原題:天邊一朶雲

2005年東京国際映画祭(題名:「浮気雲」) 2005年ベルリン国際映画祭 銀熊賞(芸術貢献賞)、アルフレッド・パウエル賞、国際批評家連盟賞受賞

2005年/台湾/カラー/ビスタサイズ/112分/ 配給:プレノンアッシュ

2007年03月02日よりDVDリリース 2006年9月23日 シアター・イメージフォーラムにて公開

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公開初日 2006/09/23

配給会社名 0065

解説


2005年、台湾映画界に大きく衝撃的な事件がおこった。それはツァイ・ミンリャン監督の『西瓜』の公開だ。その年の台湾興行収入第1位を記録したこの映画は、政府や映画界、そして観客にとってのエポックメイキングな作品となった。

オープンな今の台湾社会でもタブーとされる映画での強烈なセックスシーンは、今まで語られなかった「性の描写」についての様々な論議を巻き起こし、それは台湾だけでなく世界中の政府の開放度を、皮肉にもこの映画が審査することになった。そして、香港や台湾ではノーカットで公開された。この映画によって各国の審査の基準が変わったのだ。

このような出来事はマスコミや観客の関心を集め、好奇心は動員に繋がっていった。しかし、その好奇心だけが13万人もの観客に映画館へ足を運ばせたわけではない。政府が映画の芸術性を認めたように、観客は脆く危うい恋の始まりを描く切ない物語や、微妙な表情の変化や仕草で心の揺れを表現する役者たちの演技に感動し、やがて好奇心は作品や役者への敬意に変わり、映画は広がっていったのだった。

監督は言う。芸術は常に最前線を歩いていくもの。だから、聞き分けのいい子になってはいけない。言うことをきかない反抗的な子であってこそ、創造性が生まれてくる。『西瓜』は、間違いなく彼の作品の中で一番「言うことをきかない子ども」なのだろう。

過激なAVの撮影シーン以上に驚嘆させられるのが、原色鮮やかなミュージカルシーン! 鋭い刃物で現実を切り取るかのように挿入されるポップでキッチュなミュージカルシーンは、コミカルな様相とは裏腹に、登場人物たちの焦りや苛立ち、不安を浮き彫りにしていく。現実のラブストーリーとミュージカルシーンを行き来するうちに、スクリーンには映し出されない「新たな世界」が立ち現れてくるのだ。それこそが映画のマジック! ツァイ・ミンリャンはこの映画で確かに新しい映画への第一歩を踏み出した。

ストーリー


極限状態の水不足が続く台湾の街。テレビでは毎日のように節水方法を紹介し、渇きを癒す最良の手段として西瓜ジュースを飲むように奨励している。
帰国したばかりのシャンチーも水不足に備えるべくペットボトルに水を溜め、西瓜ジュースをつくっている。そんなある日、偶然にも昔路上で腕時計を買ったことがあるシャオカンと遭遇。鍵を失くしてしまったスーツケースを開けてもらおうと、シャンチーは彼を部屋に招待する。ふたりはお互いに心惹かれる何かを感じ、一緒に時を過ごし、少しずつふたりの距離が近づいていく。しかしシャオカンには、どうしても彼女に告げられない秘密があった!

腕時計売りからAV男優に転職したシャオカンは、喉の渇きも我慢しながら、過酷なAV撮影の仕事に励んでいる。しかし、更なる試練が彼を襲う。偶然に再会したシャンチーに招待された彼女の部屋は、何と彼の撮影現場と同じマンションだったのだ! 彼女と親密にはなりたいが、絶対バレてはいけない。階段に身を隠し、逃げ回り、ビデオレンタル屋では自分の出演したAVのビデオが見つからないよう悪戦苦闘。彼女に見せる涼しげな態度とはウラハラに、心の中では叫び声をあげている。

そんなシャオカンの努力も空しく、シャンチーはマンションで見かける怪しい人たちや借りてきたビデオに映る彼の姿に、疑惑の念を抱き始める。

スタッフ

監督:蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)

キャスト

李康生(リー・カンション)
陳湘[王其](チェン・シャンチー)
楊貴媚(ヤン・クイメイ)

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