第19回東京国際映画祭コンペティション部門正式出品

2006/日本/112分/35mm/ドルビーSR 配給:ビターズ・エンド

2007年08月22日よりDVDリリース 2007年2月24日、テアトル新宿 他にて 全国ロードショー!

公開初日 2007/02/24

配給会社名 0071

解説



鈴木光太郎は事件らしい事件が起きないこの町で警察官をしている。光太郎の双子の兄・光は家の畜産業を気まぐれに手伝っている。ふたりの父親・豊道はダラダラした生活と性格が災いしてなんとなく自宅に居辛くなり、家出中。母は父を怒るでもなく放置したまま。モテるためには30万を迷わず出す幼馴染、頼まれればすぐに下着を脱いでしまう娘……。この町にはどこにでもいるような、でもちょっとおかしな住民が住んでいる。
ある日、どうも訳アリなカップル・西岡佑二と池内みゆきが松ヶ根へやってくる。ひき逃げ、金塊、ゆすり、床屋の娘の妊娠……彼らの来訪をきっかけに、この町のバランスは微妙に崩れ始める……。

『リンダ リンダ リンダ』で女子高生の青春を描いた山下敦弘が次なる題材に選んだのは田舎町でくすぶる20代男子の物語。本作では90年代初頭の田舎町を舞台に、双子の兄弟の葛藤と現代に通じる少しおかしな日本人像を、まざまざと描き出した。ユーモラスかつスリリングな展開に1秒たりとも目が離せない!
山下の二十代最後の作品となった『松ヶ根乱射事件』。山下敦弘の集大成であり、最高傑作がここに誕生した。

主人公・光太郎を演じたのは、『ゲルマニウムの夜』につづき主演二作目の新井浩文。崔洋一、犬童一心、行定勲、松岡錠司、豊田利晃など、名高い監督たちからの指名を次々に受けつづけ、今や日本映画界に欠かせない俳優となった。本作では律儀な印象で親近感を感じさせると同時に、ふいに見せる不気味な視線にドキッとさせられる。双子の兄・光には、これまで舞台を中心に活躍してきた山中崇。自堕落ではあるがどこか憎めない人間として、物語の繊細さと複雑さを全身で一心に語りかけている。ふたりの父親を演じた三浦友和は“ダメ男”をいきいきと演じ、謎めいた確信者として映画に君臨している。また、近年映画界からのオファーが絶えない木村祐一が、町に突如現われる男をコミカルに、リズミカルに演じきり、松ヶ根の町を笑いとスリルでかき回せば、木村と絶妙なコンビネーションをみせた川越美和が、独特の間とセリフまわしで異彩を放つ。そのほか、キムラ緑子、烏丸せつこ、西尾まり、安藤玉恵、康すおん……と、脇を固める俳優陣も個性派が勢揃いし、田舎町の奇妙な空間を見事に彩っている。

これまでに、赤犬、くるり、James Ihaがその映画音楽を担当するなど、デビュー当時から音楽にもこだわりをみせてきた山下敦弘は、本作では14人編成のアコースティック・オーケストラ・バンドの「パスカルズ」とタッグを組んだ。バイオリン、ピアニカ、ウクレレのほか、オモチャの楽器も多用し築きあげた音楽はニュートラル且つ遊び心にも富み、本作のユーモアにさらなる解放感を与えている。また、エンディング曲として使用されているボアダムスの楽曲「モレシコ」は、まさに90年代初頭に発売されたアルバム『POP TATARI』からのエントリー。運命的マッチングは、ラストシーンの後にも用意されている。

ストーリー







鈴木光太郎(新井浩文)は派出所に勤める警察官。家では、母(キムラ緑子)が双子の兄・光(山中崇)と姉夫婦(西尾まり、中村義洋)と畜産業を営んでいる。父・豊道(三浦友和)は家出中だ。
ある日の早朝のこと。雪の降り積もった松ヶ根の道で女の死体が発見される。光太郎は同僚の立原勇三(康すおん)から連絡を受け仕事場へと急ぐ。光は車庫にしゃがみ込み、何やら車のバンパーを気にしているようだ。光太郎は検死に立ち合うが、女は仮死状態であることが判明し、翌朝ベッドの上で意識を戻す。女の名前は池内みゆき(川越美和)。アイスピックとジッポオイルを所持していたみゆきを刑事(光石研)は怪しむが、ひき逃げされたらしい状況については何ひとつ語らず、彼女はただ「アタシは被害者なんですよ」と逆上するだけ。駅で刑事と別れたみゆきは、西岡佑二(木村祐一)の待つ安宿で落ち合い、氷の張った湖へと向かう。ふたりはアイスピックとジッポオイルを使い氷上に穴を開けようとするが、なかなか上手くいかない。

一方、光太郎の家では、父・豊道が、近所の理容室の娘・春子(安藤玉恵)を妊娠させてしまったことが判明していた。「恥ずかしくて外を歩けない」と髪を掻きむしる母の横では、痴呆のはじまった祖父・豊男(榎木兵衛)が冷蔵庫に淡々とガムテープをつめ込んでいる。春子の母親である国吉泉(烏丸せつこ)は「できちゃったんだから、しょうがないわよね」と、どうにも無責任な言葉を豊道に浴びせるだけだ。

そんな折、家族にも無関心な光は町の食堂でテーブルに着いていた。向かいのテーブルに座っていたのは、みゆきと西岡だった。みゆきと目が合う光。視線をはずさないみゆき。彼女は、自分を車で跳ね飛ばしたのは光であると気付いてしまったのだ。西岡は、それを機に光を激しく恐喝し始める。空き屋を手配させ、ホームセンターで道具を買わせると再び湖へ出向き、氷に穴をあけさせ、冷たい水の中へ光を落とす。光が湖から引き上げたボストンバックにからは、たくさんの金の延べ棒と生首がひとつ転げ落ちた。

夜も更けた鈴木家の居間。姉の陽子が怒鳴り声をあげている。西岡に渡す金の工面をするため、光が会社のお金に手をつけていたことがバレてしまったのだ。さらに光太郎は、光が幼なじみに延べ棒を売りつけていることを知り、あて逃げ事件の真相と湖氷の下に隠されていた死体の存在を知ってしまう。「警察、行こう」と説得するが、「ダメ。無理」と頑なに断る光。光は「コウちゃん、オレ、自分で頑張ることにする。今日までありがとな」という言葉を残し、みゆきと西岡のいる空き家へと向かうのだった。

いつしか、鈴木家にも松ヶ根の町にも静けさが戻りつつあった。春子には赤ん坊が生まれ、豊道は祖父の死をきっかけに家に戻っていた。大きな変化があったようで、実はそうでもないかと思うほど穏やかな日常がそこにはあった。光太郎は相変わらずネズミの退治に夢中で、光は牛舎の仕事をさぼっている。松ヶ根の町に銃声が響いたのは、まさにそんな時だった──。

スタッフ

監督:山下敦弘
音楽:パスカルズ
エンディング曲:「モレシコ」ボアダムス
制作プロダクション:シグロ
製作:シグロ、ビターズ・エンド、バップ

キャスト

新井浩文
山中 崇
川越美和
木村祐一
三浦友和
キムラ緑子
烏丸せつこ
西尾まり
康すおん
安藤玉恵
光石 研
でんでん

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