原題:A Prairie Home Companion

仏ドーヴィル映画祭プレミア上映

2006/06/09

2006年/アメリカ/カラー/105分 配給:ムービーアイ エンタテインメント

2007年07月27日よりDVDリリース 2007年3月3日(土)より銀座テアトルシネマ、Bunkamuraル・シネマ他にて全国ロードショー

公開初日 2007/03/03

配給会社名 0366

解説



今宵、フィッツジェラルド劇場へようこそ!
最後のラジオショウが終わるとき、
新しい人生のドアが開く。

『ナッシュビル』『ショート・カッツ』の
巨匠ロバート・アルトマンの「白鳥の歌」!

 カンヌ(『M★A★S★H』)、ヴェネチア(『ショート・カッツ』)、ベルリン(『ビッグ・アメリカン』)の世界3大映画祭で最高賞を受賞した映画作家ロバート・アルトマンが2006年11月20日、がんによる合併症のためロサンゼルスの病院で死去した(81歳)。アカデミー監督賞には5回ノミネートされ受賞には至らなかったが長きにわたる映画人生は讃えられ、2006年アカデミー名誉賞を受賞したばかりだった。惜しくも、アルトマン監督の遺作となった『今宵、フィッツジェラルド劇場で』は、『ナッシュビル』『カンザスシティ』同様に音楽を題材にしたトラジコメディ。テレビの時代をくぐり抜け、30年あまり生き延びてきたラジオの音楽バラエティショウの最後の公開生中継の舞台裏を描く。
 ミネソタ州セントポールのフィッツジェラルド劇場。全米のリスナーに長年親しまれてきたWLT局のラジオ番組「プレイリー・ホーム・コンパニオン」(実在する同名の音楽番組がモチーフになっている)の公開録音がここで行われようとしている。番組台本も書く卑屈な語り口に定評ある司会のギャリソン・キーラー(本人)をはじめ、どさ回りでカントリーソングをデュエットして歌うヨランダ(メリル・ストリープ)とロンダ(リリー・トムリン)のジョンソン姉妹、シンガーソングライターになるのを夢を見るヨランダの娘のローラ(リンジー・ローハン)、ちょっと下品なカウボーイソングが持ち歌の男性デュオのダスティ(ウディ・ハレルソン)&レフティ(ジョン・C・ライリー)らが次々に楽屋入りする。そんななか、番組のボディガードである探偵気取りのガイ・ノワール(ケヴィン・クライン)は、白いトレンチコート姿の天使のような美女を楽屋口で見かけて、ただならぬ気配を感じる。実は、WLTラジオ局はテキサスの企業家アックスマン(トミー・リー・ジョーンズ)によって買収され、番組は打ち切り決定、今夜がその最終回だった。司会者キーラーの名調子で番組はいつもどおり進行していくが、ガイの予感どおり、何かが起こる──。
 探偵と魅惑の美女が登場する「フィルムノワール」を連想させる導入部から、物語は一気に『ショート・カッツ』でおなじみの”アルトマネスク”なアンサンブル・スタイルへ。時にユーモラスに、時に残酷に、番組に出入りする多彩な人物たちの姿を流麗なカメラワークで映し出しながら、アメリカ中西部の人々特有の心意気や哀感、明日へのほのかな希望を浮き彫りにした大いなる人間賛歌になっている。
 アンサンブルドラマを彩る顔ぶれがすごい。ヨランダ役には、アカデミー賞ノミネート13回(主演・助演女優賞で1度ずつ受賞)、『プラダを着た悪魔』の名女優メリル・ストリープ。ロンダ役にはエミー賞6回受賞、アルトマン作品『ナッシュビル』『ショート・カッツ』にも出演しているコメディエンヌ、リリー・トムリン。2人のハモリは聴きモノだ。ハスキーな声でカントリーのスタンダードを歌い上げるリンダ役に、歌手として2枚のアルバムを出している『フォーチュン・クッキー』のリンジー・ローハン。陽気にカウボーイソングを歌う男性デュオ、ダスティ&レフティに、『ラリー・フリント』のウディ・ハレルソンと『シカゴ』のジョン・C・ライリー。私立探偵フィリップ・マーロウを気取った番組のボディガード係の男ガイ・ノワールに、『五線譜のラブレター/DE-LOVELY』のケヴィン・クライン、謎めいたブロンドの美女として登場する”デンジャラス・ウーマン”に、『サイドウェイ』のヴァージニア・マドセン。企業家アックスマンには、『スペースカウボーイ』のトミー・リー・ジョーンズ。ほか、「サタデー・ナイト・ライブ」出身のマヤ・ルドルフ、サム・ペキンパー映画の常連だったL・Q・ジョーンズらが脇を固める。
 原案・脚本(出演も)は、30年以上にわたり本物の「プレイリー・ホーム・コンパニオン」の司会者・脚本をつとめ、「ニューヨーク・タイムズ」紙などの雑誌・新聞にもエッセイや評論や短編小説を寄稿するマルチな才能をもつリベラリスト、ギャリソン・キーラー。撮影監督は、『バレエ・カンパニー』『エデンより彼方に』の名手エド・ラックマン。HD (ハイディフィニション)によるマルチカムで、ズームショットを駆使しながら臨場感たっぷりに舞台裏をとらえた撮影監督は、『バレエ・カンパニー』『エデンより彼方に』の名手エド・ラックマン。音楽監督は実際に「プレイリー・ホーム・コンパニオン」のハウスバンドを率いるリチャード・ドヴォスキー(映画初出演)。また病状が心配されたアルトマン監督のスタンバイとして、”後継者”である『マグノリア』のポール・トーマス・アンダーソン監督が撮影現場に立ち会った。

