原題:Little Miss Sunshine

夢と希望を乗せて、黄色いバスは行く

第19回東京国際映画祭コンペティション部門出品作 ドーヴィル映画祭グランプリ受賞作品 シドニー映画祭、サン・セバスチャン映画祭観客賞受賞作品 第79回米アカデミー賞 助演男優賞受賞、作品賞・助演女優賞・脚本賞ノミネート アメリカ脚本家組合賞(脚本家賞)受賞

2006/07/26

2006年/アメリカ/カラー/101分/ 配給:20世紀フォックス映画

2010年08月04日よりDVDリリース 2010年06月25日よりDVDリリース 2007年06月02日よりDVDリリース 2006年12月23日、シネクイント、シネ・リーブル池袋にてロードショー

(C)2006 TWENTIETH CENTURY FOX

公開初日 2006/12/23

配給会社名 0057

解説


アリゾナからカリフォルニアまで伸びるハイウェイを走るおんぼろのフォルクス・ワーゲン・ミニバス。埃っぽい砂漠をひた走る黄色い車に乗ったフーヴァー一家の物語『リトル・ミス・サンシャイン』こそが大作がひしめくサマー・シーズンのフィナーレをサプライズ・ヒットで締めくくった家族再生の物語だ。製作まで5年かかったアートハウス・ムービーの前評判が高まったのは、昨年末。『40歳の童貞男』で人気上昇したスティーヴ・カレルの新作ということで、ハリウッドのディール・メーカーが虎視眈々と狙い始めたのだ。その後、1月に行なわれたサンダンス映画祭でプレミア上映されるや、熱狂した観客のスタンディング・オベーションで場内が割れんばかりに盛り上がる結果に。即座に配給権をめぐる争奪戦が勃発し、契約金は同映画祭史上最高額にまでハネ上がった。ハリウッド業界はもちろん、映画ファンの間でも一気に期待値が上昇した。

 アリゾナに住むフーヴァー一家は、“リトル・ミス・サンシャイン”コンテストに繰り上げ参加することとなった娘オリーヴを連れてカリフォルニアに向けて出発。独自の成功論を振りかざす家長リチャードとバラバラな家族を必死でまとめようとする母シェリル、家族を嫌って沈黙を続ける長男ドウェーン、ヘロイン常用者で言いたい放題の祖父、失恋が原因で自殺をはかったプルースト研究者のフランク、そしてビューティー・クィーンを夢見るオリーヴが乗ったミニバスには一触即発の空気が漂う。そして、オンボロバス車までもが故障し始める。フーヴァー一家に危機に次ぐ危機がふりかかる!? 

 ハリウッドの人気ジャンルであるファミリー・ドラマとロード・ムービーをミックスさせた型破りで斬新な脚本を書いたのは、新人マイケル・アーント。強烈に風刺的であると同時に深い人間性を備えた本作が描くのは、機能不全に陥った家族の再生だ。美少女コンテストへ向かう旅路でさまざまなハプニングに遭遇するうち、互いに理解しえないと思い込んでいた家族の心が徐々にほぐれていく。そして、思いがけない形で一家が団結することになるのだ。成功し勝者となることが絶対とされる現代社会において、敗北することによって得られる何かがあると伝えてくれる。非常にエモーショナルな展開だが、随所にはさみこまれた皮肉なユーモアがピリッとしたスパイスとなり、泣かせるのが目的といった作品とは一線を画している。

 前述のカレルのほかにもグレッグ・キニアやトニ・コレット、アラン・アーキンといったオスカー候補組が脚本に魅了されて、出演を快諾。またアート系監督のお気に入りとなっている新鋭ポール・ダノとナチュラル演技でポスト・ダコタ・ファニングと噂される子役アビゲイル・ブレスリンが機能不全なフーヴァー一家にリアルな息吹を与えた。

 監督はこれが初の劇場長編となるジョナサン・デントン&ヴァレリー・ファリス夫妻。脚本に惚れ込んだふたりは、ミュージック・ビデオやコマーシャルの世界で規制概念を打ち破るクリエイターとして名を馳せている。ブラックな笑いの中に家族の絆と優しさが伝わるオフビートな本作は、エキセントリックな彼らの監督デビューにふさわしいものとなっている。

