刺青が女を変える。 刺青が男を変える。 刺青がすべてを…。

2006年/日本/カラー/DV/ビスタサイズ/ステレオ/96分 配給・宣伝:株式会社アートポート 宣伝協力:アルゴ・ピクチャーズ株式会社

2007年1月13日よりユーロスペースにてレイトショー

© 2006 アートポート

公開初日 2007/01/13

配給会社名 0014

解説


妻子ある男性との不倫に破れ、出会い系サイトのサクラをしている女、アサミ。妻子と別居して家を出て、今日を生きるために自己啓発セミナーの勧誘をしている男、二ノ宮。穢(けが)れた過去を贖罪(しょくざい)し、救いを求めるふたりは偶然に出会った。自らの選択で刺青を彫ることを決意したアサミは、天才肌の彫師・彫光に肌を委ねる。やがて彼女の背中にはみごとな女郎蜘蛛の刺青が躍り、それは彼女自身を劇的に変えてゆく。刺青は二ノ宮の生き方をも大きく変え、刺青の完成を夢見る彫光を虜にする。やがて刺青に翻弄される男と女たちの運命は、大きく揺らぎはじめた……。

原作は今年2006年、生誕120年を迎えた文豪、谷崎潤一郎(1986—1966)。昨年は『刺青 SI-SEI』(佐藤寿保監督)、『卍』(井口昇監督)と映画化があいつぎ、再び注目を集める谷崎文学のなかから、名作短編「刺青」を4度目の映画化。モダニズムと日本的な美を融合させ、耽美的な世界を展開させる谷崎文学のエッセンスをみごとに映像に移し替えた監督は瀬々敬久。『ユダ』(04年)、『肌の隙間』(05年)、『サンクチュアリ』(06年)と一作ごとに独自の世界を開拓してゆく鬼才が、『MOON CHILD』(03年)以来となる脚本家・井土紀州とのコンビで、男と女の濃密な愛とエロスを描ききっている。

女郎蜘蛛の刺青を入れることで過去を荒い流そうとするヒロインを演じるのは、映画、ドラマ、舞台、声優など幅広く活躍する川島令美。刺青によって人生の別の側面をみつめることになる青年に扮するのは、映画『ホテルハイビスカス』(03年)、『県庁の星』(06年)、『雨の町』(06年)などの映画で活躍する若手演技派、和田聰宏。『紀子の食卓』(06年)の光石研、『サイレン』(06年)の嶋田久作、『血と骨』(04年)の松重豊など、日本映画界きっての個性派俳優たちが脇を固めている。撮影は『LOFT』(06年)の芦沢明子、音楽は『猫目小僧』(06年)の中川孝と、実力派のスタッフが作品を支えている。

ストーリー



<33歳。今、車の中に蝶が入ってきた。><キレイ。これから会えませんか”>
二人の出会いは、出会い系サイトだった。妻子と別居し、自己開発セミナーの勧誘をしている男、二ノ宮(和田聡宏)。やっと仕事にありつき、必死に今を生きようとしている。出会い系サイトのサクラをしている女、アサミ(川島令美)。不倫に破れ、自暴自棄になっているアサミは、二ノ宮から携帯メールで送られてきた蝶の写真に魅せられ、サクラは相手とは外で会ってはならないという規則を破り、彼と会うことにした。喫茶店で熱心に勧誘する二ノ宮に続いて、セミナーの主宰者・奥島(松重豊)が現れる。落ち着いた口調ながら、有無と言わせぬ凄みにアサミは飲み込まれ、その日のうちに奥島に抱かれてしまう。奥島はアサミを自分の女にすべく、自らの背中の不動明王と同じく、彼女にも刺青を入れようとしていた。

翌日、二ノ宮はアサミを連れ、刺青師・彫光(嶋田久作)の家に向かった。麻酔をかがされ、裸にされるアサミ。その白い肌に除々に女郎蜘蛛の刺青の輪郭が描かれてゆく。目が覚めて背中の刺青に驚愕するアサミだったが、その凶暴さの中にある神々しい品格にいつしか魅せられ、もうひとりの自分へ変身を決意するのだった。アサミの肌に墨が入る。苦痛の表情から恍惚の微笑へ。アサミの身体にいままでにない、壮絶な美しさが宿る。一方、一生に一度出会えるかという彼女の肌に魅せられた彫光も、一心不乱に針を入れつづける。いよいよ明日で刺青も完成するという前日の夜。アサミは不倫相手の神埼(光石研)を街で見かけ、見せつけるように二ノ宮と唇を重ねる。二ノ宮はアサミを求めるが、あっさりと拒まれる。気まずい二ノ宮をホテルに誘ったアサミは、嫌がる二ノ宮に鮮やかな女郎蜘蛛の刺青を見せる。「……針があたしの肌に突きささってて、墨があたしの肌に入って……痛みを感じてる時、あっ、あたし、今ここにいるって、そう思った……」。アサミは以前とは別人のように、強く、美しくなってゆく。そんな彼女の変化についてゆけない二ノ宮。

アサミは神崎とホテルで抱き合うが、彼はその刺青を見たとたん、驚き、土下座して、一目散に逃げて行った。まるで、女神のように神々しくなって行くアサミは、サクラで騙していた男たちをホテルに呼び、過去を贖罪するかのように、自らの身体を与えてゆくのだった。

悪質な勧誘で多くの被害者を生んでいた奥島の自己開発セミナーについに警察の捜査が入った。奥島は逃亡し、彼だけを信じていた二ノ宮は呆然となる。妻からは二度と会いに来ないでと言われ、アサミとも離れ離れになり、生きるすべもなく、焦燥と絶望の淵に立つだけの二ノ宮の前に、雲隠れしていた奥島が現れる。アサミをつれて来い、と居直る奥島にかつての威厳や頼もしさの面影はない。激情にかられた二ノ宮は、ブロック片で何度も何度も殴りつけて奥島を殺す。ラブホテルの清掃婦となり、アサミを捜す二ノ宮。彫光も未完の刺青を完成させるべく、アサミを待っていた。やがてラブホテルから出てきたアサミを捕まえた二ノ宮は彼女に、潰れかけた孤児院を救う資金を集めようと持ちかける。アサミがサクラの客の相手をし、二ノ宮が事が終わる頃に部屋に入り、寄付を強要するのだ。どの客も逃げ腰で、意外に資金は集まった。しかし、二人の贖罪の旅の最後の客がやっかいな相手だった。大日如来の刺青の男の激しい抵抗に遭った二宮は、浴槽で男を溺死させるが、自分も刺されて深手を負う。深夜の路上、アサミの胸の中で息絶える二ノ宮。アサミは悲しみに堪えるように、彫光に頼んで最後の墨を入れる。それは蝶の刺青だった。まるで、その蝶には二ノ宮の生命が宿っているようだった。……そして愛の奇蹟が。

スタッフ

監督:瀬々敬久
原作:谷崎潤一郎(中央公論新社 刊)
製作:松下順一
企画:加藤東司/武内健
プロデューサー:小貫英樹/佐藤嘉一
脚本:井土紀州
音楽監督:中川孝
撮影:芦澤明子(J.S.C.)
美術:山下修侍
照明:佐々木英二
録音:塩原政勝
VE:野村俊樹
編集:滝沢雄作
劇用刺青:田中光司
助監督:村田啓一郎
制作担当:平山高志
制作:円谷エンターテインメント
製作:アートポート

キャスト

川島令美(寺本アサミ)
和田聰宏(二ノ宮穣)
光石研(神崎)
嶋田久作(彫光)
松重豊(奥島隆)

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