原題:国境の南 Over the Border

東京国際シネシティ フェスティバル2007正式上映作品

2006年5月4日韓国公開

2006年/韓国/カラー/110分 配給:角川映画

2008年05月09日よりDVDリリース 2007年11月23日、新宿ガーデンシネマにてロードショー

(C)2006 CJ Entertainment Inc. & Sidus FNH. All rights reserved.

公開初日 2007/11/23

配給会社名 0058

解説


君を北へ残して、ずいぶんと遠くまで来てしまいました。
そして、別れた時よりもつらい君との再会を迎えるとは思ってもみませんでした。
君が結婚したという噂さえ信じなければ・・・。

純粋な愛をつらぬこうとした男と女。
たったひとつの運命のすれ違いで、二人におとずれた悲恋。

 あとで必ず迎えを寄こすと恋人のヨナに約束をして、北から南へ亡命した青年ソノ。韓国での厳しい暮らしの中で必死に働いて彼女の脱北資金を貯めようとする彼のもとに、ある日、非情な知らせが届く。彼を待ち疲れたヨナが、北で結婚してしまったという知らせだ。ヨナをうらんで荒れたソノは、やがて心優しく働き者の女性と愛を育む。家族で開いた食堂も軌道に乗り、安定した生活を送っていたソノのもとに、ふたたび耳を疑うような知らせが届けられる。ヨナが脱北して韓国に来たというのだ……。
 誰が悪いのでもない、ただ遠く離れていたがゆえに生じた、悲しい行き違い。再会すれば、愛しさは昔と同じに胸を熱く焦がすが、ソノには、辛いときに支えてくれた妻を捨てることもできない。求めあいながらひとつになれない二人は、周囲のすべてを裏切っても愛を選ぶのか、それとも、べつべつの道を選ぶのか。いずれを選んでも、心の中に大きな影を引きずることになる二人。愛するゆえに心引き裂かれる思いを、彼らはずっと心に残すことになるのだ。

観客のとめどない涙を誘う、演技の競演!

 謎めいた放火犯を演じた『リベラ・メ』、運の悪い脱獄囚をコミカルに描いた『ジェイル・ブレーカー』、だめ教師を演じた『ぼくらの落第先生』など、スリラーからコメディまで、幅広い役柄をひょうひょうと演じてきたチャ・スンウォン。元モデルの二枚目俳優にとって初の純愛作品である『約束』では、これまでのどの作品よりも役の準備を入念におこない、10キロの減量をはじめ、4カ月間にわたるホルンの特訓、ピョンヤン訛りの完璧な習得を果たした。撮影最終日には「ソノがこれからどのような姿で生きていくのか、ぼく自身も心配です」と、自分が演じた役に対する深い愛情を語った。
 天下の人気俳優の相手役を射止めたのは、この作品が出演第2作目になるチョ・イジン。「ヨナは世界で一番活発な女性です。性格も顔もさっぱりしています」とソノが自慢する溌剌とした女性と、数年後の再会では脱北の体験から頬がこけ、暗い陰りを漂わせる姿、それでもソノを信じきっているけなげさを見事に演じて、観客の涙を搾りとる。
 主演2人を脇で支えるのは、ソノの年上妻を演じる大女優シム・ヘジン(『グリーンフィッシュ』)、父親を演じるソン・ジェホ(『殺人の追憶』)、義兄を演じる名脇役のユ・ヘジン(『王の男』)。また、コミカルな脇役として活躍著しいキム・サンホ(『ユア・マイ・サンシャイン』)が、酔ってソノに絡む会社員を演じているのも楽しいおまけだ。彼ら一流の演技者たちが、ソノとヨナの悲恋物語に温かみと微笑みをもたらして、作品をより重層的にさせている。

韓国ドラマの名手、悲恋映画を切なく演出!

 愛し合う者たちの運命のすれちがいを描いて観客の涙を搾りとってきた、映画史に残る名作『ひまわり』『心の旅路』『めぐり逢い』や『君の名は』などに連なる悲恋映画を撮り上げたのは、これが長編映画デビュー作になるアン・パンソク監督。17年間にわたって人気ドラマ「薔薇と豆もやし」「I LOVE ヒョンジョン」などを手がけてきた辣腕プロデューサーだ。大学時代にユ・ハ監督(『マルチュク青春通り』)やキム・ソンス監督(『MUSA−武士−』)らと共に短編映画を撮った経験を持つ彼は、映画への夢を捨てがたく、放送界をあとにして『約束』に取り組んだ。主演のチャ・スンウォンは、アン監督が手がけた「薔薇と豆もやし」でドラマ・デビューを果たした縁があって、全幅の信頼を監督に置いて撮影に臨んだのだ。

