいをそのままに、人生の一瞬にふと立ち止まる等身大の女性をきめ細やかに造形します。彼女を迎える宿の主人・ユージには、数々の映画やドラマで活躍する実力派俳優・光石研。その宿にたびたび出没する若い女・ハルナに、同世代の女性たちを中心に圧倒的な支持を得る市川実日子。また、タエコを追ってやってくる青年・ヨモギを、映画『それでもボクはやってない』などで今もっとも注目を集める加瀬亮が演じます。そして、宿の人々からそこはかとない信頼を寄せられる島の先客・サクラ役のもたいまさこが、不敵かつおおらかな存在感で物語を包み込みます。
 どこへ行くでもなく、何をするでもなく、ただ「たそがれる」。リラックスした彼らの姿からは、人が本来魂に宿している、原始の豊かさが漂います。日常の鎖から解き放たれて取り戻す、自由というもの。その甘美さと切なさを、前作に引き続き監督・脚本を手がける荻上直子が、抑制の効いた描写の中に息づかせています。
 人とは。旅とは。生きるとは。登場人物たちとゆるやかな時間を共有するうちに、心はいつしか大きなものへと向かいます。が、もちろん映画は、そんな命題を軽々と飛び越えたところで成り立っています。南国ならではの透明感あふれる日差しのもと繰り広げられる、生命力を呼び覚ますおいしい食事。心地よい暮らしの風景。凛と胸に響く音楽。そしてそれらをともにする、同志のような仲間の存在。スクリーンから五感のすみずみに届く、ひろびろと手足を伸ばして生きる歓びを、ただ素直に受け止めればいい。たそがれる、それこそが旅の、そしてこの映画の醍醐味なのですから。
 思えば、人生はしばしば旅にたとえられます。その途上での旅とはつまり、一生という大きな物語の中で繰り広げられる劇中劇のようなもの。決して永遠ではないその瞬間を、どこで過ごすか。誰と過ごすか。その果てに、何を知るか。ともあれ、行く先が見えなくなったら、なんとなく世界とピントが合わなくなったと感じたら、それがあなたのたそがれとき。まっすぐに歩いていけば、いつか必ずたどり着く。
あなたもきっと経験する旅、その理想形が、『めがね』を
通して見えてくるかもしれません。

ストーリー


春まだ浅いころ。この世界のどこかにある南の海辺の小さな町に、不思議な予感が漂う。
 「……来た」。プロペラ機のタラップを降り、小さなバッグ1つを手に、まっすぐに浜を歩いてくる、めがねをかけたひとりの女。待ち受ける男と女に向かい、彼女は深々と一礼する。
 静かな波が寄せては返す。

 時を同じくして、もうひとりの女が空港に降り立った。名前はタエコ(小林聡美)。大きなトランクを引きずりつつ、たよりない手描きの地図を片手に浜を歩き、奇妙ななつかしさをたたえた小さな宿・ハマダにたどり着く。
 出迎えたのは、飾りけのない宿の主人・ユージ(光石研)と犬のコージ(ケン)。 迷わずにたどり着いたタエコに彼は「才能ありますよ」と告げる。「ここにいる才能」。
 次の日、宿の一室で朝を迎えたタエコの足元に、微笑みをたたえためがねの女・サクラ(もたいまさこ)の姿があった。「おはようございます」「何?」「朝です」。
 それから起こるのは、いちいち不思議なことばかりだった。毎朝、浜辺で行われる不可思議な「メルシー体操」。宿周辺でぶらぶらしている高校教師・ハルナ(市川実日子)。人々に笑顔でかき氷をふるまうサクラのこと。観光したいと告げるタエコに、「観光するところなんて、ありませんよ」「たそがれないのに、一体何をしにここに来たんですか?」と皆が不審げに問い返す。
 「……無理」周囲のマイペースさに耐えきれなくなった彼女は、ハマダを出てもう一軒の宿・マリン・パレスへ行く決心をする。女主人・森下(薬師丸ひろ子)の盛大な出迎えを受けたものの、ここもまた探していた場所ではなかった。道に迷い、野中の一本道で途方に暮れるタエコ。そこに、自転車に乗ったサクラが現れる。

 再び、ハマダでの日々が始まった。ペースに巻き込まれ、徐々に自らたそがれはじめるタエコ。そして数日後、彼女を「先生」と呼ぶ青年・ヨモギ(加瀬亮)がハマダに現れる。彼が加わり、さらにゆったりと流れていく宿の

スタッフ

脚本・監督:荻上直子

主題歌:大貫妙子「めがね」/ 「めがね」オリジナルサウンドトラック(バップ)
企画:霞澤花子
エグゼクティブ・プロデューサー:奥田誠治  木幡久美
プロデューサー:小室秀一  前川えんま
アソシエイトプロデュ-サー:オオタメグミ
撮影:谷 峰登
照明:武藤要一
録音:林 大輔
編集:普嶋信一
スクリプター:天池芳美
美術:富田麻友美
スタイリスト:堀越絹衣  澤いずみ
フードスタイリスト:飯島奈美
ヘアメイク:宮崎智子
音楽:金子隆博
音楽プロデューサー:丹 俊樹
編み物:タカモリトモコ
メルシー体操:伊藤千枝(珍しいキノコ舞踊団)
写真:高橋ヨーコ
文章:大谷道子
メイキング:松本佳奈
製作:めがね商会/日本テレビ/バップ/シャシャ・コーポレイション/パラダイス・カフェ/日活
配給:日活

キャスト

タエコ:小林聡美
ハルナ:市川実日子
ヨモギ:加瀬 亮
ユージ:光石 研
サクラ:もたいまさこ
おばさん:橘ユキコ
おじさん:中 武吉
女性:荒井春代
氷屋:吉永 賢
少女:里見真利奈
犬のコージ:ケン
森下:薬師丸ひろ子(「めがね」の友だち)

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