人生は、ほとんど雨。

2006年/日本/カラー/75分/ 配給・宣伝:バイオタイド

2006年10月14日より池袋シネマ・ロサにてレイトショー

公開初日 2006/10/14

配給会社名 0330

解説


ダメになった“叔父さん”と、そうでもない“僕”の物語
 本作は、第7回水戸短編映像祭でグランプリに輝いた『鍋と友達』(02)や黒澤明記念ショートフィルム・コンペティション04-05・ノミネート作品『進め!』(05)など、皮肉とユーモアに満ちた独自の世界観を現出する俊英・沖田修一の初の長編作品である。不器用で情緒不安定ながらどうにも憎めない現代版「寅さん」敵な叔父さん・清(古館寛治)と、彼に振り回されるうちに徐々に変化する男の子(畑敬志)の心をコミカル且つ繊細に描き、いまおか しんじ『たまもの』、山下敦弘『リンダ・リンダ・リンダ』らの系譜へと連なる<ちょっとひねくれた>ハートウォーミングコメディの傑作となっている。
 それまでの諸作ではシチュエーションとギャグセンスが見事なものの、短編ゆえか何となくコント的に収まってしまうところもあり「もっと長く観たい」と思わせるところがあった。そして初めての長編となる本作では、過剰な設定やコミカルな描写を極力シンプルにした上で、確かな人間ドラマになっていることに驚く。そして、ほとんど家にいてゲームばかりやっている涼一とその家族、自殺未遂した叔父さん、涼一が引きこもる原因となった男の子まで、ほんのりコミカルなキャラクターたちの仕草や表情1つ1つも非常に魅力的に描かれていく。
 映画自体に大きな山があるわけではない。ゆるやかに過ぎるおじさんとの日々の中で徐々に涼一の心が変わり、TVゲーム(と閉じた世界)をクリアし、しっかりと舞台(外の世界)を踏みしめたとき、おじさんが、「じゃあまた」と微笑み、フッと物語は終わる。そのとき、鑑賞中のくすくす笑いが映画が終わってしまう寂しさへと変わる。観客側が、キャラクターへの愛おしさに気づく瞬間である。家にずっといる男の子とおじさんの<冴えない>エピソードが積み重なって最後はホロリと来させる、それはまるで『男はつらいよ』シリーズなどの松竹喜劇の味わいであり、撮影方法などからは松田優作が冴えないおじさんに変わった『家族ゲーム』のような印象も受ける。
 キャッチコピーの「人生は、ほとんど雨。」は、裏を返せば「人生は、ちょっと晴れ。」ということである。観終わった時、世界の見え方がほんの少し変わるような、愛すべき、愛されるべき傑作が誕生した。

ストーリー



東京郊外の一軒家。菊池家。高校生の涼一(畑敬志)は、学校にも行かず、真っ昼間からテレビゲームばかりやっている。父(志賀 廣太郎)を始めとして家族は皆一様に忙しく、朝になると涼一に千円札を一枚だけ置いて、出かけて行く。ある日の夕方、やっぱり家でテレビゲームをやっていた涼一の携帯が鳴る。姉(兵藤 公美)からだ。いとこの叔父さん・清(古館 寛治)が出来損ないのような自殺未遂をしたらしい。そうして、住む家も金もなくした清が、しばらく療養するため、我が家にやってきた。日々、家にいるのは涼一ほとんど一人。清との奇妙な生活が始まり、偏屈な性格に辟易する涼一だったが、徐々に不安定ながらもマイペースな清に惹かれてゆき、少しずつ彼の中の何かが変わってゆく…。

スタッフ

監督・脚本:沖田修一
制作:荒木考眞
撮影:大目象一
録音:吉村健作
照明:鈴木昭彦
助監督:荒船泰廣、守屋文雄
衣装:山田千晴

キャスト

畑敬志
古舘寛治
大崎由利子
兵藤公美
志賀廣太郎
安村典久

LINK

□公式サイト
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す