ストーリー



フィッツジェラルド劇場での”別れと再生の物語”
別れに泣くより、笑って生きる。

 ミネソタ州セントポールの雨の土曜日の晩、ダイナーでの夕食を終えた男ガイ・ノワール(ケヴィン・クライン)が仕事場のフィッツジェラルド劇場へ戻るところだ。彼は、公開録音(生中継)されるラジオショウ「プレイリー・ホーム・コンパニオン」の保安係だが、テキサスの大企業がその町のラジオ局WLTを買収したため、今夜の最終回の放送が、彼の最後の仕事になるはずだった。
 楽屋ではその夜のゲストミュージシャンたちがリラックスムードで待機していた。サドルバックにギターと投げ縄と噛みタバコを入れているカウボーイシンガーのダスティ(ウディ・ハレルソン)&レフティ(ジョン・C・ライリー)はギターを弾きながら歌っている。ベテランのチャック・エーカーズ(L・Q・ジョーンズ)の姿もあった。
 遅れてジョンソン・ガールズが到着。姉ロンダ(リリー・トムリン)と妹ヨランダ(メリル・ストリープ)のデュオである。ヨランダの娘ローラ(リンジー・ローハン)も同伴している。別の楽屋では司会者のギャリソン・キーラー(本人)が衣装を着替えている。
「キーラーさん、舞台へ」
 声をかけたのは、臨月のおなかをまん丸としたステージマネージャー助手のモリー(マヤ・ルドルフ)。メイク室では、ラジオ局の元オーナー、ソダーバーグ氏の思い出話などで盛り上がっていた。ギャリソンがやっと重い腰を上げてステージへ向かうとき、モリーが陣痛に襲われる。実はイライラさせてばかりのギャリソンへの腹いせだった。