ストーリー

アリゾナ州に住むオリーヴ・フーヴァー(アビゲイル・ブレスリン)の夢は、ビューティー・クィーンになること。小太りの眼鏡っ子にもかかわらず、美人コンテストのビデオを研究する日々だ。オリーヴの兄ドウェーン(ポール・ダノ)は自室にこもって、日課とする筋肉トレーニングをするのに余念がない。そして、一家と同居するグランパ(アラン・アーキン)はバスルームに閉じこもり、ヘロイン吸引で夢見心地となっている。平穏とは呼びがたいフーヴァー家の主婦シェリル(トニ・コレット)は、夫リチャード(グレッグ・キニア)の反対にもかかわらず、自殺未遂で病院に入院していた兄フランク(スティーヴ・カレル)を自宅に連れ帰る。

 退院時に医者から「フランクから目を離さないように」という指示をされたシェリルは、彼をドウェーンの部屋に落ち着かせる。他に選択の余地がない長男は肩をすくめてルームシェアを了承。部屋に巨大なニーチェ画を飾っている彼は空軍士官学校に入学するまでは沈黙を守り通すと誓っているらしいが、落ち込んでいるフランクにとってはたいした問題ではない。

 リチャードが帰宅し、夕食の席に家族が集まる。卓上のフライドチキンを見たグランパはいきなり不機嫌になり「毎日チキンはうんざり!」と大声で当たり散らすが、誰も耳を貸さない。騒々しい食卓についたオリーヴが叔父の手首に巻かれた包帯を見て怪我をした理由を尋ねたところ、またもやひと騒動が持ち上がる。義兄の自殺未遂を隠したいリチャードを「すぐにバレることだから」と制したシェリルは、フランク自身に自殺に至った顛末を語らせる。大学でプルーストの研究をするフランクはライバルに恋人を奪われたことにショックを受け、手首を切った挙句、仕事を失っていたのだ。ゲイであるフランクをグランパが「ホモ野郎」と呼び、“負けを拒否する!”をモットーとするモチベーション・スピーカー(成功論提唱者)のリチャードは、フランクを「負け犬」と決めつける。リチャードは、自身が考案した9ステップ・プログラムを出版社に売り込み、ベストセラーを狙っているところなのだ。超楽観的でうさんくさい人生哲学を朗々と語り始める義弟にフランクは呆れ顔だ。隣で黙々と食べている甥に「いつもこうなのか?」と尋ねると、ドウェーンは取り出したメモ帳に「家族なんて大嫌い」と書き殴る。

 楽しいはずの夕食の席に不穏な空気が満ちてきたことに気づいたリチャードは、妻と娘に留守電メッセージが入っていたことを告げる。父親がもらした「サンシャイン」という言葉に興奮したオリーヴが早速メッセージを再生すると……。「リトル・ミス・サンシャイン」コンテスト地方予選の優勝者が失格となり、繰り上げ優勝となったオリーヴがカリフォルニアのレドンド・ビーチで行われる決勝出場資格を得たというのだ。狂気乱舞するオリーヴだが、フーヴァー家にシェリルとグランパの分の飛行機代を捻出する経済的余裕はない。自殺傾向のあるフランクを高校生のドウェーンとともに残しておくこともできず、一家全員がおんぼろのフォルクス・ワーゲン・ミニバスに乗り込んで一路、カリフォルニアを目指すことに!? ただでさえギクシャクする家族だから狭苦しいミニバスのなかで早速、口論がスタート。しかも車が故障し、押しがけスタートでしかエンジンがかからなくなってしまう。前途多難なフーヴァー一家は果たしてカリフォルニアまで無傷でたどりつけるのか? そしてオリーヴはビューティー・クィーンの栄冠をゲットすることができるのか?

スタッフ

監督:ジョナサン・デイトン
ヴァレリー・ファリス
製作:アルバート・バーガー
デヴィッド・T・フレンドリー
ピーター・サラフ
マーク・タートルトーブ
ロン・イェルザ
脚本:マイケル・アーント
撮影:ティム・サーステッド
衣装デザイン:ナンシー・スタイナー
編集:パメラ・マーティン
音楽:マイケル・ダナ

キャスト

グレッグ・キニア
トニ・コレット
スティーヴ・カレル
アラン・アーキン
ポール・ダノ
アビゲイル・ブレスリン
ブライアン・クランストン
マーク・タートルトーブ
ベス・グラント

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