ストーリー



君が結婚したという噂さえ信じなければ・・・。
国境に引き裂かれた男女の、
哀切なラブストーリー。

2001年 ピョンヤン

 ぼくの名前はキム・ソノ。1975年10月10日、朝鮮労働党誕生の日に生まれて、今はマンスデ芸術団でホルンを吹いている。祖国解放戦争勝利記念館でガイドをしている恋人のヨナは、聡明で活発で、物事を正面きって言うタイプで、言いたいことをはっきり言えないぼくにはたまらなく魅力的だ。
 何不自由なく暮らしていたぼくら一家は、ひとつ大きな秘密を抱えていた。偉大なる首領様が逝去されてしばらくすると、祖国解放戦争で名誉の戦死を遂げたはずの祖父から手紙が届き始めたのだ。ある日、父が血相を変えて家族に告げる。南朝鮮と連絡していたことが保衛部にばれたらしい、もはや南朝鮮に逃げるしかない、と。
 冷たい雨が降る夜、ぼくはヨナと涙の別れをする。気丈なヨナは、「ソノ同志、迎えの人を送ってください。それまでに両親を説得しておきます。ご両親には南朝鮮でごあいさつします」と言う。ぼくらはただ抱きしめあう以外、あとは言葉にならなかった。
 その夜、闇にまぎれてトゥマンガンを渡り、中国での潜伏期間を経て韓国に亡命した。だが、資産家として成功した祖父はすでに亡く、裕福な親戚は冷淡だった。

2002年 ソウル

 ぼくはヨナを呼び寄せるため、定着金の全額を手配師に払うが、その男は詐欺師だった。悪党探しに孤軍奮闘しているとき、チキン屋で働く女性、キョンジュと出会う。詐欺師一味を見つけたが、逆にひどい目にあい、心身ともに傷ついたぼくをキョンジュが介抱してくれる。ぼくはそのままチキン屋で身を粉にして働き、ヨナを呼び寄せる資金を貯めようとした。全国の教会を回って伝道もした。それでも、ヨナとその両親の脱北資金を作るには、はるか遠く及ばなかった。
 そんなとき、妊娠中の姉から衝撃的な話を聞かされる。ヨナがお嫁に行った! ぼくは北が見渡せるオドゥ山統一展望台までスクーターを走らせ、ヨナをうらんでむせび泣く。そして酔って立ち入り禁止区域に入り拘束されたぼくを、キョンジュが迎えにきてくれた。

2004年 ソウル

 家族で力をあわせて、北の名物ピョンヤン冷麺を売りにする「モランボン・ライブ食堂」を開店させる。両親、姉夫婦、そして結婚したキョンジュとぼくの6人で切り盛りする店は、目が回るほど繁盛する。そんなとき、ヨナが脱北し、韓国に来たという知らせが入る……。
 定着支援施設を訪れると、顔色悪くやつれたヨナが目の前に現れた。唐突な再会に、ぼくは呆然とする。ヨナは、「一生後悔して生きるより、たとえ死んでもソノ同志に会いに行こう」と決意して、結婚式の前日に結婚をやめたという。そんなヨナを前に、自分がすでに結婚しているとは、どうしても言い出せなかった。数日後、ぼくらは街に出て、マクドナルドでハンバーガーを食べ、遊園地に行く。まるでピョンヤンでの遊園地デートが蘇ったようで、ぼくらは観覧車の上でぎこちなく唇を重ねた。
 家族一同で出演したお店紹介のテレビ番組を、ヨナが施設の食堂で見たことを、ぼくは知らなかった。だが、自分の嘘に耐え切れなくなったぼくは、その夜、施設に侵入し、ヨナに「二度と会わない。ぼくを忘れてくれ」と、告げる。そうするしかなかった。今のぼくにはヨナを幸せにすることはできないのだから。自分で決めた別れなのに、何日も抜け殻の状態で過ごしていたある夜、バス停にたたずむヨナを見かけた。愛しさに胸がつまったが、心を鬼にして、別の方向へ歩く。だが、どうしてもそのまま歩き去ることができず、ぼくは引き返してヨナを探す。彼女は泣きながら小石をぼくに投げつづけるが、抱きしめると抵抗をやめてくれた。そしてぼくらは、人のいない冬の海岸に辿り着く。もう二度と離れないと誓い合うが、ヨナは、ぼくとは別の決意を胸に抱いていたのだった……。

スタッフ

監督:アン・パンソク
脚本:チョン・ユギョン、アン・パンソク
撮影監督:パク・ヨンス
音楽:ハン・ジェグォン

キャスト

チャ・スンウォン
チョ・イジン
シム・ヘジン
ソン・ジェホ
イ・アヒョン
ユ・ヘジン
キム・サンホ 

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