 いよいよショウが始まった──「土曜の晩のライブショウへようこそ! 『プレイリー・ホーム・コンパニオン』です」
 楽屋口では、保安係のガイが舞台裏に神出鬼没に現れる美女の話題を口に出した。ブロンドの髪をして、雨がぬらすのをためらうほどの純白のトレンチコートを着た美女らしい。
 楽屋ではロンダとヨランダの2人が入念なメイクの真最中。ヨランダは、娘のローラがノートに書いていた詩を読み上げさせた。
 一方、楽屋口にいたガイに噂の美女(ヴァージニア・マドセン)が近づいてきて謎めいた言葉を残す。「定めの時と霊を心に受け入れれば、この世の生きる支えになるの」
 ジョンソン姉妹はなおも昔話に花を咲かせる。実は2人の姉がいて、一時は4人姉妹のコーラスグループだった。ドーナツ1つで逮捕された長姉ワンダの悲しくもおかしい話を思い出すと、ヨランダは突然歌い出し、「歌が私のすべてよ」という姉のロンダをハグする。
 メイク室では「自動的に音楽を流すだけのラジオになる」とメイク係ドナが残念そうにこぼすと、「この劇場に苦境を救ってくれそうな女がいる」と保安係のガイが口をはさむ。
 ジョンソン・ガールズの登場も迫り、番組の合間を縫ってギャリソンはデュエットの練習をするため2人の楽屋へ。「あとでローラをステージに立たせたいの」とヨランダが願い出れば、「今夜が最後のショウ?」とロンダはたずねた。ステージの袖で、「”長い間ありがとう”ぐらいお礼を言わないと」とギャリソンへ忠告するヨランダ、「”涙のさよなら”はイヤだ」と彼。2人は少しつき合っていた過去があり、彼の態度が別れる原因になったらしい。
 ジョンソン・ガールズが歌っている間、出番待ちのチャック・エイカーズの隣には、白いコート姿の美女が寄り添っていた。
 楽屋通路では「歌ってくれるのか? 才能があるってママが言っていたぞ」と愉快なダスティとレフティがローラに話しかける。「ジョニー・キャッシュの仲間だぞ」とうそぶくダスティ。次に2人がステージでカウボーイソングを歌っている間、今度はギャリソンが母親との馴れ初めをローラに聞かせる。

 再び、ジョンソン・ガールズとギャリソンのステージが始まった。舞台を降りたダスティとレフティは妊婦のモリーとふざけ合っている。そこへやってきたステージマネージャーのアルは「(先週のように)卑猥な歌はダメだぞ」と悪ノリしそうな2人に釘を刺した。
 なおも軽快なコーラス音楽や愉快な架空CMをまじえてショウは快調に進んでいく。
 そのころ、チャック・エイカーズの楽屋から出てきたひとりの女性がドアの札を「入室お断り」にひっくり返した。入れ替わるように、サンドイッチを配るランチレディのエヴリンが部屋に入って、無反応になってしまったチャックを発見する! どこからともなく現れたブロンドの美女は「老人の死は悲劇じゃない」と告げた。急を聞いてかけつけたギャリソンに、彼女は、自分が天使であることを説明した。この番組を聴きながら運転中に事故死してしまったという。生前の名前はロイス・ピーターソン。次いで事情を訊き出そうとするガイ・ノワールに「私は天使アスフォデル、地上に神の慈悲を広めて賛美するのが仕事」だと説明した。

 そんな事件があっても、何事もなかったようにショウはラストスパートに入っていた。
 やがて番組の最後を見届けようと、遠くテキサスからやってきた”新オーナー”のアックスマン(トミー・リー・ジョーンズ)が劇場に到着した。保安係ガイが彼に応対し、同じ名前の作家の銅像がある貴賓席へ通した。
 その後モリーとガイは劇場のバーで、シャンパンで乾杯した。「ハッピーエンドに!」
 ジョンソン・ガールズ、そしてダスティ&レフティの軽快なパフォーマンスが続いた。
 番組も残り6分。司会のギャリソンがいう。「フィッツジェラルド劇場で来週も同じ時間にお会いしましょう!」
 ローラのおまけのステージが始まった。ゴキゲンに歌い切った娘にヨランダは大喝采だ。
 貴賓席に姿を見せた天使アスフォデルがささやく。「今夜は交通事故に気をつけて」
 ステージの上にはその夜のゲスト全員が集まって、最後の大合唱が始まる。

   *   *   *

  しばらく経ったある日の夜、取り壊し中のフィッツジェラルド劇場の隣のダイナーには、あの晩の懐かしい顔ぶれが集まった。 そして、彼らの新しい人生が幕を開けようとしていた──。

スタッフ

監督・製作:ロバート・アルトマン
原案:ギャリソン・キーラー
脚本:ギャリソン・キーラー
撮影:エドワード・ラックマン

キャスト

ウディ・ハレルソン
トミー・リー・ジョーンズ
ギャリソン・キーラー
ケヴィン・クライン
リンジー・ローハン
ヴァージニア・マドセン
ジョン・C・ライリー
マーヤ・ルドルフ
メリル・ストリープ
リリー・トムリン
メアリールイーズ・バーク
L・Q・ジョーンズ

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